3人組テクノポップユニット・Perfumeが11月3日に公開された『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』で主題歌を務める。久々のアニメ主題歌はPerfumeにとっては“おなじみ”の「ディスコ」を冠した『すみっコディスコ』（11月3日配信リリース）。今作への思いや映画にまつわるエピソード、さらには3人が大切にし続けているライブへの思いなどを聞いた。（取材・文＝中村彰洋）

――『すみっコぐらし』主題歌オファーを聞いたときの感想を教えてください。

のっち「めちゃくちゃうれしかったです！　『すみっコぐらし』はもちろん知っていました。詳しくはなかったんですけど、友達の子どもが熱烈に好きなんですよ。そんな愛された作品の映画主題歌をやらせていただけるなんて、本当にうれしかったです」

あ～ちゃん「お話をいただいた際に、二つ返事で『やりたいです！』と3人で前のめりでした。『曲はどんなのになるんだろう？』と思っていたら、私たちの本気度が伝わったのか、ディスコ爆誕という（笑）。中田（ヤスタカ）さんも、ちゃんと私たちの本気度を捉えて、作ってくれたんだなと感じました。うれしいの相乗効果でしたね」

かしゆか「とにかく驚きました。『え、Perfumeでいいのかな？』とびっくりしました」

――起用された理由はお聞きになりましたか。

かしゆか「聞いてないです！　気になりますね」

のっち「今回、工場が舞台なので、ちょっと機械っぽいところつながりなのかなって予想しています」

あ～ちゃん「マシーン的な？」

のっち「うん、うん」

かしゆか「勝手なこっち側の想像です（笑）」

――アニメ主題歌は『映画ドラえもん　のび太のひみつ道具博物館』での『未来のミュージアム』以来、約10年ぶりとなりました。アニメとのタイアップという点で、何か普段との違いがあれば教えてください。

かしゆか「中田さんがタイトルを『すみっコディスコ』にしたくらい、映画のために書き下ろした楽曲なのですが、ライブで聞いてもかっこいいようにバランスを取ってくれているなと感じます。『聞こえてくるの森の奥から』という歌詞があるのですが、そういう自然体でナチュラルなフレーズって、Perfumeとしてシンプルにリリースする曲ではあまりないんです。こういう機会じゃないとあまり歌うことがないかもしれないです」

――『すみっコディスコ』はどういった楽曲になっていますか。

のっち「今回は『すみっコディスコ』と『すみっコ』の表記がそのまま曲名になっているディスコ曲なんです。私たちの気合いが伝わったのか、中田さんからの気合いもすごく感じました。小さなお子さんにも刺さる、音楽好きにも刺さる、といった絶妙なラインの楽曲となっていると思います」

あ～ちゃん「今のPerfumeのアルバムに入っていても、おかしくないぐらいかっこいい曲です。サビは『Watching Watching』と表でリズムを取っているんですけど、Aメロになった瞬間に別の曲みたいになるんです。曲中で何回も切り替わっていくので、歌っていてすごく楽しいです」

――『すみっコぐらし』には「ここがおちつくんです」というサブタイトルがあります。3人にとって落ち着く空間はありますか。

かしゆか「3人でいる楽屋は落ち着きます。20何年も一緒にいるので、3人でいることが当たり前のようになっています。なので、1人での仕事のときには『ちょっと寂しいな』と感じることがあります。3人で楽屋に集まるとおしゃべりが止まりません（笑）」

のっち「私はベッドの上ですね。寝るのが大好きなので、布団の上で、自分のお気に入りのふわふわの布団をかぶったときが一番落ち着きます！」

あ～ちゃん「私は家の中で居心地がいい場所を見つけることが好きなんです。今ハマっているのは、ソファの横に物を置けるような場所があるんですけど、そこに首の角のところをちょうど当てながら、テレビを見ることにハマっています。ちょっと首をほぐしながらが心地良いんです（笑）」

――今回の映画に登場する「くま工場長」は、褒め上手なキャラクターです。3人はどんなところを褒められるとうれしいですか。

のっち「工場長は、本当に褒め上手なので、私も褒めてほしいなと思いながら見ていました。私は褒められて伸びるタイプだと思っているので、なんでもかんでも褒めてほしいです！（笑）」

