平野綾、芸能生活25年で2.5次元舞台に初挑戦 『チェンソーマン』マキマ役に「ゾクゾクします」

俳優でアーティストの平野綾が、9月16日初日の舞台『「チェンソーマン 」ザ・ステージ』(東京・天王洲 銀河劇場)に出演する。平野にとっては初挑戦の2.5次元舞台。同作への意気込み、芸能生活25年で感じたことを語った。

芸能活動25周年を迎えた平野綾【写真:山口比佐夫】
芸能活動25周年を迎えた平野綾【写真:山口比佐夫】

9月16日初日の舞台『「チェンソーマン 」ザ・ステージ』に出演

 俳優でアーティストの平野綾が、9月16日初日の舞台『「チェンソーマン 」ザ・ステージ』(東京・天王洲 銀河劇場)に出演する。平野にとっては初挑戦の2.5次元舞台。同作への意気込み、芸能生活25年で感じたことを語った。(取材・文=大宮高史)

『「チェンソーマン 」ザ・ステージ』は、 人気漫画『チェンソーマン』が原作。初の舞台化で注目されている。異形の怪物「悪魔」がばっこする世界で、デビルハンターと悪魔が戦うスプラッター・アクション。さまざまな悪魔とのバトルシーンが繰り広げられる原作をどう舞台化するのか? 主人公・デンジの上司で、謎めいた女性・マキマを演じる平野も楽しみながら、稽古に打ち込んでいる。

「ゾクゾクしていますね。ジャンプ作品ではかなり珍しくダークヒーローに寄り切った作風なだけに、プランを聞くだけで初めて見るような演出の連続で『舞台に上がったらどう見えるんだろう』と、演じる私たちも楽しみにしています。今までに見たこともないような想像を超える舞台になりそうです」

 2006年に主人公の涼宮ハルヒを演じたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』と出演声優で歌唱した主題歌『ハレ晴れユカイ』がヒット。00年代のアニメブームの立役者にもなった。ソロアーティストとして活動。2010年代からは舞台を活動の軸とし、『レ・ミゼラブル』(13年)『レディ・べス』『モーツァルト!』(14年)など、ミュージカルで大役も経験してきた。豊富な舞台歴の中で、平野は今回、漫画・アニメ原作の作品が初出演となる。そこには、自身も声優で演じてきたアニメキャラクターへのリスペクトがあった。

「既にアニメで声を吹き込まれたキャラクターを同じように声の活動もしている私が舞台で演じてしまうと、アニメキャストが作ったイメージを損なってしまうかもしれないと二の足を踏んでしまって、(2.5次元作品は)これまでにもオファーをいただくことはあったのですが、なかなか踏み出せずにいました」

 声優としての平野を知るアニメファンも多い。声の印象が強いゆえに、アニメでのイメージとのギャップが生まれる可能性を懸念。声の仕事、舞台の両方にリスペクトを持ちながら取り組むために、『「チェンソーマン 」ザ・ステージ』への出演は、高いハードルを飛び越える気持ちで決意したと振り返る。

「情報公開後、たくさんの方から反響をいただいて、とてもポジティブな応援の声が届きました。プレッシャーが和らぎました」

 人気漫画の舞台化は、他のジャンルの演劇とも違う期待を背負っていることを実感している。

「現実ではありえないような動き、造形をしているキャラクターがモデルとしていることが初めての経験です。漫画もアニメもすり切れるほど研究しつつ、芝居がまるまるコピーになるのは違うと思います。オリジナルに準拠しながら、『自分らしい表現をどれだけ盛り込んでいけるか』のせめぎ合いだと思うので、楽しんでマキマ像を作っていきたいですね」

舞台ではミステリアスなキャラクター、マキマを演じる【写真:山口比佐夫】
舞台ではミステリアスなキャラクター、マキマを演じる【写真:山口比佐夫】

マキマは「登場しただけで空気がガラリと変わる存在感がある」

 マキマはデンジに要所要所で影響を与える、ミステリアスなキャラクターだ。

「一言声を発したり、登場しただけで空気がガラリと変わる存在感がある人ですね。デンジの前に他の女の子が現れても、ずっと深淵からデンジを見ているような、得体の知れない異質なところも魅力です。『すごい人が来た』というただものではないオーラを出さないといけないので、ちょっとしたセリフや所作も気を付けたいと思っています」

 今年で芸能生活25年。平野はもともと舞台俳優を目指し、児童劇団に所属していた。声優になり、音楽活動を積極的に行っていた10代は寝る間もなく、「何をやっていたか覚えていないほどです」と振り返る。だが、その後は最初の夢に立ち返って、心身ともに楽になれたという。

「私が芸能のお仕事を始めた原点が、『舞台に出たい』でした。その初心に戻ってリスタートを切ろうと決心して、(16年に)ニューヨークへの短期留学も経験しました。駆け足で役者を続けていたアウトプットだらけの日々から、『私にできる表現ってなんだろう』と、内省して考える余裕ができ、すごく楽になりました。仕事への向き合い方・人との接し方にしても、無理をしなくなったんですね」

 留学では語学力を鍛え、ボーカルレッスンで歌唱力も磨いた。帰国後も関わってきたエンタメとファンを大切にしてきた。

「いろいろなエンタメジャンルから『平野綾』を知ってくださる方が多くて。すると、例えばアニメでの私は知っているけど、ほかのジャンルでどんな活動をしているかは知らない方もいらっしゃると思います。そんな時に『こんな一面もあるんだ』と興味を持ってもらえるような発信をし続けることが大切だと思っています」

 アニメは「私のことを広く知っていただいたきっかけ」、舞台・演劇は「夢であり自分の中心」、音楽は「ずっと寄り添ってきた表現法」。平野はそれぞれの表現への愛着をこのように伝えてくれた。そして、今後の活動への思いを語った。

「限界を決めず、挑戦できる機会は探し続け、25年間歩んで来ました。芯の部分はずっと変わっていません。『どんな場所でも私だからできることがある』と思って、表現し続けたいですね」

 若くして訪れたスターダムと引き換えに、多忙を極めた時期も経験した。それでも平野はめげなかった。そして、作品・媒体の枠を越え、「演じる」を楽しみ、前進している。

□平野綾(ひらの・あや) 1987年10月8日、愛知県生まれ。子役として芸能活動を始め、テレビドラマやCMなどに出演。声優として『涼宮ハルヒの憂鬱』『DEATH NOTE』などに出演。2011年からは舞台を中心に活動し、今年は芸能生活25周年記念として『AYA HIRANO 2nd Billboard Live TOUR 2023』を大阪、横浜で開催。24年のミュージカル『この世界の片隅で』の出演も発表されている。血液型O。

(ヘアメイク=高良まどか、スタイリスト=大園蓮珠)

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