ティーンのカリスマが役者の道へ 玉城ティナの頑固だった過去、徐々に変化していった生き方

カリスマモデルとして若者からの支持を集めた玉城ティナ(25)は現在、俳優として活躍の場を広げている。8月25日には、インフルエンサー・山根ミト役で主演する映画『#ミトヤマネ』(監督:宮崎大祐)が公開される。ネット社会の恐ろしさを描いた本作。これまで流行を発信する立場でもあった玉城との共通点も多いが、どのような思いで撮影に臨んだのだろうか。

映画『#ミトヤマネ』について語った玉城ティナ【写真:冨田味我】
映画『#ミトヤマネ』について語った玉城ティナ【写真:冨田味我】

大切にしている“自分にうそをつかない生き方”

 カリスマモデルとして若者からの支持を集めた玉城ティナ(25)は現在、俳優として活躍の場を広げている。8月25日には、インフルエンサー・山根ミト役で主演する映画『#ミトヤマネ』(監督:宮崎大祐)が公開される。ネット社会の恐ろしさを描いた本作。これまで流行を発信する立場でもあった玉城との共通点も多いが、どのような思いで撮影に臨んだのだろうか。(取材・文=中村彰洋)

 同作は、ネット社会ならではの職業・インフルエンサーを生業にする山根ミトを主人公に描いた、今までにない新しい“ジャパニーズ・ノワール”作品。現代のネット社会に一石を投じるかのようなストーリーとなっている。玉城が演じたのは、クールなビジュアルで若者からの支持を受けるミト。無機質で人間味のないキャラクターとなっている。

「ビジュアルが先行しがちなキャラだとは思うのですが、彼女の真面目で普通な部分をベースに考えたいと思いました。理解できないと拒絶するのではなく、普遍的なところを理解して演じるように心掛けました。もっと派手にしたり、より卑屈なキャラクターにすることもできたのですが、ミトという存在がフラットだからこそ、この物語はより多くの人に伝わるんじゃないかなと思いました。どしっと構えることを意識しながらも、ふとしたときにすごく心細そうに見えるように使い分けは気を付けました」

 モデルとインフルエンサー。何かを発信するという点では共通する職業だ。「彼女を演じることに何の違和感もなかった」と語るように、役にはスッと入り込むことができたようだ。

「ミトは客観的に自分のことを見れていると思うので、そうであったらいいなと私も思っていますし、自分のことを結構、人事として捉える節があるんです。仕事してる自分と現実の自分の間にワンクッション置くときがあるので、そういうところは、ちょっと似てるかなとは思います。もちろん、彼女のように無慈悲ではないというか、もう少し心が通ってはいますけど(笑)」

 宮崎監督からは「玉城さんはそのままでピッタリ」との声をもらった。「監督に肯定されることが、俳優にとってうれしいことなんだなって改めて感じました。今回の現場は、監督とも共通言語がとても多く、言葉を交わさずとも信頼し合えていると感じることがありました。そういう瞬間が好きで、俳優という仕事をしてるんだろうなって思いました」とやりがいも再確認できたようだ。

 講談社主催の「ミスiD2013」でグランプリを獲得し、14歳で華々しくデビュー。ファッション誌『ViVi』(同社)では2012年から18年まで専属モデルとして活躍した。常に流行の先端を走り、発信する立場だったが、他者からの見え方を常に意識していた。

「周りの人に自分の見え方を聞くことが多かったです。昔は、他者が良いと思うものとのズレを許せなかったりもしました。『私が良いって思ってるものが良いじゃん!』と頑固でした。SNSでエゴサーチもしますね。『こういう風に見られてるんだ』って。それを1から10まで記憶してアウトプットするわけではないですけど、一つの情報として取り入れておくっていう感覚です。ネガティブなことを書かれていても、特に傷つかないですね。慣れてきちゃいました(笑)。でも最近は、柔軟性が出てきたかなとは思います。この人が良いって言うんだったら良いんだろうなって。自分でギチギチにブランディングしないようにはしています」

