【どうする家康】小手伸也、忠世の生き様に共感 「バイプレイヤーの矜持」感じた

俳優の小手伸也が1日、松本潤が主演を務めるNHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)で演じる大久保忠世について、忠世を演じるうえで意識してきたことや印象的なシーンなどを紹介した。

大久保忠世役の小手伸也【写真:(C)NHK】
大久保忠世役の小手伸也【写真:(C)NHK】

身なりに気を配り色男を自称する大久保忠世を熱演

 俳優の小手伸也が1日、松本潤が主演を務めるNHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)で演じる大久保忠世について、忠世を演じるうえで意識してきたことや印象的なシーンなどを紹介した。

 まずは忠世を演じる上で意識してきたことを紹介。

「今作のお話を頂いた時、忠世の人物像について伺った情報は『自称色男』『薄毛を気にしている』など、これはコメディー担当ということなのかな? という要素がてんこもりでした。ふん装に関しても、家臣団の中で唯一ピンクを着こなしたり、スカーフを巻いたり、おしゃれに気を遣っている割には誰も触れないなど、いちいちコメディー要素満載なキャラクターです。ですが僕自身は、忠世の一番の魅力は、忠義にせよ美意識にせよ決してブレないその実直さにあるのではと思っていたので、“どんな時でも本人はいたって真面目”というのは軸にしようと考えていました。

 史料や逸話に残っている大久保忠世は、領民や家臣に対する思いやりが強く、殿(徳川家康)への忠義も厚く、今でも地元の方から愛されていて、全然コメディー要素の無い人。僕だからというのもあったと思いますが、古沢さんが思い切った味付けをしてくださったので(笑)、実際に伝わる忠世像とのバランスをとりながら、面白さはありつつも尊敬できる人にしたいというのは意識していました。つまるところ、僕自身が決してイケメンではないからこその『自称』なのでしょうが(笑)、家臣団の皆が冗談混じりではなく割と自然に『色男殿』と呼んでくれる以上、きっと『色男』と思える何かが忠世にはある。だとすれば、彼のメンタルが相当イケメンなのだろうという解釈に至り、あらためて皆さんとのお芝居の中でバランスを取る支点を発見することができました」

 アドリブやリアクションも多用したという。

「忠世は決してせりふの多い役というわけではなく、本編で史料に残る忠世の活躍全てが描かれるわけでもないので、場面に存在する必然性、あるいは存在しなかった必然性を表現するため、アドリブやリアクションを多用し、各回の間やシーンの行間を埋めるお芝居を特に意識しました。たとえば、真田家との上田合戦について。今作では深く描かれませんでしたが、忠世はそこでかなり苦戦しました。画面に映らないところで戦に出ていたことを表現しなければと思い、第35回で真田昌幸(佐藤浩市)が殿の前に現れた時、今までの忠世では考えられないくらいすごくイライラしているというお芝居を足しました。いかに真田に手を焼いてきたかというのをにじませたいと思いからでしたが、本編で描けない部分を少しでも視聴者の皆さんにイメージしてもらうことで、シーン前後の説得力につなげられたらというのは考えていました」

 徳川家臣団との関係性に関しても同様だったと説明。

「史料では、たとえば正信(松山ケンイチ)の帰参を忠世が助けたという説や、戦場でわがままを言う万千代(井伊直政/板垣李光人)を忠世がたしなめたという逸話もあるそうです。本編で語られなかったエピソードをまるっきり無かったこととしてスルーせず、あくまで裏設定として、もしかしたら見えないところで、時には他の家臣たちの肩をたたいてやったり、たしなめたり。皆に気を配り、徳川家臣団をかげで支えていたのかなと想像しながら演じていました。輝くべき人が輝くために全力を注ぎ、作品に彩りを与えるというのが、僕が俳優として目指しているバイプレイヤーの矜持なのですが、忠世の生き様にも近いものがあるなと思っていました」

 心に残っているシーンはどんなシーンだろうか。

「第25回で若殿(松平信康/細田佳央太)が自害してしまうシーンは特に心に残っています。忠世は守りの要として留守居を任されることが多い、いわば『2軍のキャプテン』的ポジションなので、最前線で起こった出来事を後から聞くケースも多かった中、信康様の死は、自分が預かる二俣城で、目の前で起こった出来事でもあったので……。それをどうすることもできなかった苦しさがすごくありました。忠世が実際に小田原城主となった後も、殿がそうしたように忠世もまた信康様を弔うためのお寺を建てていまして、それはきっと悔恨の念以上に、信康様に対する敬愛と、殿のお心に生涯寄り添い続けた忠世の忠心があったのだろうと思います」

