ゲスの極み乙女のドラマーと“二刀流”、女優さとうほなみの覚悟「作品のためなら濡れ場もいとわない」

俳優でミュージシャンのさとうほなみが11月10日から、舞台『剥愛』で主演を務める。最近はドラマ、映画出演の俳優活動が目立ち、ロックバンド・ゲスの極み乙女のドラム奏者「ほな・いこか」であることを知らない人も少なくないという。今回は俳優としての一面に焦点を当て、演じる上で大切にしていることを聞いた。

「芝居はまだまだ勉強中」と語ったさとうほなみ【写真:舛元清香】
「芝居はまだまだ勉強中」と語ったさとうほなみ【写真:舛元清香】

11月10日公開の映画『花腐し』、舞台『剥愛』で体当たり演技

 俳優でミュージシャンのさとうほなみが11月10日から、舞台『剥愛』で主演を務める。最近はドラマ、映画出演の俳優活動が目立ち、ロックバンド・ゲスの極み乙女のドラム奏者「ほな・いこか」であることを知らない人も少なくないという。今回は俳優としての一面に焦点を当て、演じる上で大切にしていることを聞いた。(取材・文=福嶋剛)

――さとうさんの芝居との出会いは。

「幼い頃からドラマが大好きで、小学生は寝る時間なのに親に許してもらい、毎週かじりついてドラマを見ていました。特に『FiVE(ファイブ)』(日本テレビ系、1997年)にドハマりしました。女性の主人公5人が、裏組織と戦うという物語でした。“女性版アベンジャーズ”みたいなカッコよさがあって、7歳だった私は最終回を見終わった後、FiVEロスで大号泣しました。そして、『いつか絶対に6人目に入ってやる!』と心の中で誓いました(笑)。芝居の初期衝動はそこだったのかもしれません」

――子役として活動されましたが、そのまま役者の道には進まずに音楽活動(ゲスの極み乙女)に専念しました。

「(役者を)やりたい気持ちはずっと持っていましたが、当時はなかなかチャンスに恵まれませんでした。そのタイミングで音楽が自分の中にスーッと入ってきました。割と性格的に不器用だったのもあって、自分が一番好きなこと(音楽)に集中したら先に音楽の道が開きました。以降もチャンスがあれば『芝居もやりたい』と思っていましたが、さまざまなご縁を経てようやく役者の道が開きました。そこからは心の中で大切に温めてきた芝居への憧れが、一気に爆発したという感じです」

――初めて出演したのが、テレビ朝日系『黒革の手帳』(17年7月期)でした。

「初めての現場は銀行のシーンだったと思います。音楽の現場とは全く違い、スタッフさん、演者さんの人数が多くて慌ただしく時間が過ぎていった記憶があります。その中でも、高畑淳子さんの演技を目の当たりにして圧倒されたことを今でも覚えています」

――以降、数々の作品に出演しています。

「初めの頃は芝居の面白さが何なのかさえ分からないまま、とにかく無我夢中で演じていったという感じでした。それは今も変わりませんが、1つだけ見えてきたものがあるとしたら、演じる人によってキャラクターの持つ感情や空気感が違うものになる面白さがあるということです。例えば、世代を受け継ぎながら演じていくような舞台作品は、俳優によって受けるキャラクターの印象も変わります。同じ役者でも、その日のコンディションや演じる場所によっても微妙な演技の違いもあったりしますし、むしろ、それが『演じる面白さ』なのかなと思いました」

――何が起こるか分からないところに舞台の魅力があると。

「そう思います。それが怖いところでもあるし、音楽とは違う『ライブ感』なのかなって。例えば、ある地域では台詞を言うリズムが良ければ良いほどお客さんに受けたりする。他の場所ではそのリズムではお客さんとかみ合わず、少しテンポに変化を加えることで受けたりする。お客さんの反応や演じる側の間合いも場所によって微妙に変化があり、『舞台は生ものだな』って学びました。だからこそ、見る側にも演じる側にも面白さがあるのかなって思いました」

――俳優としてのターニングポイントは。

「デビューして2本目の舞台『虎は狐と井の中に(仮)』の演出家・和田憲明さんから学んだことが転機になりました。それまでは自分の芝居が不安定で演技の良し悪しも分からないまま、『とりあえず来た球を打つ』みたいな感覚でした。そんな時に和田さんの舞台に立たせていただいたことで、何もない真っ白な状態の私の演技に初めて色彩を加えていただきました。お芝居の考え方にもすごく感銘を受けて、私は何が分からないのかが、やっと分かるようになり、次の一歩を踏み出すことができました。それが具体的に何なのかというのはなかなか説明し難いんですが(笑)。和田さんとの出会いが大きかったです」

「芝居を通して人間の醜い部分や見たくないところまで見せたい」【写真:舛元清香】
「芝居を通して人間の醜い部分や見たくないところまで見せたい」【写真:舛元清香】

役として作品の中で生きている感覚を大切に演じたい

――11月10日からは、さとうさん主演の舞台『剥愛(はくあい)』が始まります。

「田舎の集落を舞台に剥製工房を営む家族のいびつな人間模様を描いています。私は家族と離れて都会で生活を送っていた長女の役です。離婚して数年ぶりに田舎に戻ってきたことで、過去の見たくないものや今までひたむきに隠していたものが徐々に露わになっていく。すごく下手な生き方をしているのですが、リアリティーも感じる家族の物語です」

――舞台だけでなく、映画、ドラマでも複雑な感情表現の役を多く演じています。見る側に「さとうほなみ」という俳優を忘れさせ、役に没頭させている印象です。

「すごくうれしいです。確かに私が目指しているところは、私ではなく役として見ていただけるような演技です」

――舞台と同日(11月10日)に公開される映画『花腐し』(東映ビデオ)は、綾野剛さんと柄本佑さんが演じるふたりの男に愛された役。ラブシーンも演じ切り、正面から役とぶつかっている印象を受けました。

「作品を一番良い方向に進めるために必要なことであれば、濡れ場もいとわないというのが私の考えです。演じる上で見ていただいた方には役柄として見てほしいですし、そこに『さとうほなみ』という私自身の情報は必要ないと思っています。ただ、私がその役を演じたという意味だけは、ちゃんと残していきたいです。そして、『役として作品の中で生きている』という感覚を大切に演じていきたいと思っています。音楽と芝居の違いについての質問を受けることも多いのですが、カッコいいものを届けるのが音楽だとしたら、芝居は自分でも向き合いたくないような醜い部分や見たくないところまで見せるものだと思っています。そういうものを私が演じたことで面白くなったと感じていただけるような役者を目指せたらうれしいです。まだまだ勉強中ですが、今はそんな風に作品に携わっていきたいと思っています」

――今年34歳。表現者として30代という年齢について、どう感じていますか。

「歳を取ればできることも増えるし、同じ分だけできないことも増えると思います。だから、年齢を意識するようなことってあんまりなく、これからも臨機応変に楽しむことができたらそれで良いのかなって思います」

□さとうほなみ 1989年8月22日、東京都生まれ。ゲスの極み乙女の「ほな・いこか」として、ドラムスを担当。2017年に女優「さとうほなみ」としての活動を開始。映画は『窮鼠はチーズの夢を見る』『彼女』『愛なのに』『次元大介』、連続ドラマはテレビ朝日系『六本木クラス』、日本テレビ系『彼女たちの犯罪』、フジテレビ系『あなたがしてくれなくても』などに出演。

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