アキラ100%、40歳までバイトの下積み生活 本名では俳優活動…服を着た大橋彰の素顔

裸に蝶ネクタイとお盆のピン芸人・アキラ100%。2017年にブレイクしたが、学生時代から志していた俳優の道も歩んでいる。本名の「大橋彰」で活動し、映画主演も果たした。充実した二刀流の日々。ENCOUNTは服を着た大橋の素顔に迫った。

俳優としても活躍する「アキラ100%」こと大橋彰
俳優としても活躍する「アキラ100%」こと大橋彰

9月29日全国公開の映画『こん、こん。』にも出演

 裸に蝶ネクタイとお盆のピン芸人・アキラ100%。2017年にブレイクしたが、学生時代から志していた俳優の道も歩んでいる。本名の「大橋彰」で活動し、映画主演も果たした。充実した二刀流の日々。ENCOUNTは服を着た大橋の素顔に迫った。(取材・文=大宮高史)

 芸人・アキラ100%と2つの顔を持つ大橋は8月23日、連続テレビ小説『らんまん』の103話に出演した。料亭の料理人役。事前告知のないサプライズ出演で、ネット上には「料亭に溶け込むアキラさん」「びっくりした~」などの声が相次いだ。

「よくエゴサーチもするんですが、ドラマに出た後は『あの俳優、アキラ100%じゃん!』って驚かれますね。今の僕って、特段、二枚目でもなく肥満でも小柄でもなく……体型も容姿も平均的な日本人男性です。なので、服を着てしまうと『完全に普通の人』なので、コメディーにもシリアスにも振っていける。『平凡さ』からくる振り幅の広さを期待されているのかなと思います」

 9月29日に全国公開の映画『こん、こん。』(横尾初喜監督)では、主人公・堀内賢星(遠藤健慎)のアルバイト先にいる先輩のマキノを演じた。長崎弁でしゃべりまくるコミカルな役だ。横尾監督の監督初作品である映画『ゆらり』(2017年)は、大橋が初めて出演した長編映画。信頼関係を築いた2人は監督、俳優として作品を積み重ねてきた。

「横尾監督は、僕が出演していた舞台作品を客席から見ていたことがあって、それが縁で後年、俳優としてオファーをいただいたんです。まだピン芸人になりたての時期だったので、監督も僕が芸人だとは知らなかったそうです」

 ブレイクする前だったが、『ゆらり』に出演。その後、『こはく』(19年)で準主役を経験し、『達人 THE MASTER』(21年)では映画初主演と着実に横尾監督の期待に応えてきた。

「『こはく』では、井浦新さんと女手一つで育てられた兄弟の役でした。僕は兄役で、一緒に生き別れた父を探していくゆっくり人の心に染み込んでいくようなストーリーでした。コメディー要素は皆無で、『人の情感の深いところまでアプローチしていかないと』と思い、俳優人生でも一番考え抜いて自分に負荷をかけていました。監督が僕の『平凡さ』を個性にとって、起用し続けてくれることもありがたいです」

『こん、こん。』は全編を長崎県で撮影。大橋は「チーム横尾」の空気感も語った。

「いつも家族感があって和気あいあいとしています。スケジュールが詰まってきても殺伐としたりはしないんです。作品でも現場でも、人に対する優しさや温かみを大事にしている方だなと思います」

 大橋の芸能活動の原点は、高校時代から打ち込んでいた演劇だ。鴻上尚史氏が率いた『第三舞台』や、野田秀樹の主宰で活動した『夢の遊眠社』、劇団『キャラメルボックス』の芝居にも熱中。大橋は「シリアスな要素もあるけど、笑えるコメディータッチの軽演劇、そういったものが好きで見てきたし、芸人になる前も続けて演じていました」と回想する。

 大学卒業後、30歳を過ぎてからは大学の同級生・新田祐樹とお笑いコンビ・タンバリンを結成した。小劇場やライブハウスの舞台に立ち続けた。

「40歳を過ぎて売れるまでずっとアルバイトをしていました。まず、30歳で芸人も始めるというのがギャンブルですよね(笑)。芽が出ないなら諦める年齢ですよ。当時は今のようにアラサー、アラフォーのおじさん芸人が受ける時代でもなかったので、一緒に活動してくれた相方にも感謝しています」

同じ“裸芸”のとにかく明るい安村から刺激を受けた
同じ“裸芸”のとにかく明るい安村から刺激を受けた

アキラ100%の裸芸はコンビ時代のネタをアレンジ

 10年にコンビを解散。「アキラ100%」の名を全国区にした裸芸は、コンビ時代のネタをアレンジしたものだった。

「コンビ時代に喫茶店の店員をネタにしたコントをやっていました。いろいろなテーマに応じた特徴を持った店員が登場し、最後に裸の店員が出てくるというオチでした。2015年の『山-1グランプリ』のオーディションで『宴会芸のようなネタ』をテーマに出されて、その時にこれを生かした裸とお盆のネタが生まれました。そもそも、『裸でテレビに出る』というギリギリのところに挑んでいたので、テレビを通じてあれだけ売れたことも予想外でしたね」

 そして、2017年に『R-1ぐらんぷり』で優勝。以降、仕事が途絶えることはないが、俳優として「バイプレイヤー」の地位も築いてきた。

「『過去の作品のおかげで新しいオファーをいただいて』といういいサイクルになっています。高校時代から演劇の道に入って、20代は芝居づくし。それでも諦められずに芸人にもなって、40歳を過ぎて人生を懸けてきた俳優の仕事をどんどんいただけて……。振り返ると、大変な20代・30代でしたが、諦めなくて良かったです。裸になったおかげで、服を着たときとのギャップも僕の引き出しになりました」

 今年は同じ「裸芸」のとにかく明るい安村が、英国のオーディション番組をきっかけに再ブレイクした。大橋は「アキラ100%」として刺激を受けていた。

「安村さんって裸以外のネタもすごく面白いですし、裸芸って言葉が分からなくてもまず笑ってしまうインパクトがあります。もしかすると、1国ずつブームを起こしていけば『裸芸だけで稼げるぞ!』というアイデアがあるのかも。僕もチャンスがあれば、海外でのブレイクを狙っていきたいですね」

 俳優を志してから20年以上。ようやく夢がかなった状況だが、言葉通り、芸人も続けていくつもりだ。

「『裸芸はやめたんですが』とも聞かれますが、そんなことはないです(笑)。僕自身、芸人と俳優をコインの裏表のように演じ分けていることを楽しんでいて、好循環を生んでいると思います。俳優としてもコメディーは大好きなんですが、醸し出す空気感がお笑いに寄りすぎないようにしたいです。そして、どちらのジャンルでも、もっともっと評価されるように進んでいきます。いつ脱いでもいいように50代になっても、きれいなボディーを保つつもりでいます」

 裸で芸人、服を着て俳優。大橋は守りに入らず、独自の二刀流を続けていく。

□大橋彰(おおはし・あきら)1974年8月15日、埼玉・秩父市生まれ。2017年、ピン芸人日本一を決定する『R-1ぐらんぷり』で優勝してブレイク。俳優としては映画『ゆらり』『こはく』『近江商人、走る!』などに出演し、21年公開の『達人 THE MASTER』で主演。今年はフジテレビ系連続ドラマ『テイオーの長い休日』、映画『こん、こん。』『おまえの罪を自白しろ』などに出演している。血液型A。

次のページへ (2/2) 【写真】朝ドラ『らんまん』での浜辺美波との2ショット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください