葵うたの、紆余曲折でつかんだ『パリピ孔明』出演 17歳で単身上京、転機となった下積み時代の教え

俳優・葵うたの(24)が幼少期からの夢に向かって、着々とステップアップしている。アイドルやグラビア、声優とさまざまな経験を積みながらも「女優になる」というブレない思いを強く持ちながら進み続けてきた。そんな葵にとって転機ともなりうる出演作、フジテレビ系連続ドラマ『パリピ孔明』(水曜午後10時)が放送中だ。

『パリピ孔明』に出演した葵うたの【写真:長谷英史】
『パリピ孔明』に出演した葵うたの【写真:長谷英史】

舞台女優だった母親の影響「私は女優になるもの」

 俳優・葵うたの(24)が幼少期からの夢に向かって、着々とステップアップしている。アイドルやグラビア、声優とさまざまな経験を積みながらも「女優になる」というブレない思いを強く持ちながら進み続けてきた。そんな葵にとって転機ともなりうる出演作、フジテレビ系連続ドラマ『パリピ孔明』(水曜午後10時)が放送中だ。(取材・文=中村彰洋)

 葵が同ドラマで挑んだのは、仮面アイドルユニット・AZALEA(アザリエ)メンバーの一夏。オーディションでつかんだ大役だったが、ギターやダンスが好きな葵にとって共通点の多い役どころだった。

「ギターとダンスができる役ということで、オーディションに応募させていただきました。自分に重なる部分もあって、『やりたい!』と思っていたので、めちゃくちゃうれしかったです」

 葵にとって『ガールガンレディ』(2021年/MBS)以来の連続ドラマ出演。その間もオーディションを受けてはいたが、タイミングに恵まれずにいた。「『受かりました』とマネジャーさんから伝えられたときはうれしくて、スキップしました。まさか受かるとは思っていませんでした」と笑顔で振り返った。

 八木莉可子、森ふた葉とともにAZALEAというグループを組むこととなったが、共に過ごす時間も長かったという。「1か月ぐらい3人でずっと練習をしていました。プライベートでもご飯に行ったりしていたので、自然と3人のキャラクターのバランスも取れていき、私たちの『AZALEA』が見えていきました」。

「自分という存在と向き合うように」と分岐点を振り返る【写真:長谷英史】
「自分という存在と向き合うように」と分岐点を振り返る【写真:長谷英史】

スカウトされるために試行錯誤を続けた小中学生時代

 幼少期からブレることなく、「女優になる」を目標として掲げ続けてきた。舞台女優だった母の影響で自然とその意識が根付いていった。

「物心ついたときから『女優になるんだよ』という言葉をずっと掛けられていました。ダンスやピアノなど、習い事も表現の糧になるものばかりをやらせてもらいました。その影響もあって、自然と『私は女優になるもの』と思うようになっていました」

 芸能界に入るため、オーディションに応募したり、スカウトされるために原宿を歩いたりと試行錯誤していた小中学生時代。現在の事務所に所属するまでの期間は、紆余(うよ)曲折をたどりながらも、劇場に立ち続け、演技のスキルを磨いていった。

「フリーで演劇をやっていた時期があり、その期間でたくさんの経験を積むことができました。アクティングスクールに通い始めたことが分岐点でした。そこで、『芝居以前に安易にうなずくのをやめろ』と言われたんです。『笑うのはやめなさい。分からないときにうなずいたり、分かったふりをするのはやめなさい』って。そんなことを言われたのは、人生で初めてで、そこでいろんな気付きがありました。それからしっかりと自分という存在と向き合うようになりました」

 17歳で単身上京。芸能の学校に通い、同級生たちが次々と仕事を手に入れる中、葵は現実をひしひしと感じていた。しかし、そんな下積み時代も腐らずにひたすらに努力を続けてきた。

 そして20年に偶然が重なり、現在のアソビシステムに所属。『ミスマガジン2020』にも挑戦し、ベスト16まで残ったことで一気に知名度を広めた。女優という夢とは異なる分野ではあったものの、「元々グラビアも好きで、雛形あきこさんの“雛ポーズ”だったりが好きでした」と楽しんで臨むことができたという。

「記憶に残るような作品に出たい」と意気込みを語った【写真:長谷英史】
「記憶に残るような作品に出たい」と意気込みを語った【写真:長谷英史】

壁にぶつかり悩んだ過去「母親に泣きながら電話したんです」

 デビューからの10年間、真っすぐに芸能活動を続けてきたが、その中で1度だけ、「やめたい」と思ったことがあった。

「数年前に一度だけ悩んでしまった時期がありました。とにかく『もうやめよう』と思って、母親に泣きながら電話したんです。『ごめんなさい。もうできないです。やめたいです』って。怒られたり、『もうちょっと頑張りなさい』とか言われるのかなと思っていたら、『あ、分かった。やめれば』『帰ってきな』とあっさりでした。そのときに『悔しいな』と思ったんです。求めてた言葉が返ってこなかったというのもあったけれど、『やめたい』よりも『悔しい』が勝って、気付いたら続けていました」

 幼少期について「目立ちたがり屋でしたが、隅っこで1人になりたがったり、学級委員長をやって前に出たがってみたり、情緒不安定でしたね」と苦笑い。あの日の母親の対応について、「今でも私が情緒不安定だということが分かっていたのかもしれないですね。私はもう本当に覚悟を決めてという感じでしたが、バレていたのかもしれないです」と感謝の思いも明かした。

 今回、連ドラ出演を経験したことで大きな手応えを得た。「みんなで1つの作品を作っているんだな、ということをとても感じました。一夏という役は原作とは少し違うキャラクターで、撮影現場ではいつもプロデューサーさん、衣装部、メイク部との打ち合わせから始まりました。メイクや衣装も自分で考えながらと、クリエイティブな時間で楽しかったです。こういった濃密にコミュニケーションを取りながら、一つの役を作っていける、期待値の高い、記憶に残るような作品に出たいです」。

 また、この先の夢についても口にする。

「刑事ものが好きで、子どものときから古いものから新しいものまで、刑事ドラマばかりを見ていました。なので刑事役を1度はやってみたいです。特に篠原涼子さんが大好きで『アンフェア』(06年)が大好きだったんです。この前、加藤雅也さんと共演させていただいて、本当に感動しましたね。『いろんな可能性があると思うから、なんでも挑戦した方がいい』とアドバイスまでいただきました。子どもの頃の私に『共演してるよ』って教えてあげたいですね」

「女優になる」――。幼少期から当たり前のように掲げ続けていた目標が、ようやく現実のものとなってきた。

□葵うたの(あおい・うたの)1999年7月4日、埼玉県出身。2020年に現事務所・アソビシステムに所属。同年『ミスマガジン2020』でベスト16に選出。21年には『ガールガンレディ』(MBS)に出演。『パリピ孔明』(23年/フジテレビ)ではレギュラーキャストを務める。アニメ『Artiswitch』(21年)では声優を務めるなどマルチに活躍。24年には映画『僕の中に咲く花火』が公開予定。

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