かつてのカリスマ編集長が中島VS Sareeeを大絶賛「あれ以上の試合はない」

業界に大きな波紋を投げかけた、「SEAdLINNNG(シードリング)~8周年大会!~」(25日、後楽園ホール)での王者・中島安里紗VS Sareeeによるタイトル戦。そこまでやるか、という双方死力を振り絞った一戦は、Sareeeに軍配が上がり新王者に輝いた。その光景は、令和女子プロレスの「革命」第一章が終幕した瞬間だった。今回はこの一戦を経て飛び出した、新たな動きと識者による見解を紹介する。

アントニオ猪木のダー! のポーズを取る、SEAdLINNNGシングル新王者のSareee
アントニオ猪木のダー! のポーズを取る、SEAdLINNNGシングル新王者のSareee

Sareeeの師匠・伊藤薫がトークイベントのゲストに中島を指名

 業界に大きな波紋を投げかけた、「SEAdLINNNG(シードリング)~8周年大会!~」(25日、後楽園ホール)での王者・中島安里紗VS Sareeeによるタイトル戦。そこまでやるか、という双方死力を振り絞った一戦は、Sareeeに軍配が上がり新王者に輝いた。その光景は、令和女子プロレスの「革命」第一章が終幕した瞬間だった。今回はこの一戦を経て飛び出した、新たな動きと識者による見解を紹介する。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「今日ホントに死闘でしたけども、こうやってこのベルトが私の腰に今あるということは、今の女子プロレス界の強さの象徴、それは私は間違いなく自分だと思います」

 これが勝利した“太陽神”Sareeeがインタビュースペースで最初に口にした言葉だった。

 しかも闘いたい相手について聞かれると、「スターダムの選手とか。メチャクチャ闘いたいですよ」とスターダムを名指しする注目の発言。

「私は逃げもしませんし、むしろ言ってきてくれないかなって感じですかね。すべてはタイミングだと思うので」と話していたが、これは本音に違いない。要は、方向性は定まっていないが、どうなっても対応する、という物言いだ。

 一方、敗れた“冷酷の悪魔”中島は、意味深なコメントを残した。

「これだけボコボコにやり合える相手が、同じ時代、同じリングにいて、闘える。そして今日にかぎっては、これだけボコボコにまかしてくれるっていうのは、ホントにプロレス人生、貴重というかありがたいことだと思うし、だからこそプロレスは面白いなと思います」

 聞いていると、悔しさよりも達成感や安堵感に近い雰囲気が伝わってきた。それだけベルトの重圧は相当のものだった、ということか。

 しかもベルト奪回についての見解を求めると、「私らしくないかもしれないですけど、ちょっとベルトは…、今は考えてないです」と、こちらも意味深な言葉。

 かと思うと、激闘から2日後に当たる27日夜には、Sareeeの師匠・伊藤薫が自身のSNSで、9月3日に東京・大森のW-BOX(伊藤道場)で行うトークイベントのゲストに中島を指名するサプライズが公になる。

 これはベルトを失い、意気消沈の中島に伊藤が手を差し伸べるのかと思いきや、「手を差し伸べてるとかはありませんが、あの戦いはお互いを認めているからこそでもあると思いますし、自分のスタイルを絶対曲げないってところが気になりますよね?」(伊藤のSNSより)とのこと。

 これに対し、当の中島は29日、自身のSNSで「ただでさえ人見知りなのに、相手は全女の凄い人!! 今から緊張しています…!! いつもと違う中島安里紗が見られるかもね…」と投稿。

 Sareee戦後、中島が公に発言するのはこの日が最初となるだけに、これ以上ない注目が集まるのは間違いない。

9月3日に急きょ開催が決まった、Sareeeの師匠・伊藤薫と中島安里紗のトークイベント
9月3日に急きょ開催が決まった、Sareeeの師匠・伊藤薫と中島安里紗のトークイベント

メジャー感と泥臭さ

 実は今回、興奮しながら「初めてSEAdLINNNGを見た」という人物に、第2代「週刊プロレス」カリスマ編集長のターザン山本!氏がいた。山本氏は17日、自身のSNSに「もはや日本のプロレス界を女子プロが完全に乗っ取ったよ。世代交代じゃない。政権交代だ。あちゃー!」と投稿している。

「SEAdLINNNG、俺は初めて名前を知ったんだよ! そしたらさ、所属選手は二人(中島と海樹リコ)しかいないんだよ。そんなのがよく、後楽園ホールで大会をやるなあ! ビックリしたのはこの興行がすごく現代的なんだよね。つまり小さなプロモーションなのに、いろんな選手を引っ張ってきて、そのキャラとか個性とか活かしてマッチメイクして組んでるわけじゃない、5試合。それがすごく現代的だね。だから大きな団体がドカーンとやるよりも、小さな団体が工夫してプロモーションしてマッチメイクしたほうが非常に面白くて楽しいということを知ったよ。目覚めたよ!」

