【週末は女子プロレス♯116】英国から参戦女子レスラーは大の日本びいき 夢だった3度目の来日「有意義な時間過ごしているわ」

長与千種が立ち上げたMarvelous(マーベラス)に参戦中のナイトシェイド。過去2度の来日はいずれも東京女子プロレスで、いずれも秋だった。イギリス人の彼女には、日本の秋はTシャツ一枚で過ごせる気候である。が、今回はこれまでをはるかに超える6週間の滞在で、しかも猛暑真っただ中。さすがに35度を超えるような暑さの連続は身体にこたえるが、彼女は日本のプロレスを日々吸収、この機会を存分にエンジョイしているという。

自身のこれまでと日本での生活について語ったナイトシェイド【写真:新井宏】
自身のこれまでと日本での生活について語ったナイトシェイド【写真:新井宏】

Marvelous(マーベラス)に参戦中のナイトシェイドの素顔

 長与千種が立ち上げたMarvelous(マーベラス)に参戦中のナイトシェイド。過去2度の来日はいずれも東京女子プロレスで、いずれも秋だった。イギリス人の彼女には、日本の秋はTシャツ一枚で過ごせる気候である。が、今回はこれまでをはるかに超える6週間の滞在で、しかも猛暑真っただ中。さすがに35度を超えるような暑さの連続は身体にこたえるが、彼女は日本のプロレスを日々吸収、この機会を存分にエンジョイしているという。

芸能界屈指の肉体派が絶賛する驚きのトレーニングアイテムとは?

 ナイトシェイドは1996年、イングランド中部のバッキンガムシャー州メイズモートン出身。スポーツが得意な彼女は2歳年上の姉と仲がよく、何をするにも一緒だった。プロレスを知ったのも姉と一緒。偶然テレビで見たWWEに、姉妹で心を奪われた。

「13歳のときに初めてプロレス、WWEを知って、世の中にはなんてすごいものがあるんだとビックリしたの。そのときのメインがトリプルH(イギリスではHを「ヘイチ」と発音するのが主流)対ランディ・オートン。試合はもちろん、トリプル・ヘイチの入場にすっかり魅了されてしまったわ。それからというもの毎回欠かさず見るようになり、ネットでも追いかけた。もちろん、姉と一緒にね。すぐに女子選手の存在も知るようになり、ベラ・ツインズ、ミシェル・マクール、ミッキー・ジェームズらが特に印象に残ってる。女性にもできるんだと知って、大人になったら私もこれをやりたいと思ったの」

 彼女だけではなく、姉も同じ考えだった。姉の提案からレスリングスクールを探し出し、通うようになった。父が車で片道1時間かけて送り迎えしてくれた。当時から姉は、ベラ・ツインズのような姉妹タッグをイメージしていたという。このように当初はむしろ姉の方が積極的で、練習初日、緊張していた妹はなにもできず、ただただ見ているだけだった。

「帰りの車中で姉に言われたわ。『アナタがやらないのなら、私一人で練習するからね』って(笑)」

 しかし、その姉が練習中にケガをしてしまう。しかも複数回。姉はプロレスラーになることを断念。妹に夢が託されたのだ。とはいえ、当時の彼女はまだ高校生。学業が中心で、プロレスは放課後の習い事の感覚でもあった。

 そんななか、彼女は初めて人前でリングに立った。あとから考えればそれがデビュー戦だったのだが、当時の彼女には試合という感覚がほとんどなかったらしい。

「いま振り返るととてももったいない気がするわ。デビュー戦と銘打ったわけでもなく、小さな団体の、確か、内輪しか来ないような小さな大会だったわね。いつどこだったか、おぼえていないの」

 高校に通いながら練習をし、ときおりリングで試合もした。本格的にプロレスへと移行したのは高校卒業後。車の免許を取り、試合会場に自分で行けるようになってからプロレスに集中するようになったという。

 そんな彼女の武器は、なんといっても大きな体である。しかし当初は大きなサイズにコンプレックスを抱いていた。あこがれた時代のWWEはディーバ路線。実際、ダイエットを試みたりしたが、やがて自分には合わないと気が付いた。

「いまのままの方がかえってヘルシーだし、ほかのみんなと違うことこそ個性、アドバンテージと考えられるようになったの。ハイフライヤーになれるわけもないし、大きいならそれ以上にパワーをつける方が手っ取り早い。もともと反逆的なロックミュージックが好きだったから、ヒールレスラー、すなわちモンスターとしてやったほうが目立てると思ったの」

 ナイトシェイドというリングネームは、デビュー当初からずっと使い続けている。基本的にはずっとヒールの立ち位置だ。

「ナイトシェイドとは毒性の植物。花はかわいらしいけど、きれいな花につられて実を食べるととっても危険。そんなレスラーになりたいなって。姉と一緒に考えたのよ(笑)」

8・7後楽園、彩羽匠&永島千佳世組と対戦したナイトシェイド【写真:Marvelous提供】
8・7後楽園、彩羽匠&永島千佳世組と対戦したナイトシェイド【写真:Marvelous提供】

