「17LIVE」CEOインタビュー 「Vライバーはオアシス」 リアルタイムで収益化したい場合はVライバーが有利

「イチナナ」の愛称で親しまれている国内最大級のライブ配信アプリ「17LIVE」。歌やダンス、トーク、ゲーム、バーチャル配信など、ライバー(ライブ配信者)が披露したいこと、話したいことをいつでもどこからでも発信できる台湾発の新感覚エンターテインメントだ。アジア、米国を中心に登録者は5000万を超え、世界規模でライブ配信が楽しめるプラットフォームとなっている。また、「17LIVE」の認証ライバー数はコロナ禍で3.2倍に増加。億円単位の収入を稼ぎ出すライバーもいるという。ENCOUNTは、来日した17LIVE代表取締役兼グループCEOのアレックス・レン氏にインタビュー。今回の「前編」では、同社が今年注力している「Vライバー(バーチャル配信ライバー)」領域にフォーカスし、ライブ配信入門者のために『Vチューバー』と『Vライバー』の違いを聞いた。

Vライバーの収益化について語ったアレックス・レンCEO【写真:17LIVE提供】
Vライバーの収益化について語ったアレックス・レンCEO【写真:17LIVE提供】

億単位の収入を稼ぎ出すライバーも…24時間体制で配信内容を確認するAIシステムが稼働

「イチナナ」の愛称で親しまれている国内最大級のライブ配信アプリ「17LIVE」。歌やダンス、トーク、ゲーム、バーチャル配信など、ライバー(ライブ配信者)が披露したいこと、話したいことをいつでもどこからでも発信できる台湾発の新感覚エンターテインメントだ。アジア、米国を中心に登録者は5000万を超え、世界規模でライブ配信が楽しめるプラットフォームとなっている。また、「17LIVE」の認証ライバー数はコロナ禍で3.2倍に増加。億円単位の収入を稼ぎ出すライバーもいるという。ENCOUNTは、来日した17LIVE代表取締役兼グループCEOのアレックス・レン氏にインタビュー。今回の「前編」では、同社が今年注力している「Vライバー(バーチャル配信ライバー)」領域にフォーカスし、ライブ配信入門者のために『Vチューバー』と『Vライバー』の違いを聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

――若年層への国内各種調査によると、将来なりたい職業の1位はYouTuberです。入門者向けにYouTubeを拠点に活動するVチューバ―とVライバーの違いを教えてください。

「Vチューバ―は『バーチャルユーチューバー』の略で、YouTubeをはじめとする動画投稿サイトが活動の拠点です。Vチューバ―は動画編集が必要なため、パソコンで多くの作業をする必要があって長い時間と初期費用がかかります。一方、Vライバーは自身がバーチャルキャラクターとなってライブ配信をする人のことです。リアルタイムで配信するため、後から配信内容を変更することができません。しかし、リアルタイムであることはより本物であるということです。私たち17LIVEはテクノロジーの観点からVライバーを支援しています。これは非常にユニークな取り組みだと思います」

――Vチューバ―としてはがうる・ぐら(英語:Gawr Gura)、宝鐘マリン(ほうしょうマリン)、キズナアイ、兎田(うさだ)ぺこら、などが知られていますが、制作にかなりの労力と費用をかけているように見えます。ライバーになれば、そのような負担が軽減される可能性がありそうです。

「VチューバーとVライバーは、ファンに手を差し伸べるための方法がそれぞれ異なります。YouTubeの場合、アーカイブビデオを多く作成する必要があり、それらの再生によって収益が生まれます。一方、リアルタイムで収益化したい場合はVライバーが有利です。もちろん、YouTubeにもライブストリーミング機能がありますが、17LIVEの場合はライブストリーミングのサポートをすぐに実行することができます。ファンがお気に入りのライバーとリアルタイムで対話してギフト(投げ銭)を贈るのも1つの方法で、視聴者がライブ配信の雰囲気を作り出すこともできます。そこがYouTubeとの大きな違いです」

――リアルタイムとなると不測の事態が心配されませんか。

「17LIVEはテクノロジーを駆使して安全な配信視聴環境を作り出しています。365日24時間体制で配信内容を確認するAIシステムが稼働しており、重大な規約違反や不適切なコメントを行なったと判断した場合、配信規約にのっとり該当ユーザーのアカウントと端末の凍結など、適切な処置を適宜行います。AIによるチェックのみに頼ることなく、専任チームによる有人チェックを行います。また、ユーザーの方がサービス内で利用規約に違反していると思われるコンテンツやアカウントを発見した際は、『プロフィールページ』や『タイムライン』から通報できる仕組みを設けています。ライバーやリスナー(ライブ配信視聴者)の皆さんが安心してサービスを利用していただけるような環境を整えております」

――2017年に日本でサービスを開始後、多くのライバーを輩出しました。人気を得た理由は何でしょうか。

「当時の日本ではライブ配信について知っている人はさほど多くありませんでした。そんな中、17LIVEのトップライバーである岸田直樹さんが17LIVEでいち早く配信を始め、彼自身のファンベースを構築していきました。彼の配信は非常に話が聞きやすく、快適で、まるで兄のような存在でした。彼は歌わないし楽器を演奏するわけでもありません。ただただ話しやすい存在でした。仕事で大変な1日を過ごして帰宅したリスナーにとって、気兼ねなく話せる存在は貴重だと思います。日本では一般的に多くの人が1人暮らしをしていて、自分にとってのオアシスを見つけたいと思っています。17LIVEの配信をのぞけば、あなたはそんな誰かを見つけることができます。また、あるおばあさんが娘に教えられて17LIVEを始め、日常で起こったことを話すだけなのですが、ファンの輪がどんどん広がって人気ライバーになった事例もあります」

――17LIVEのホームページには各国・地域ごとに人気ライバーがランキング化されています。それぞれどのような特徴がありますか。

「まず、台湾について紹介しましょう。台湾では政治家がライブ配信に参加しています。とはいえ、政治について話すわけではありません。蔡英文(サイ・エイブン)総統はほとんどの時間をネコの話題に費やします。台湾で彼女は愛猫家として知られています。また、柯文哲(カ・ブンテツ)元台北市長はもともと外科医ですが、政治の話は一切しません。リスナーからギフトをもらった際の表情がかわいい、として人気です。そのほか、世界中のライバーが集まる年に1度のビッグイベント『17 春酒 -世界戦 in 台湾』も開催しています。複数のステージで、ライバーによるパフォーマンスが披露されリスナーと交流できるフェスのようなイベントです。実際に歌って踊るライバーの姿も見られて、オンラインでもオフラインでも楽しめます。日本からも人気ライバーが台湾に飛んでステージを繰り広げるなど、計約2万人ものリスナーが参加しました。ライバーの世界がグローバルに広がっているところがとてもユニークです」(※アレックス氏の使用言語はすべて英語)

□アレックス・レン 台湾生まれ。14歳で米国に移住し、ノースイースタン大(Northeastern University)を卒業。通信業界で約9年間勤務した後、スターバックスに転職し、中国に赴任。2008年にはゲーム業界に転身し、中国を拠点にゲームの設計・開発・運営・マーケティングの統括を担当。Break Media社では、マンガアートスタイル、パルクールアクション、クラシックゾンビのジャンルを融合させたモバイルアプリゲーム「Zombie Parkour Runner」を開発。17LIVE入社後は、台湾と東南アジアのゼネラルマネージャーとして次世代グローバルライブ配信プラットフォームを構築。22年9月、17LIVE代表取締役兼Group COOに就任。今年3月、同 CEOに就任。「17」は中国語の「一起(イーチー:一緒に)」に由来する。

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