「強い相手と闘えるなら…」“太陽神”Sareeeと“悪魔”中島が共闘も…相手が見つからない

それは唐突に決まったタッグチームだった。10月10日に開催されるSEAdLINNNG(シードリング)の新宿FACE大会で、“太陽神”Sareeeと“冷酷の悪魔”中島安里紗が前代未聞の“神”“悪魔”タッグを結成することが決まったのだ。今回はここにまつわる課題や注目の対戦相手に関する大予想もしてみたい。

前代未聞の“神”と“悪魔”が手を組んだ瞬間【写真:(C)cSEAdLINNNG】
前代未聞の“神”と“悪魔”が手を組んだ瞬間【写真:(C)cSEAdLINNNG】

“神”“悪魔”タッグの対戦相手難航中

 それは唐突に決まったタッグチームだった。10月10日に開催されるSEAdLINNNG(シードリング)の新宿FACE大会で、“太陽神”Sareeeと“冷酷の悪魔”中島安里紗が前代未聞の“神”“悪魔”タッグを結成することが決まったのだ。今回はここにまつわる課題や注目の対戦相手に関する大予想もしてみたい。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 15日に開催されたSEAdLINNNGの新木場1stリング大会。メイン終了後にまさかの展開が起こった。

 新王者・Sareeeがリング上で、「私、どうしようかな、(今後の)カード。このベルトに挑戦して来る人もなかなかいない感じだし。といってもタッグパートナーいないし……」とマイクを使って独り言のようにつぶやきながら視線をリング下に向けた次の瞬間、「な、なに見てるの? クソ悪魔」と、本部席近くにいた“冷酷の悪魔”中島安里紗に向かってそう言い放った。

「見てねえし」と反論する中島に、「いや、見てた」とSareee。

 すると本部席にいた南月たいよう代表が「見てたよ、たしかに」と追い討ちをかけつつ、「いいじゃん、いいじゃん」と両者のタッグ結成をうながすと、「嫌だ嫌だ嫌だ」とSareeeは拒否しながらも、全面的に拒否というわけではない雰囲気を醸し出す。

 結局、南月代表が「Sareeeと中島安里紗のタッグ、いいじゃない。前回、(8月25日、後楽園ホールでのタイトル戦で)決着もついたし、太陽神と悪魔。ちょっと(リングに)上がってみて上がってみて。見た感じで判断するわ」と中島に指示を出す。

 ようやくリングに上がった中島だが、Sareeeと横に並ぶと、思わず南月代表は「いいじゃんいいじゃん。ちょっと試しに組んでみなよ、1回ね。うまくいくかもしれないし。試しに、いいですよね、みなさん、10月10日、新宿FACE、2人のタッグはどうでしょう?」と観客に同意を求める。

 期せずして会場から大きな拍手が湧き起こる。

 そうなるとSareeeとしては、「お客さんが見たいなら、やるしかないんじゃないのかな。どうですか?」と再度観客の反応を見ながら、「最初で最後になるかもしれない。クソ悪魔と天使太陽神でタッグを組みましょう」とSareeeが左手を差し出す。

 渋々ながら中島が握手を交わすと、さらに湧き起こる大拍手。かくして10月10日、新宿FACE大会で前代未聞となる“神”と“悪魔”によるタッグチーム結成が正式に決定した。

 しかし注目されるのは、Sareeeが言った次の言葉だろう。

「南月さん、この2人を組ませたら、相手になる強いヤツを連れてきてくださいよ」

 確かに“神”と“悪魔”によるタッグチームとなると、相手になるのは並大抵の人選では納得できない。そう思っていたら、案の定、25日の午後11時46分、南月代表は自身のSNSに以下の投稿を公開した。

「中島安里紗&Sareeeの対戦相手難航中。お前らとやりたい奴なんて居ねーってよ!!!」

 文末に鬼のスタンプが使われていることからも、かなりご立腹のようだ。

“神”と“悪魔”が手を組むことを後押ししたSEAdLINNNGの南月たいよう代表【写真:(C)cSEAdLINNNG】
“神”と“悪魔”が手を組むことを後押ししたSEAdLINNNGの南月たいよう代表【写真:(C)cSEAdLINNNG】

注目の対戦相手を大予想

 それでも、時間がない中で、誰と絡むと“神”と“悪魔”のタッグとの対比が際立つのか。それを考えてみた。

 まず順当に考えるなら、単純に他団体の王者を2人そろえて、Sareee&中島の対局に立たせる方法だが、政治的に考えると、そう簡単に話が進まないことは容易に想像できる。そんな簡単にできるのであれば、誰かしらが企画→実行(実現)しているだろう。

 となると別の方法を用いなければならないが、話題性だけで考えると、やはり女子プロレス界の人気者、ウナギ・サヤカは入れたいところ。

 ウナギは12日に左肩を、ウナギ用語で言うところの「フェスティバル」(負傷)させてしまってはいるが、22日には米国ニューヨークで開催された「SUKEBAN」では苺サヤカとして登場。実際、“神”と“悪魔”タッグの試合が行われる前日の10月9日には、GLEATの後楽園ホール大会で、8人タッグマッチながら、首都圏初となる両者の絡みも実現するだけに、前哨戦が本格的な“開戦”につながっていくなら、それはそれで面白い。

 ウナギは8日に全日本プロレスでSareeeとタッグを組み、KAIRI&安納サオリと闘った際に不覚を取ったこともあり、Sareeeに「闘いが足りない」と指摘されていることからも、Sareeeとウナギが闘う動機もそろっている。