日本食は「寿司をはじめ、ヌードル系が大好き」

 実際、素顔のナイトシェイドはとってもラブリーだ。「メイクアップも好きだし、服装もヘアースタイルもガーリーなものを意識しているわ」。普段はかわいらしく、ひとたびリングに上がればモンスター、といえば、同じイギリス人レスラーで“メガトンバービー”のニックネームを持つバイパーが思い出される。スコットランドのインディシーンからスタートし、日本ではスターダムに参戦、現在WWEでパイパー・ニーブン、ドゥードロップのリングネームで活躍するバイパーは、リング内外でナイトシェイドと共通する部分が多いのだ。

「彼女と比較されるのはイヤかって? とんでもない。むしろ褒め言葉に受け取ってるし、とっても光栄。彼女はインディシーンから飛び出して、ジャパン、そしてアメリカへと成功の階段を上った人。私も彼女のようになりたいし、私とバイパーを重ねて見てもらっても構わない。そのうえで、自分の個性を発揮していけたらなと思っているわ」

 ナイトシェイドとバイパーは一度だけ対戦したことがある。それは、18年8月18日、PCW女子王座をかけたタイトルマッチだった。王者はナイトシェイドで、前日に奪取したばかりのベルトを初防衛。すでに日本での経験があったバイパーからの勝利が、大きな自信につながったことは間違いない。

 このときすでに、ナイトシェイドは日本での試合を目標のひとつにおいていた。WWEが入口になった彼女が日本の女子プロレスを知ったのは、プロレスラーになってから。バックステージでレスラー仲間から日本の話を聞き、興味を抱いた。日本の女子プロの良さを来日経験者から直接聞いた。19年2月15日には、PCW女子王座をかけた3WAYマッチで優宇と対戦。初めて対戦した日本人レスラーが、彼女と同タイプの大型レスラー、優宇だったのだ。

 そして、東京女子からのオファーにより来日の夢がかなった。ヨーロッパ以外で試合をするのは初めての経験だ。初来日の19年11月には伊藤麻希のインターナショナル・プリンセス王座、22年10月には“令和のAA砲”赤井沙希&荒井優希組のプリンセス・タッグ王座に挑戦した。タッグタイトルはイギリスEVEで活動するユニット、アップライジングを輸入してのチャレンジだった(パートナーはリア・オライリー)。

 2度目の来日を終え、ナイトシェイドはスペインでシングルのベルトを奪取する。10月22日、RCWのバルセロナにおける3WAYマッチで空位のRCW女子王座を獲得。日本から参戦の雪妃真矢も含まれた試合だった。

 RCW女子王座は志田光(第2代王者)をはじめリア・オーエンズ(初代&第3代)、サンタナ・ギャレット(第4代)、サミー・ジェーン(第5代)といった来日経験者ばかりが巻いているベルトでもある。そのベルトの第6代王者となったナイトシェイドが初防衛戦で迎え撃ったのがマーベラスのエース、彩羽匠だった。今年2月18日、バルセロナでの試合が結果的にナイトシェイドのマーベラス参戦へとつながることになったのだ。しかも、RCW女子王座をキープしたままでの来日である。

「EVEのリングでマーベラスと出会い、長与千種さんについてチェックしたの。彼女がジャパンのスーパーレジェンドであることをドキュメンタリーで知り、そのリングに上がれることになってとてもエキサイトしたわ」

 7・27新木場でマーベラス初登場。ウナギ・サヤカとのタッグでMaria&川畑梨瑚組を破り、8・7後楽園では優宇との再会で大型タッグを結成、永島千佳世&彩羽組を撃破してみせた。いずれもフィニッシュはナイトシェイドのグッドナイト(ネックハンギングボム)。8・18新木場でも6人タッグマッチで勝利しており、マーベラスマットでは負け知らずだ。残るは、9・3小山大会への参戦となる。

「ジャパンではドージョーでハードなトレーニング。これが日課にもなり、すでに住んでいる感覚があるわ。ジャパニーズスタイルを学び、理解し、吸収する。とても有意義な時間を過ごしているわね。イギリスとの時差が8時間もあるのはちょっとつらいけど、食事がおいしい! 寿司をはじめ、ヌードル系が大好き。うどん、ラーメン、焼きそば。ヌードル系は毎日なにかしら食べてるわ(笑)」

 来日のたびに多くを学んで帰るというナイトシェイド。今回は6週間とあって、日本のプロレスについてさらに多くの知識を得ると同時に経験を積むことができた。今回のマーベラス参戦を機に、より多くの来日機会を得たいというナイトシェイド。プロレスラーになる夢を挫折せざるを得なかった姉の思いも背負いつつ、これからも成功への階段を上り続けるつもりだ。スタイルや順応性からも、世界のスーパースターになれるポテンシャルを持っていることは明らかだ。

次のページへ (2/2) 【写真】プライベートで日本を満喫するナイトシェイド
1 2
あなたの“気になる”を教えてください