 ここまで一気にまくしたてた山本氏だったが、実は山本氏は15日、自身のSNSで中島を「フランケン・シュタイン」「バケモノ」と表現していた。

 これに関して山本氏は「中島安里紗はさっきグッズ売り場でグッズを売ってたわけ。それを見たら普通の人じゃないか! どこがフランケン・シュタインでバケモノだよ! 女の子だよ!」と前言を撤回。

「ある写真を見た時は目つきが鋭くて。ものすごく暗闇から発している感じだったから、フランケン・シュタインに見えたんだけども、素の部分は普通の女の子であると気づいて安心したというか。逆にリングに上がったらどれだけ変わるのか、ということだよ! そういうことですよ、変身というか」(山本氏)と話した。

 では山本氏には中島VS Sareeeはどう映ったのか。

「Sareeeは、やっぱりメジャー感がある。それが染み付いている。それが目に見えない自信になっている。中島安里紗のほうは、ものすごく小さな団体に所属しているから、力もあるしパワーもあるけど、やや泥臭いなという対象が、どういう試合展開をするかといったら、非常にスイングしてたんだよ! だからお互いの能力、実力を認め合っているところがあるんですよね」

 そして、そこまで言い終わると山本氏は「俺、思ったことがあるんだよ」と言い、いきなり「女子プロレスのキーワードはタッグマッチだよ。タッグマッチでやると、その選手のいいところをガンガン見せる、お互いが。最高の試合になる。女子プロはタッグマッチだよ!」と独自の見解を示す。

中島安里紗への課題を突きつけたターザン山本!氏のSNS
中島安里紗への課題を突きつけたターザン山本!氏のSNS

マイナーパワー

 しかしそうなると、中島VS Sareeeの一騎打ちはどう説明がつくのか。そう思っていると山本氏は「そこで、アントニオ猪木みたいに、シングルマッチで完成形のものを商品として試せるか。女子プロレスにシングルマッチは可能なのかと。それを今日は、可能にして見せた!」と喜びを隠さない。

 また、中島VS Sareee戦のコンセプトについて「重要なのは打撃が入っていることなんだよ! 今の試合は打撃! 音楽でもそうだけど、打楽器が主役なんですよ! そういった意味でも素晴らしい! ワンダフル! 打撃を展開しながら、シングルマッチの名勝負を展開する意味でも、新しいプロレスを見せつけた。だから女子プロレスにとってシングルマッチは可能なのか不可能なのか、ということを突きつけたら、可能ですよ、ということを彼女たちは見せた」と大絶賛。

 さらに山本氏は女子プロレスにおけるタッグマッチとシングルマッチの役割を熱弁する。

「あれ以上のシングルマッチはないと思う。今の女子プロレスは、タッグマッチで自分の良さを出すわけよ。だけど、シングルマッチの幻想を、新しい試合のなかでいったい誰が作り上げていくのか。誰なんだ! ということが問われている。女子プロレスにとってシングルマッチというものはなんなんだ! そこですよ!」

 山本氏は、「それを小さなSEAdLINNNGがやっている、ということにもう俺はさ、打倒メジャーの『マイナーパワー』を示したということで。すごいよ、これ」と本来のプロレスが果たす特性についても言及した。

 ちなみに山本氏は、敗れた中島に対する課題について、「中島はSareee戦ではすごみを出していなかった。出せなかった。それはSareeeのメジャー感に付き合ったのか。そこが中島安里紗の課題だな」と指摘したが、28日に投稿したSNSには「中島安里紗には呪いが足りなかったな」と、“悪魔”と呼ばれる中島に、さらなる悪魔性を引き出すための助言もしている。

 いずれにせよ、天性の明るさと、生まれながらのアカレンジャーの素養を持ったSareeeは、『ドラゴンボール』(原作・鳥山明)の世界観で言えば、主人公の孫悟空。それに対し中島は完全にライバルのベジータになる。要はともに戦闘民族でありながら、基本的には敵対しているが、さらなる強大な敵が出現すればフュージョン(合体)して地球を守る。

 今後、Sareeeと中島がその関係になるのかは分からないが、前途洋々のSareeeに対し、敗れた中島がどんな復活路線を歩むのか。そしてスターダムを含めた、注目の動きは現実化していくのか。

 願わくは、令和女子プロレスの「革命」が、さらなる壮大な物語へと発展していくことに期待する。

次のページへ (2/2) 【動画】試合後にSareeeと中島安里紗が各々のコメントを話す実際の動画
1 2
あなたの“気になる”を教えてください