 仮の話、その場合にはウナギのパートナーに、ウナギいわく「おかん」と慕う、伊藤薫が適任ではないか。それなら伊藤がかつて所属し、Sareeeと中島が憧れた全日本女子プロレス魂との激突になるため、Sareeeも中島も願ってもないところでは、と思う。加えて、伊藤とSareeeは師弟関係にあるため、その部分でも見どころが出てくる。

 また、SEAdLINNG内だけで考えれば、やはり現タッグ王者のリトベリ(笹村あやめ&海樹リコ)が、Sareeeの言う「強い相手」になる。リトベリに関しては、10月10日の新宿FACE大会では、ラ・ピディータ&カ・ケディータの挑戦を受けることが決まっているので難しいが、実現すれば、Sareee&中島にとっても望むところだろう。

 いずれにせよ、“神”と“悪魔”のタッグが試運転も兼ねてのコンビ結成だと思うと、コンビネーションや意思の疎通も含めた問題も出てくるに違いない。それぞれが強いといっても、タッグで闘うのはまた別の要素が必要になってくる。Sareee&中島からすればそんなことは百も承知と思っているだろうが、意外とその初歩の初歩がすれ違うと、とんでもないことになる。

 その前に、素朴な疑問として、“神”と“悪魔”は過去に組んだことがあるのかとSareeeに問うと、「いやあ、ないと思うけど、分からない。記憶にないからないと思います」とSareee。

 では、どんなタッグになると思うか、と問うと、Sareeeは「全然予想がつかないですね。どんなタッグになるんだろ? 意外とバッチリ合うか。合わないか。合うわけないですよね。でも、組むからには絶対負けられないので、ホントに強い相手楽しみにしています」と答えている。

 一方、神&悪魔タッグを決定した南月代表は、「ちょっと見てみたくなっちゃって。天使と悪魔が交わる。試しにね。これがどう転がるか分からないですけど、お客さんの見たいっていう声も大きかったので。1回組んでみるのはどうですか」と、あくまでお試し企画であることを強調した。

“燃える闘魂”のお墨付きをもらった“神”と“悪魔”

 ともあれ、Sareeeと中島の両者は、令和女子プロレス史上に残る壮絶な一戦(8月25日、後楽園ホール)を繰り広げ、結果として、12日には神奈川・鶴見にある曹洞宗大本山總持寺で行われたアントニオ猪木の一周忌法要に、日本の女子プロレス界代表として参列したのだ。これは、いわば“燃える闘魂”のお墨付きをもらったようなもの。

 仮の話、もしそうだとしたら、Sareeeと中島の背負った使命は並大抵のものではない。そうでなくとも「殺し」をたずさえてリングに上がる「絶滅危惧種」は、文字通り絶滅の危機に瀕しているのだから、Sareeeと中島は闘いを通じながら、対戦相手の「殺し」を呼び起こしつつ、「絶滅危惧種」を増やす努力をしていかなければならない。

 幸いなことに、Sareeeと中島はそれを熟知しているのか、両者がタッグチームを結成することに関して、「まさかの組む流れに…。強い相手と闘えること期待してます」(Sareee)と自身のSNSに投稿していたが、中島も自身のSNSに「Sareeeの言いがかりでタッグを組むことに。でもまぁ強い相手と闘えるならなんでも」と、「強い相手」であれば、細かいことはどうでもいい、というスタンスにある。

 実はこのポイントこそ、猪木的というか、“燃える闘魂”が最もこだわった部分だが、そういった真っ当さが、令和の女子プロレス界では逆に新鮮に映ってしまうという皮肉な話でもある。

 ちなみに中島に関しては、「悪魔」と呼ばれることに違和感を持っているのか。もしくはポーズなのかは分からないが、たしかに世間体を気にするのであれば「悪魔」と呼ばれることは不名誉なこと。されども非常識なこの業界、「悪魔」と呼ばれることこそ、最高の栄誉だと思ったほうがいい。

 というのは、ここまで神&悪魔タッグに向けた期待感を記述してきたが、そもそも論としていえば、この企画自体、新王者であるSareeeに挑戦するだけのふさわしい相手が出てこないことからはじまった、いわば急場しのぎ。これがこの後に大がかりなタッグリーグ戦なりに挑むのであれば話はまた違ってくるが、そうではないのだから、お試し企画になる。

 たしかに、Sareeeと中島による一騎打ちの直後は、両者の壮絶な試合に恐れおののいて誰も名乗りを上げなかった、というのも百歩譲って理解できるが、今大会でもSareeeに対して挑戦の名乗りを誰も上げなかったのはどうしたことか。

 ぶっちゃけた話、今のSareeeとリング上で交われば、誰であってもそれなりに注目される。それがわかっているのに手を上げない女子プロレスラーの神経は理解に苦しむ。いや、注目されることがわかっているからこそ、そのプレッシャーに向かい合う気がないのか。

 事実、Sareeeも「このベルト、防衛戦をやりたいんですけど、なかなか挑戦者がいないと。今回も名乗りを上げられなかったし、この間、後楽園でベルトを巻いたときも来なかった。ちょっと残念ですね」と頭を悩ませている。

 だからこそ、神&悪魔タッグが試運転を終えた後は、その流れがSareeeの防衛戦に直結していくことが必須条件。SEAdLINNNGのシングル王座が「強さの象徴」ならばこそ、本格的にその本筋に進むために、今回の試運転が実現されると思うと、唐突な神&悪魔タッグへの楽しみも倍増する。いや、意外とうまくいって、このまま女子プロレス界のタッグ王座を全部総取りしていく旅に出る、なんてのも面白いのかも……。

 ということで、今はそんな身勝手な妄想を膨らませながら、正式な対戦カードの発表を心待ちにしたい。

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