【RISE】「自分が下手なのは分かってる」山口裕人、オープンフィンガーで芽生えた“プライド”「お前より面白い試合してんねん」

立ち技格闘技イベント「ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round」(26日、東京・大田区総合体育館)で行われる初代RISEオープンフィンガーグローブ(OFG)マッチ65キロ王座決定戦。いまやMMAに挑戦するまで大きな存在となったYA-MANと戦う山口裕人(道化倶楽部)がファイトスタイルやこれまでのキャリアを振り返った。

公開練習時の山口裕人【写真:(C)RISE】
公開練習時の山口裕人【写真:(C)RISE】

OFGマッチ初代王座決定戦でYA-MANと対戦

 立ち技格闘技イベント「ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round」(26日、東京・大田区総合体育館)で行われる初代RISEオープンフィンガーグローブ(OFG)マッチ65キロ王座決定戦。いまやMMAに挑戦するまで大きな存在となったYA-MANと戦う山口裕人(道化倶楽部)がファイトスタイルやこれまでのキャリアを振り返った。(取材・文=島田将斗)

「負けるのが怖くない」――。RISEのOFGマッチを盛り上げてきた山口兄弟の兄・裕人ははっきりと言う。戦績は47戦28勝(18KO)19敗1分。その発言の真意を明かす。

「もちろん勝ちと負けやったら全然差があります。でも、めっちゃ面白い試合をして負けるのと、おもんない試合して負ける、これも差があるじゃないですか。盛り上がってくれたらいいんですよ。だから全力でいったら盛り上がる。それで負けてもしょうがないかな」

 負けても悔しくないわけではない。「クレイジー」と評される戦い方で打って、打たれて100%を出し切るからこそ「怖くない」の境地に達している。

「正直、負けたあとは悔しい。でも全力でやってたら悔しさも『やり切った』ってなる。他の人よりも悔しくないんじゃないですか。出しきってるんでね」

 なぜ相手の打撃を効かされても、また立ち上がってこれるのか。現役選手たちから、この質問をよくされるという。

「僕も分からないです(笑)。でも、自分はどんなに倒されても諦めることは絶対しない。どんだけやられても倒すって頭に入れてます」

 頭では分かっていても、脳と体の動きに“ラグ”があることももちろんある。「それでも、そんな関係なく行けますね」とあっさりしていた。

 打ち合い上等のファイトスタイルには「危険」の声も多くある。脳にダメージを与えすぎ、呂律が回らない「ドランカー」になってしまう選手もいる。キャリア初期からこの戦い方を貫いてきた裕人はそんな心配を一蹴した。

「周りからもずっと言われたんですよ。『(キャリア)長くできない』『下手くそやな』。そんなんめちゃくちゃ言われましたけど、すっと自分を信じてここまできてます。みんな心配してますけど、僕、50戦目ですよ次。それが答えっす」

 さらにこう続けた。

「僕も自分が下手くそなのは分かってる。負けも多い。でも結局負けても、その戦った相手よりも上のレベルの選手と次の試合では戦ってる。だから『俺はお前より面白い試合をしてんねん』って思います」

YA-MANに向けたリスペクト「どこまで行くねん」

 MMAで使用される指の開いた薄いグローブ、それがOFGだ。YA-MANは「山口兄弟のために」導入されたと語っていたが、いまや立場は逆転。活躍の場を広げ、YA-MANの代名詞のようになっている。裕人がそんな相手の印象について明かす。

「最初はなんとも思ってなかったですね。戦うとも思ってなかった。MMAにも行ったし、トップとRISEで戦ってたんで。結果を出してどんどん上に行くので『どこまで行くねん』って」

 OFGのベルトができると聞いて「YA-MANとあるんちゃうか」と意識し始めた。前戦のタリソン“Crazy Cyclone”フェレイラ戦はタイトル戦へ向けての前哨戦的立ち位置だった。

「前からタイトル戦みたいな話はあったんですよ。前哨戦みたいな形でタリソン(フェレイラ)戦が決まった。そのときに『えぐ! 強すぎるやろ』って思いましたね(笑)」

 そんな相手にダウン6回の激闘、シーソーゲーム。2R・2分32秒でKO勝ちを収めた。しかし、これで「タイトル戦」の思いは自然となかった。

「ああいう試合を勝ち切ったのがうれしかった。これでタイトル戦っていう喜びはなかったですね。ベルト欲しいって気持ちはないのでね」

 こう語るが、メインで戦うことに対しては胸を張る。「こういうのが良いですよね」としみじみ。

「誰もこんなやついない。YA-MANはしっかり結果も残してる。僕はたまに残してるけど、そこまで残してない。でも、そこ(タイトル戦)まで行ってる。おもろくないですか?」

 海人、原口健飛、志朗。海外も驚くテクニックでのし上がったファイターはたくさんいる。裕人は同じ道を選ばない。

「上に行きたいけど、みんなとは違うやり方で上に行こうと思ってます。強さだけじゃなく、違う方法で。実際ランキングなんてなんも入ってないし。でも、次メインですよ。強さだけでここまで来たわけじゃないです」

“山口兄弟”とは何なのか。ファンはこの言葉を聞けば、熱いファイトスタイルの映像が頭の中に映し出される。自身があえて言葉にするのは難しい。

「強さ……じゃないなぁ。なんだろう……」と言葉が詰まる。数分考えこむと「漢じゃないですかね」とにかっと笑った。

「(作戦とか)何も考えてないです。もうやることをやるだけ。弟は分からないけど(笑)。俺はもう余計なこと何も考えんと、やるだけ。何をやるときも全部そうです」

 こうしぼり出すと「こんなん(考えるのが)好きなんですけどね、侑馬はね(笑)」と照れくさそうにしていた。

 次の瞬間、ぐっと表情が引き締まり「まぁ、あいついなかったらここまで来れてないし、練習でも僕のことを全部分かってる感じ。これから2人で上がっていかなあかんし、あいつも俺おらんと何もできないし、2人でこれからも」とうなずいた。

「ケガせんのええな、センスやな」。最近、周囲の選手から言われるという。OFGの面白さを日本に伝えたクレイジーピエロは、危ない殴り合いで未来を切りひらいていく。

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