60歳の名バイプレイヤー・渡辺いっけい、過酷減量で襲われた病魔「電気がビリビリ走る痛み」

テレビ、ドラマ、舞台で幅広く活躍するベテラン俳優の渡辺いっけい(60)。作品に欠かせない名バイプレーヤーは、映画『オジさん、劇団始めました。』(8月18日より東京・池袋シネマ・ロサほか公開、監督・山本浩貴)で、家族との絆を取り戻すため、突如、劇団員になる主人公のサラリーマンを演じた。撮影中、役者生命を脅かすアクシデントもあったと明かす。

インタビューに応じた渡辺いっけい【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた渡辺いっけい【写真:ENCOUNT編集部】

役作りで「7キロ減」…「免疫力が落ちていた」

 テレビ、ドラマ、舞台で幅広く活躍するベテラン俳優の渡辺いっけい(60)。作品に欠かせない名バイプレーヤーは、映画『オジさん、劇団始めました。』(8月18日より東京・池袋シネマ・ロサほか公開、監督・山本浩貴)で、家族との絆を取り戻すため、突如、劇団員になる主人公のサラリーマンを演じた。撮影中、役者生命を脅かすアクシデントもあったと明かす。(取材・文=平辻哲也)

 ドラマや映画でコメディーからシリアスまでさまざまな役柄を、独自の風貌とその存在感で魅了してきた名バイプレーヤー渡辺いっけい。ここ数年は映画の主演が相次いでいる。村の厄介者で、その息子の人生にも悪影響を与える父親を演じたシリアスドラマ『いつくしみふかき』(18年)では映画初主演、その後、地元・愛知県豊川市を舞台にした『マリッジカウンセラー』(23年)では結婚相談員役を演じ、3作目の主演作が本作だ。

「今思えば、『いつくしみふかき』のときは主演を意識していたと思います。今回は本当に意識しないで役に入っていけた気がします。見てもらえれば、分かるのだけども、僕を中心に回る話ではあるけれども、劇団の人々の話なので、自分がグイグイ引っ張っていかなくてもいい。だから、楽な感じで入ることができました」と振り返る。

『オジさん、劇団始めました。』は、定年間近のサラリーマンが、かっこよかった青春、家族との絆を取り戻すため、一念発起して借金だらけの劇団に入団し、仲間と奮闘するコメディー。もともと、劇団プープージュースが2020年10月に上演した舞台が原作で、劇団の主宰、山本浩貴が脚本・監督を手掛けた。

 今ではドラマ、映画での活躍が目立つ渡辺も、演劇出身。大阪芸術大学時代に、当時、学生劇団だった「劇団☆新感線」に参加し、その後は上京し、唐十郎が主宰する「状況劇場」に籍を置いていた。劇団を身をもって知っていただけに、逆に難しさもあったという。

「すごく分かる部分は多いだけに、客観的に見られない気がしたんですね。でも、監督はこのお芝居を書いた人だから、ちゃんと演出してくれるだろうとフラットな気持ちで入ったんですが、ふと『演劇』や『舞台』って言葉は、一般の人から見たら、異質なものなんだと気づいたんです。すると、急に台本のことが分かった気がしたんです。それで、芝居のやり方を変えてみました。もちろん、役には準備をしていくんだけども、現場で感じたことを加味していくのが面白く、こういうことがあるからお芝居を続けているんだな、と再認識しました」

 この作品の魅力は、脇を固める劇団員役の若い俳優たちだと強調する。

「みなさんがすごく魅力的なんですよ。(リーダー格の)やべきょうすけさんはムードメーカーとして、常に現場を盛り上げてくれましたし、映像作品の経験の少ない劇団プープージュースの若手たちもいいんです。劇団の話なんだけども、撮影しながら、同じような役回りでダメ出しをしていて、二重の意味でも笑えた。非常に楽しい雰囲気が感じられ、役にハマっている一人一人が驚くほどの演技をしていました」

 撮影中には思わぬアクシデントもあった。この役はシャープな体型の方がふさわしいだろうと、食事制限。撮影中もあまり食事を口にしなかったところ、顔の片側に帯状疱疹を発症してしまったのだ。帯状疱疹は水痘を発症した人に多い病気で、潜伏していたウイルスが再活性することによって、疼痛を伴う赤い発疹や水疱が胴体や顔の一部に現れるのが特徴と言われている。

「50歳を過ぎると、発症しやすいそうですが、自分がなるまで聞いたことがなかったんです。でも、周りに聞くと、本当に多いですね。死ぬほど痛かったという人もいますけども、僕の場合、電気がビリビリ走る程度の痛みでした。ただ、見た目をひどくやられてしまって……。今より7キロくらい落としていたので、免疫力が落ちていたんでしょうね」

 撮影中はメイクでカバーすることでことなきを得て、クランクアップ。その後、帯状疱疹は2週間程度で完治できた。

 今は酒タバコもやめ、歩くことを心がけている。目標は1日1万3000歩。「僕は自動車免許を持っていないので、普段は電車移動なんです。地下鉄をよく使うんですが、エスカレーターは使わずに階段を歩きます。そう決めたら、意外と歩数を稼げるんです。ルーティンにしてしまえば、別に苦ではなくなるんですね」。還暦を過ぎた今、健康に一層気をつけ、俳優業に邁進する。

□渡辺いっけい(わたなべ・いっけい)1962年10月27日、愛知県出身。1992年NHK連続テレビ小説『ひらり』にて人気を博して以降、数々の作品に出演し、名バイプレーヤーとして活躍。若い世代にも『ガリレオ』シリーズでの福山雅治演じる湯川学の助手役として馴染みが深い。映画では2018年『いつくしみふかき』にて初主演。人気アニメシリーズ『おしりたんてい』では声優も務めるなど、活動の幅は今も広がり続けている。大阪芸術大学在学中の劇団☆新感線への参加や、卒業後に唐十郎を主宰とする状況劇場へ入団など、劇団とも関わりが深い。

次のページへ (2/2) 【動画】映画『オジさん、劇団始めました。』予告編
1 2
あなたの“気になる”を教えてください