――その中でも特に言われてうれしいことはありますか。

のっち「特に言われて……『かわいいね』ですね！」

――言われ慣れていそうですね（笑）。

のっち「ありがとうございます。でも全然足りてないです！」

かしゆか「欲しがるぅ～（笑）」

あ～ちゃん「だいぶ言われとるほうじゃと思うけどね（笑）」

――お2人はいかがですか。

あ～ちゃん「もちろん『かわいいね』『きれいだね』と言っていただけるのは本当にうれしいんですけど、私は小さい頃から『面白いね』と言われるのが1番うれしいです」

かしゆか「私は、チームが褒められるとうれしいです。頑張ることが当たり前だと思われている人もいると思うのですが、私たちはそういったプロフェッショナルな方々のおかげでステージに立てて、輝けているので、チームとして見てくれていると思うとすごくうれしいです。私個人だと……『髪の毛きれいだね』と言われるとうれしいですね（笑）」

――今作では、おもちゃも登場しますが、思い出のおもちゃはありますか。

あ～ちゃん「1～2歳の頃、にんじんを持った鼻の赤いしまうまの人形を持っていたんですけど、その鼻を私が食べちゃうらしいんです。買ってきてもすぐに鼻がなくなるから、私の持っているしまうまは全部鼻がなかったです」

かしゆか「それ、初耳（笑）」

あ～ちゃん「“あ～ちゃん”と呼ばれる前は“あやがじら”とずっと呼ばれていました」

かしゆか「あ、そうだったね！」

のっち「私は1人っ子だったので、ずっとお人形遊びをしていました。物心ついたときに『すみっコぐらし』と出会っていたら、ハマっていたと思います」

かしゆか「私は猫のぬいぐるみです。幼稚園ぐらいのときに、百貨店のぬいぐるみコーナーで、シャム猫のぬいぐるみがどうしても欲しくて、それを買ってもらえるまで、『絶対帰らない！』って泣いていたんです（笑）。もうど～しても欲しかった！　無事に買ってもらって、ずーっと大事にしていました」

――今作は「お仕事」も1つのテーマとなっています。皆さんが仕事をする上で心がけていることをお教えください。

のっち「“餅は餅屋”といつも思っています。私は“Perfumeののっち”ができることしかできません。周りにたくさんのプロフェッショナルの方々がいてくださっているから、このお仕事ができている。その人たちへのリスペクトをつねに忘れないようにしています」

あ～ちゃん「自分が求めていただけていることが、奇跡だなと思っています。こんなに長く自分がPerfumeでいられるとも、あ～ちゃんでいられるともまったく思っていなかったので、ずっと奇跡の状態でここまできています。だから、いつ明日終わってしまっても『そりゃそうだ』って思うんです。

　だからこそ、今できることを全力で後悔ないようにやらせていただこうと思っています。時代は変わっていくし、人気やはやりが変わるのも当たり前。だからこそ続けられていることは奇跡。3人一緒にいられることが奇跡、と感じながら活動させてもらっています。本当にありがたいですね」

かしゆか「『最善を尽くす』です。自分たちに求められていることの中で、できる最善をずっと探して、『これでいい』と満足しないようにしています。チームのみんなも同じ気持ちで、ライブのツアー初日に完成するのではなく、より良くできる部分を探し続けることは意識しています。チームが頑張ってくれている中で、そこに甘えてはいけないので、『私には何ができるだろう』と考えるようにしています」

――Perfumeさんのライブでは老若男女、幅広い方々が楽しんでいる印象があります。幅広い層に支持を受けている理由はどういった点だと思われますか。

かしゆか「意識は……してないよね？」

あ～ちゃん＆のっち「うん」

かしゆか「『幅広い世代に好かれたいです！』とかはないですけど、楽曲も中田さんがテクノやエレクトロを扱う中で、最新の部分もありつつ、懐かしさも感じさせる、そういう部分が、音楽的にいろんな世代に受け入れてもらえたきっかけなのかなと思います。

　いろんな年代の方がいると、単純に私たちもうれしくて楽しいというのもありますね。ライブでお客さんに年代を聞いたりして、70代の方がライブに来てくださったりすると、お客さん全員で拍手して『ありがとう！』ってなったりしています（笑）」