 徳川家臣団についてもコメント。

「三方ヶ原の戦いで夏目(広次/甲本雅裕)殿とのんべえ(本多忠真/波岡一喜)殿が討ち死にしましたが、それまでの家臣団のバランスはすごく良かったんです。ベテラン組とやんちゃな若者組。その中盤を夏目殿、のんべえ殿、忠世が支えるという構図で。いつも冷静で論理的な夏目殿と平八郎(本多忠勝/山田裕貴)にもがつんと言って家臣団の若手を締めてくれるのんべえ殿。そんな2人が亡くなってしまった三方ヶ原以降、2人が担っていた役割を少しでも担いたい、大人にならなければと、忠世の意識も少しずつ変化していったのかなと想像しながら演じました。

 台所で話し合っているシーンなど、昔はあるもの必ず手を伸ばしてモグモグ食ってましたが、段々それにも手を付けられなくなったり(笑)。史実では、大久保氏には兄弟が多く、長男の忠世をはじめ皆徳川家に仕えていました。忠世の世話好きはそうした長男気質もあったのでしょうが、今作においてはその関係性を平八郎や小平太(榊原康政/杉野遥亮)、万千代にも投影させてもらいました。なので、彼らが話す時は大抵そちらを見ています。肩をたたいたり抱き合ったりは自然な感情から出たアドリブが多く、やっていて楽しかったです」

 正信についても言及。

「正信に関しては第9回の回想以外ほぼ関係性が描かれないままだったので、世話の掛かる腐れ縁を本編で描けない分どう表現するか、帰参以降は特に悩みましたが、軍議の最中彼が散らかした白石を黙って片付けるなど、他の家臣たちとは違う反応を心掛けました。忠世にとって家臣団は家族そのものでしたが、正信に関してはどちらかというと友人のような感覚だったのかな(笑)。今作の魅力の一つは、家臣団の群像劇だと思っています。それぞれ異なる良さを持つメンバーが、時に衝突しながらも、“殿のため”という共通の思いを持って進んでいく。協力して乱世を生き抜いていく人間模様の面白さがあると思うので、忠世もそのピースの一つになれていたら本望だなと思います」

 第37回では家臣団が集まったシーンがあった。

「忠世は、徳川家が生き延びられるように、家臣団の一員として結束して殿を支えるという意識でいつも行動しているだけ。誰かから感謝されたいという意識は毛頭無かったと思うので37回最後に家臣団が集結するシーンを台本で初めて読んだ時は、言いしれぬ気恥ずかしさがありました(笑)。最後、殿に対して『ありがとうございました』と頭を下げるシーンは、本当に感無量でした。これまでも、第1回で殿が久しぶりに岡崎に戻ってきて、家臣団が宴を開いたシーンを時々思い出すことがあったのですが、まさに37回の撮影中も、ふと思い出して。艱難辛苦を共に乗り越え、笑ったり泣いたり怒ったりと一緒に年を重ね、殿の変化を近くで見守ってきたんだなと思うと、心底ぐっとくるものがありました。

 放送を見ていても、自分たちのアルバムをめくっているような、不思議な気分になるんです。1年以上にわたる撮影で同じ役を演じ続けたのは今作が初めてでしたが、人生を演じるというのは本当に面白く、役者冥利に尽きる仕事だったなと、あらためて思いました。僕はこの作品を通じて大久保忠世として生きられたことを誇りに思いますし、忠世で良かったと心から思っています。この出会いを一生忘れることはないでしょうし、松本潤さんをはじめ、全ての共演者、関係者の皆さまには感謝しかありません」

 小手自身はクランクアップを迎えた。

「無事クランクアップを迎えましたが、もうこの現場に来られないんだと思うと、純粋に寂しいです。これからは一視聴者として徳川の未来を最後まで見守っていきたいですし、引き続き撮影を続ける仲間たちを心から応援したい気持ちです。それはきっと、その後小田原にて天寿を全うした大久保忠世公が、あの世で殿の身とその行く末を案じながら、生き残った家臣団の皆を叱咤激励するような、そんな気持ちとどこか近しいような気がしてなりません。殿! 皆も! 忠世は幸せ者にございましたぞ! 心より、感謝申し上げる」

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