映画『月』の公開舞台あいさつが14日、都内の劇場で行われ、宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョー、メガホンをとった石井裕也監督が登壇した。

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　本作は、実際の障がい者殺傷事件を題材とした辺見庸氏による小説が原作。事件を起こした個人を裁くのではなく、事件を生み出した社会的背景と人間存在の深部に小説という形で切り込み、社会全体が「見て見ぬふり」をしてきた“不都合な問題”をつまびらかに描いている。

　石井監督は「比喩でも誇張でもなく人類全体の問題として理解した。これは逃げられない」と覚悟を持ち、小説を独自に再構成して映画化した。

　映画の企画書を受け取ったキャストたちは、当初は戸惑ったと口をそろえる。障がい者施設で働く青年・さとくんを演じた磯村もその一人で、「企画書をいただいて、僕自身直感的に参加しないとダメだという思いがあった。それだけでは、やれない。覚悟を持つまで時間がかかりましたし、それだけのエネルギーがある作品でもあった。いろんな方と話し合って出演を決めました」とオファーを受けるまでの葛藤を振り返った。

　完成した映画を見て、「みなさんが同じ気持ちを持ち、この作品に責任を持ちながら作っていたのでそれが反映されていたのかな。映画は、緊張感ある状態で進んでいく。その状態が、自分たちが生きている社会とって大事なのかなって。どこか平和ボケしてしまう現代だけど、平和なんて危険と紙一重と生活しているのかなと感じた」と語った。

　宮沢の夫を演じたオダギリは「映画って、いろんなタイプがあって。気楽に見られるものもあるし、今回の作品のように重いものを受け取って帰る映画もある」とし、「僕は世に問うというか、みんなで考えようという映画にどちらかというと興味があって参加したいと思っている。石井さんが向き合って作ろうとしている挑戦があるなら、それに乗らないわけにはいかなかった」と出演を決めた気持ちを明かした。