のっち「小さい頃から一緒にいて、今も3人が仲良くて、広島出身で広島弁をしゃべって……。近くにいそうなところも受け入れてもらえている理由かもしれないですね。親近感みたいな！」

あ～ちゃん「ほいで、実際に近くにおるしね。普通の人じゃしね（笑）。でも、いろんな人、いろんな世代の方が聞いてくださっているので、どんな人たちにも楽しんでもらえたらいいな、ということはつねに思っています。だから、言葉選びも分かりやすいように、どんな世代、性別、国籍の人でも傷つかないようにということは意識しています」

――Perfumeさんは、コロナ禍での2020年2月26日東京ドーム公演中止を経験、22年10月のPLASMAツアー宮城公演“革命の日”では声出しを解禁しました。そして今年は海外公演やFCツアーでもコロナ以前のライブが戻ってきました。この3年間を振り返ってみていかがでしたか。

かしゆか「3年間、ライブができず、音楽が止まっちゃったみたいな感覚は、世の中の状況的にも感じてはいましたが、私たちは当時そんなに焦っていませんでした。それまでにも、配信やオンラインライブなど、挑戦したいことがあったときに選んできた手段だったので、『時代に合わせて変化していかなきゃ』という焦りがなかったんです。

　なので、私たちを待ってくれているファンの方にとって、今は何が必要なんだろうとか、どういうことをしたら楽しんでもらえて、私たちも純粋に楽しめるんだろうとか、冷静に考えることができていました。そこから、やっぱり私たちにとって、お客さんとのライブはすごく大切で、直接会って同じ空間で体感するということが、どれだけ自分たちの支えになっていて、特別なことだったんだろうということに気付けたんです。

　だから、ツアーをやったときにみんなに会いに行けたことがすごくうれしかったです。そこから時間を経て、やっと今年いろんなところで声出しのライブも増えてきて、一緒にライブを作る、呼び掛けたことに応えてもらえる喜びを感じています。『あ、私たちが1番好きなことって、人とコミュニケーションを取ることなんだ』というのをすごく感じました」

のっち「『自分にとって1番大事なものはなんだろう』ってすごく考えた3年間でした。私たちも、ファンの人たちもつらい状況はみんな一緒だったので、『つらかったね、しんどいね』を共有するのではなく、『やっぱり音楽って最高だよね、ライブって楽しいよね』ということを共有したかったんです。声の出せない中でのより良いライブの作り方をチームで考えて、声が出せないことを皆さんに意識させずに、『ライブ楽しかったな』と思ってもらえるような作り方を心がけて積み重ねてきました。

　その経験を経て、いろいろつらいことはあったけど、ライブで声も出せるようになって、今のツアーが回れているのは、やっぱりその3年間で『ライブって楽しい』とちゃんと思ってもらえていた結果だと思うんです。今のこのライブの爆発感は何にも変えられないです。マスクをした状態でのライブを経験して、皆さんも表情やジェスチャーでアピールするのが上手になっているんです。それにプラスして、声でもアピールしてくれているので、相乗効果ですごく伝わってくるようになりました」

あ～ちゃん「『声を出さなくても表現ってできるんだ』ということは、この3年でとても学んだことでした。好きでいてくれている人からは、そのオーラがめっちゃ出ているし、手拍子や体で表現するだけでも伝わってくるものがめっちゃあったんです！　めっちゃあったんですけど、声を出せるようになったら高揚感が全然違いましたね。やっぱりスイッチというか、そこでしか騒がない細胞が自分の中にあるんでしょうね。だから今は毎回ライブでぶち上がっています（笑）。

『忘れてたな、この細胞を動かすこと』って感じです。だから本当に楽しいですね。やっぱりライブでお会いして、みんなと声を交わしたり、笑顔を交わしたり、これまではマスクもつけていたので、その下にどういう表情を隠し持っていたのかを、まさに答え合わせしている感覚です。今はつながり合えているなと感じることができて、最っ高です！」

スタイリスト：Shinichi Mita／KiKi inc.
ヘアメイク：Masako Osuga,Tomoka Fukuma／VANITE

『すみっコディスコ』楽曲リンク：https://Perfume.lnk.to/Sumikko_Disco