【RISE】「天心ってすごいな」 YA-MAN、王座決定戦前に感じた重圧「興行的にも自分が勝たないといけない」

試合前のトラッシュトークにバチバチのフェイスオフ。今にも相手に飛びかかってしまいそうな鋭い眼光で観客を一気に喧嘩の世界へと引き込むYA-MAN(TARGET SHIBUYA)。立ち技格闘技イベント「ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round」(26日、東京・大田区総合体育館)で山口裕人と初代RISEオープンフィンガーグローブ(OFG)マッチ65キロ王座決定戦を行う。弱みをほとんど見せないYA-MANが不安や気がかりを吐露した。

このタイミングで「天心」の存在を改めて大きく感じたYA-MAN【写真:ENCOUNT編集部】
このタイミングで「天心」の存在を改めて大きく感じたYA-MAN【写真:ENCOUNT編集部】

相手から向けられたリスペクトがYA-MANを考えさせた

 試合前のトラッシュトークにバチバチのフェイスオフ。今にも相手に飛びかかってしまいそうな鋭い眼光で観客を一気に喧嘩の世界へと引き込むYA-MAN(TARGET SHIBUYA)。立ち技格闘技イベント「ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round」(26日、東京・大田区総合体育館)で山口裕人と初代RISEオープンフィンガーグローブ(OFG)マッチ65キロ王座決定戦を行う。弱みをほとんど見せないYA-MANが不安や気がかりを吐露した。(取材・文=島田将斗)

 今までの喧嘩とは違う。神童が去って、約1年。王座決定戦でメインを任され改めて感じた「天心ってすごいな」。自身の代名詞とも言えるOFGでの王座決定戦がYA-MANのキャリア分岐点だ。

 この一戦に煽りはいらない。因縁ではなく、お互いにリスペクトがあるからだ。YA-MANは「RISEを盛り上げてきた」と山口兄弟を称え、裕人も「面白い試合をして結果も残している」とYA-MANを絶賛した。

 こんなにもリスペクトを向けられたのは初めてだ。

「いままでは自分が挑んでいく立場だった。山口侑馬戦から始まり、格上続きで、『なんでお前とやらなきゃいけないんだよ』と言われるような試合ばかりでした。キックの試合でここまでリスペクトしてもらえることはなかったですよね」

 これまでと違う状況に「いままでとやることは変わらない」と一度は言ったものの、何か引っかかっているものがあった。

「リングのなかに立ったらどうなるんだろう……という気持ちはあるんですよね。いままでの相手とは因縁があった。自分の力の根源ってどちらかと言うと怒り・憎しみ。それを試合当日にリングで相手にぶつけてきました。今回はそれがないんですよ。リングに入れば、相手を本気で殺そうと思っていつもは試合をしています。

 そういう気持ちをぶつけて、いままでのような試合ができた。今回はどうなるんだろう……。という不安はありますね。ここまでリスペクトされて、因縁もないし。タイトルだけの試合になるので、喧嘩じゃなくて格闘技になるのかなって。そこがいつもと違う。試合前どういう気持ちを作ればいいんだろう」

 とはいえ、自分の中で力の根源は見つけている。「試合の日になれば分かると思います」とあえてそれを明言することはなかった。

「怒り・憎しみ」を前面に出したYA-MANの試合直前の様子【写真:山口比佐夫】
「怒り・憎しみ」を前面に出したYA-MANの試合直前の様子【写真:山口比佐夫】

決戦を前に自問自答「守るものが増えて、自分は強くなるのか」

「守るものができたとき、人は強くなるのか」――。今月9日、YA-MANは意味深な文章をインスタグラムストーリーズに投稿した。普段の試合前とは少し様子が違う。その真意についてこう明かす。

「この2年間で自分が積み上げてきたものがある。今回の試合、自分が得るものはベルトぐらいしかないと思うんですよ。でも、負けたら今まで築いてきたものが全部なくなってしまう。ちょっと守るものができてしまったのかなと」

 今回の王座決定戦はもちろんメインイベント。人気、知名度も上がり続けている中プレッシャーを感じ始めていた。

「世間的に興行的にも自分が勝たないといけないなと感じています。保守的な気持ちになったときに今まで通りの試合ができるのかというのが少し……。いままでは得るものが大きかったので、なりふり構わず攻められましたけど、守るものが増えて、自分は強くなるのか。試されるのが次の試合かなと」

 キックボクシング史上最大の興行だった「THE MATCH 2022」。那須川天心―武尊の世紀の一戦から1年以上が経過した。キック界に天心がいなくなった今、その存在が大きかったと再認識する。

「今回の試合を勝ったら怖いものはないです。相手との試合よりも自分との試合ですね。そういった意味では(那須川)天心ってすごいなと改めて思います。あれだけ背負ってプレッシャーに打ち勝って、あの年で。それで勝ち続けて。天心と比べたら背負っているものは少ないですけど、少しだけ気持ちが分かるようになってきた気がします。天心なんかもっと(重圧を)感じていたんだろうなって」

 そんな神童は今年4月に晴れてプロボクシングデビュー。与那覇勇気に判定勝ちを収めた。新たな道を進んでいる天心の気持ちをこう推察する。

「自由になったんじゃないですかね天心。いままではRISE=天心だった。天心がこけたらRISEもこけるみたいな。キック時代、相手もいなくなって、どこを目指せばいいんだろうとなっていたと思うんですよ。ボクシングに転向して挑戦者側になって、楽しいんじゃないですかね」

「自分もいま、格闘技が楽しくて」とYA-MAN。その理由を「でもそれってMMAがあるからだと思うんですよ。挑戦者側でいられるから。キックだけだったら、ここまで楽しかったのかな? とは考えますよね。MMAを始めて、自分がやられる側になって、チャレンジャーでいられる。それで楽しいんですよね。その楽しさがキックにも向けられています」と説明した。

 格闘技を続ける理由と語っていた児童養護施設の子どもやシングルマザーの大会への招待。子どもたちに直接言われた「僕もYA-MANみたいになろうと思います」の声がきっかけだった。

「有名」になったことへの複雑な思いも活動へ拍車をかけた。

「常に周りの目があって、自由に生活できないんですよね。電車も乗りたくないですし、街中でも周りの目がある。ご飯も気軽に食べられない。合コンもできないっすよ(笑)。そういう部分になんで気を使わなくちゃいけないんだろうって。そういうところで、自分のために頑張るのは限界があるのかなって。

 だから自分は人の力を借りないと頑張れない。はたから見たら良い活動をしていると思われているかもしれないけど、自分が頑張るためにやっているだけ」

 子どもたちがいまのモチベーションだと熱くなる。「その子たちのためにもっと知名度をあげたい。その子たちが夢を見るために自分がもっと稼がないといけない」と誓った。

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