【RTU】神田コウヤが積み上げた「12勝4敗」 サバイバルT準決勝は「戦績が生きる戦いに」
格闘家の神田コウヤ(パラエストラ柏)が格闘技イベント「ROAD TO UFCシーズン2」(27日、シンガポール・インドア・スタジアム)の準決勝に登場。中国のリー・カイウェンと対戦する。1回戦の激闘から3か月、どんな思いで過ごしてきたのか、試合2週間前に話を聞いた。
オフの日はあえて飲酒「非日常を自分の中で取り入れるんです」
格闘家の神田コウヤ(パラエストラ柏)が格闘技イベント「ROAD TO UFCシーズン2」(27日、シンガポール・インドア・スタジアム)の準決勝に登場。中国のリー・カイウェンと対戦する。1回戦の激闘から3か月、どんな思いで過ごしてきたのか、試合2週間前に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
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今年5月27日に上海で開催されたフェザー級トーナメント1回戦。イーブーゲラ(中国)と15分間の激闘を繰り広げ、3-0の判定勝ち。被弾をする場面もあったが、敵地での勝利。神田の目には涙が浮かんでいた。
あれから3か月間、どう過ごしてきたのか。
「最初の2週間くらいは休んで、あとは普段通りの練習なんですよね。自分って試合が決まってようがなかろうが、曜日ごとの動きって変わらないんです。教えているクラスがあって、そのあとに練習。という日々を淡々とこなしています。練習量も年間を通して変わらずで、むしろ試合前になると少なくなるくらいなんです」
クラスに通う生徒への指導と自身の練習の繰り返し。この生活を続けて約6年になる。クラスの時間は夜から始まることが多い。そのため、練習を行うのは夜遅い時間も多い。
「夜型人間にはなっています。それでもエネルギーが切れないように、神経が切れないように意識していますね。カフェインを摂るタイミングも早すぎてしまうと夜までもたないので、そこも気にしながらコーヒーを飲んだりしています」
生活をルーティン化することでメンタルの浮き沈みの幅も小さくしているという。心も平穏に保つのに重要なのが休息だ。神田の場合は日曜日がオフの日。意外な一面を明かす。
「前までは一切飲んでいなかったのですが、お酒を飲みます。飲んだ方が普段考えない感情になったりするんです。アイデアが思い浮かんだりもするので、あえて断つことはしていません」
外出時にはワインや日本酒を好んで飲む。起きている間に「非日常」を体験するツールもであるようだ。
「試合って非日常じゃないですか。あえてその感覚を自分の中で取り入れるんです。毎日、同じ時間に同じ場所に行っていると新しい考えが生まれない。シラフだと思わないこともあるので、何かを思いつくためのきっかけ作りにもなっていますね」
ファイターだけでなくキッズ指導の先生でもある“神田コウヤ”
次戦で戦うのは中国のカイウェン。ONE チャンピオンシップでも活躍していた選手で1回戦は1R・KO勝利。大きな印象を残した。神田も「危険な選手」とこれまでも発言していた。
「剛腕だと思うので、一発で試合を終わらせる殺傷能力を兼ね備えていますよね。あとは彼自身の自信ですね。自分の世界を持っている選手なので、その勢いが怖いなと思います」
これまで16戦してきている神田だが、カイウェンのようなタイプと戦うのは初めて。相性については「一番悪いかもしれない」と認める。しかしながらファイターである以上、自分の気持ちの作り方は分かっていた。
「どの選手とやる場合も技術などにとらわれてはいけないと思う。なにか動くときにためらいがあってはいけない。そういうことを自分自身に言い聞かせています。作戦にもとらわれてはいけないと思っているので、自分が良いと判断した時に最善の動きをするのが大事ですからね」
今回は、これまでの「12勝4敗が生きる戦い」になると考えている。
「2戦目で8秒で失神KO負けをしました。一瞬で終わる怖さを身に染みて分かっているので、絶対にパンチは避けないといけないなと、直感のなかに埋め込まれています。あとは 青井人戦で効かされたあとにリカバリーをして逆転KO勝ちしたこと。それらが生きるなと思います」
初の海外戦となったトーナメント1回戦もキャリアのなかで大きな経験となった。選手が一番気になるのは減量面。神田は初海外ながら計量ミスすることなく最高の状態で試合を迎えていた。自分のなかでは「ベストバウト」。試合の苦しい展開で考えていることをこう明かす。
「負けているなと考えたらテンポを上げていかないといけないし、勝っているなと思っているときは少しゆっくりでいいかなというときもあります。ペース配分、気を付けていますね。試合のなかの動きは子どものころから養われているので、自分の本番の直感は信じていますね」
今回のRTU2では、参戦する中国選手の豪華な練習環境も注目された。対する神田は生活のベースに練習だけでなく、キッズの指導もある。その環境は「すごくいい方向に働いている」という。
「格闘技で共通点を持てるので子どもたちと深くつながれますよね。技とかを教えると、自分が想像以上の動きをする子もいます。なので、『こっちの方がいいな』と思うときもあります」
さらにこう続ける。
「自分が実戦でできることしか教えてないですし、それは説得力でもあると思うんですね。現役を続けながら指導もするのは競技を続けているうえでもアドバンテージになると思います」
自分の戦いを練習の指導を通して、格闘技の次世代を担う子どもたちに何を教えたいのか。表情が引き締まる。
「勝負の場に立つのはまずは価値があること。その上で『勝つ』っていうのはすごく崇高なこと。さらに勝利に向かって日々、同じ空間と時間で学ぶのは良いことと分かってほしいです。義務教育ではないですし、学校じゃ教えられないことを教えていると自負しています」
国内フェザー級戦線は格闘技イベント「RIZIN」を中心に盛り上がっている。クレベル・コイケの決定率の高い極めに鈴木千裕の大番狂わせ、朝倉未来の1R・一本負け。そんななか神田は別のいばらの道を進んでいる。勝ち続ければ世界最高峰の舞台「UFC」。成長を続ける27歳の決戦はもうすぐだ。