「演技が大好きなんです」と今後の俳優業にも意欲を見せる【写真:冨田味我】
「演技が大好きなんです」と今後の俳優業にも意欲を見せる【写真:冨田味我】

変化していった意識「人は意地悪じゃない」

 意識が変化したのは「人は意地悪じゃない」と思えたことがきっかけだったと笑う。

「わざわざ私をいじめようとして、そういう意見を言ってるわけではないということに気づけました。意外とみんな優しいんだなって(笑)。もちろん、『自分のことは自分が1番分かってるつもりでいたい』っていうところは変わらないし、最後の最後は自分で決めたいんですけど、そこに至るまでは、いろんな人の意見が必要だなって感じています」

 玉城もSNSの総フォロワー数は200万人を超える。発信する際に気を付けていることは「うそを書かない」こと。「そういう姿勢は昔から変わっていないです」と断言する。

「私がSNSを始めたのは『ViVi』モデルになってすぐの中3ぐらいでした。割と早めに始めていたからこそのフォロワー数で、今始めたとしてもここまでの数にはならないと思います。100万人って考えると、めちゃくちゃ多いなって思うんですけど、真剣に見てるのは何割ぐらいだろう……それでもすごいんですけどね!(笑)。なので、そこまで気負わずに更新しています」

 何気ないSNS上の発言がネットニュースなどで大きく取り上げられることもある。「SNSの発言だけを切り取って、記憶して欲しくはないです」と本音を吐露しながらも、「最初の入口として、SNSがあるから知ってもらえることも増えるので、そこはうまく付き合っていくしかない」とプラスな面も感じている。

 投稿頻度は決して多くはないが、思ったことを素直に伝えるスタイルの玉城。「私は怒っているつもりもなく書いたことが、『どうしたの?』みたいに言われることもあって、なんでも思ったことをつぶやきすぎるのはダメだなって思いました。でもそういう投稿の反響が大きいということは、みんなそういうものが見たいってことなので、紙一重だなと思ったりはします」。

 モデルからスタートした芸能人生。現在は俳優としての仕事が増えてきた。役者に興味を持ったのも「自然なタイミングだった」と振り返った。

「高校が芸能の学校だったので、同級生が『今度こういう役をやる』とか話しているのを聞いて、『女優さんって私でもできるのかな?』みたいなところから始まりました。私はオールマイティーにできる役者さんではないと思っているので、自分に合う役を着実にやっていけたらいいなと思っています」

 仕事選びの軸は「私である必要がより多い場所」。今後も俳優業へ邁進していく。「今は俳優の仕事が好きです。つらくて、大変なことも多いのですが、気づいたらやってるっていうぐらい、演技が大好きなんです」。

 一方で、芸能界への執着はない、と断言。25歳ながらも、30代、40代のビジョンも見据えている。そこには、自分にうそをつかないという生き方がベースにあった。

「もしこういうお仕事を続けられているのであれば、このまま自由にやっていっていきたいです。理想ですけど、プライベートも充実させつつ、仕事にもやりがいを見出すっていうのが1番だと思います。でも、年齢を重ねていく中で、確実に女性としての見られ方だったり、立ち位置だったりも変わっていきますし、ライフステージだったりも変化していくと思います。その時々の私の思ったことに共感してもらえたらうれしいなって思いますね」

□玉城ティナ(たましろ・てぃな)1997年10月8日、沖縄県出身。2012年、講談社主催オーディションでグランプリを獲得しデビュー。同年には最年少で『ViVi』専属モデルとなった。14年の俳優デビュー後は『Diner ダイナー』『惡の華』『ホリックxxxHOLiC』『窓辺にて』などに出演。ASF2『物語』では脚本と監督を務めた。23年も主演映画『恋のいばら』、Huluオリジナルドラマ『君と世界が終わる日に』シーズン4ではヒロイン役を務め、同シーズン5では主演を演じることも発表されている。

スタイリスト:松居瑠里
ヘアメイク:今井貴子

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