俳優の本郷奏多（32）がテレビ東京の木ドラ『姪のメイ』（深夜24時30分）に主演している。合理主義者の独身男、小津が両親を亡くした姪っ子をお試しで引き取り、福島に仮移住する物語。映画『こちらあみ子』で鮮烈なデビューを飾った新星・大沢一菜（かな＝12）と初共演を機に、自身の子役時代も振り返ってくれた。（取材・文＝平辻哲也）

　テレビ東京のドラマは2014年放送の主演作『なぞの転校生』以来9年ぶりの出演となる本郷。ドラマは、姉夫婦を事故で亡くした主人公・小津が姪っ子・メイを1か月だけ引き取ることになり福島へ仮移住する、というひと夏の出来事を描いたヒューマンコメディーだ。姪のメイ役は映画『こちらあみ子』（2022年）で真っ直ぐな少女あみ子役で主演デビューし、『季節のない街』（2023年Disney+）では少年役を演じた大沢が務めた。

「僕もだいぶ合理主義で、無駄なことは嫌いなんです。劇中の小津もそういった面があるので、その点は似ていると思います。一番大事なのは姪役の一菜ちゃんと仲良くなることだったので、彼女は本当に人懐っこくて明るい子だったので、すぐに打ち解けました」

　ロケは東日本大震災で被災した福島12市町村で行った。

「福島原発から近い場所で、非常に人が少ない地域もありました。その分、自然が豊かで、作品のテーマ性ともマッチしていたと思います。被災した小学校がダメージを受けたままの状態で残っていて、何時何分に津波が来たとか、校内放送で山に逃げるよう指示が出たなど書かれていました。被災地に何かできればいいなと思いました」

　自身も10歳の時にデビューした子役出身者。02年の映画『リターナー』では主演・金城武の少年期、『MOON CHILD』（03年）ではGacktの少年期を演じた。

「自分はかなりひねくれていたと思います。実を言うと、小学生の頃は責任感もなく、何も考えずにやっていました。中学生になって徐々に大きな作品に出演するようになり、責任感が芽生えてきました。だからこそ、一菜ちゃんは素晴らしいと感じます。一緒にいると、心から笑う瞬間が増えました」

　撮影で印象深かったのも、大沢とのやりとりだという。

「一菜ちゃんと結構な距離を走るシーンがあったのですが、久しぶりにしっかり走ったことも有り僕がセリフを間違えてNGを出してしまったんです。『ごめんね、間違えちゃった』と言ったら、『いいよ、誰でも間違いはあるよ』って（笑）。癒されましたね」

　本郷はキャリア20年以上。その間、二枚目から癖強まで幅広い役柄を演じてきた。

「細かく考えると、やめたいと思ったことは何度かありましたが、それがはっきりとは覚えていないということは、問題が微々たるものだったということでしょう。基本的にはこの仕事が楽しくて、信念を持って続けています。見てくださった方から『良かったよ』と言ってもらえるのはやりがいを感じます」

　子役との本格共演には刺激を受けたようで、「この作品は、微妙につかみどころのない不思議な空気感があると思います。メイちゃんがその主軸で、彼女を楽しむドラマになっていると思います。そこが楽しいと思うので、ぜひ多くの人に楽しんでもらいたいです。僕自身も、とても癒されて、彼女から引き出された部分があると思います。大人の役者さんとは違う意外性がありました」。本郷も、劇中の小津ともに成長を実感したようだ。

□本郷奏多（ほんごう・かなた）1990年11月15日生まれ。宮城県仙台市出身。2002年に映画『リターナー』で俳優デビュー。映画『GANTZ』シリーズ(2011年)、映画『進撃の巨人』(2015年)、映画『鋼の錬金術師』シリーズ(2017年・2022年)、映画『キングダム』(2019年)、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」(2020年)、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』（2022年）など数々の話題作に出演。今年4月に放送されたフジテレビドラマ『クライムファミリー』（2023年）で主演を務め、今年12月に配信予定のNetflixシリーズ『幽☆遊☆白書』、2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』への出演を控える。