テレビとネット動画は共存できるのか? テレビ東京が「意地」で創り出す面白動画番組の可能性

テレビ東京のバラエティー番組「内村のツボる動画」(今年4月14日放送時の写真)(C)テレビ東京
テレビ東京のバラエティー番組「内村のツボる動画」(今年4月14日放送時の写真)(C)テレビ東京

MC内村光良の放った言葉が番組コンセプトに

 番組に確固たる方向性をもたらしたのは、テレビ界を代表するお笑いタレントの内村だった。試行錯誤の中で迎えた、昨年夏の初回放送。収録の際に、内村が「テレビマンの気概というか、負けねえ!もっと面白くしてやる!っていう意地とプライドが垣間見えた」と感想を口にした。「このひと言がコンセプトになりました」と伊藤プロデューサー。企画段階から、「内村さんがまだやっていない企画」という発想で、内村に動画配信の世界にハマってもらうことを意識していた。こうして内村が面白動画を思いっきり楽しむ番組のスタイルが決定付けられた。

 同局のアナも“YouTuberデビュー”を飾った。ハイトーンボイスが持ち味で、入社3年目の中垣正太郎アナと、伸びやかな歌声の2年目・田中瞳アナが、人気バンドKing Gnuの「白日」をデュエット。しかも本物の教会で撮影し、アーティストのMVのように仕上げる徹底ぶりだ。YouTubeチャンネルでの再生回数は317万回超え。見た目とギャップのある美声を響かせる中垣アナは、“歌一本キャラ”として浸透している。

 この「歌うまアナウンサー」企画も、「型にはまらない」という信念から生まれた。アナウンサー陣にヒアリングを実施し、歌自慢のメンバーを“選抜”。2年目の森香澄アナは、アイドル好きということから大胆企画を展開。昨秋、得意のダンスとともに欅坂46の「サイレントマジョリティー」を披露した。当時新人ながら社食で踊るなどのパフォーマンスが話題を呼び、動画再生数は203万回を突破した。

 革新的なスタイルではあるが、伊藤プロデューサーにとって温故知新の番組作りだ。「ドリフ大爆笑」(フジテレビ系)や「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ系)、「浅草橋ヤング洋品店」(テレビ東京系)……。世の中の流行りや時事ネタを、スピード感を持って採り入れ、笑いを送り出してきた伝説のバラエティーだ。「コーナー構成で、面白いからやってみようと毎回いろいろなメニューを詰め込む。現在では数が減ってしまいましたが、この番組は“いまを笑いに変える”ことをやろうとしているんです。王道のバラエティーを令和の時代に、動画に落とし込む形です」と話す。

 そこに、“テレビの意地”をミックスする。例えば、中垣アナと田中アナの歌唱企画は教会のチャペルで手間ひまかけて撮影を行った。「わざわざやったんだなあという面白さ。“ヘタウマ”な感覚を持って、本気で地でいく。僕は内村さんの言う『くだらない』が好きなんです。その時に内村さんは本気で笑っているから。スタッフも出演者もその『くだらなさ』を目指してやっているんです」と力を込める。

 新型コロナウイルスの影響を受けて、5月からリモート収録を実施。臨機応変の番組作りを行っている。6月9日の次回放送は、ほぼ全編が新たに撮影した内容という。“神の子”と称される中垣アナは、「ロマンスの神様」などで知られる大物歌手の広瀬香美とコラボを果たす。さらに、「番組からYouTuber輩出」を目標に募集を実施。芸能事務所にも呼びかけてオーディションを行い、芸人があることに11時間挑戦したギネス記録並みの面白動画があるという。この動画に触れた内村は「何これ、この番組らしくないよ。間違って感動しちゃったじゃないか」と驚きを口にしたという。回を重ねるごとに伊藤プロデューサーの手応えは増している。

 番組スタッフの合言葉は「新しいジャンルを出していこう」だ。海外でバズらせることを目指し、言葉がわからなくても映像を観るだけで笑ってもらえるネタを企画しているという。「いつどこで、何がバズるかわからない。可能性を広げていきたい」と伊藤プロデューサー。“おもしろがり精神”はどこまでも広がっていきそうだ。

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