牛の額に焼きごて…畜産センターの内部動画が物議 「牛を管理する上で必要な行為」環境省も指針

茨城県が管轄する畜産センターで、牛を蹴ったり、焼きごてを押しつけたりする内容の動画が拡散、物議を呼んでいる。ネット上では「動物虐待」との声も上がっているが、実態はどうなっているのか。茨城県畜産センターに見解を聞いた。

茨城県が管轄する畜産センターの内部動画が物議に(写真はイメージ)【写真:写真AC】
茨城県が管轄する畜産センターの内部動画が物議に(写真はイメージ)【写真:写真AC】

先月下旬に国際的な動物権利団体が内部動画を拡散、一部から批判の声が上がっている

 茨城県が管轄する畜産センターで、牛を蹴ったり、焼きごてを押しつけたりする内容の動画が拡散、物議を呼んでいる。ネット上では「動物虐待」との声も上がっているが、実態はどうなっているのか。茨城県畜産センターに見解を聞いた。

「和牛や乳牛を研究対象として扱う茨城県畜産センターは、公的資金で運営されている施設であり、牛にとっての地獄です この新しい調査映像では、作業員が子牛の頭に熱した鉄をねじ込んだり、牛を激しく蹴ったり叩いたり、金属製の道具で動物を突いている様子が映っています」

 先月下旬、国際的な動物権利団体が投稿した内部動画では、職員と思われる男性に蹴られたり、額に焼きごてを押しつけられたりする牛たちの様子が収められている。投稿には1600件以上のリツイート、1400件を超える“いいね”が集まるなど話題に。一部からは「これはひどすぎる」「動物虐待以外のなにものでもない」といった批判の声が上がっている。

 拡散した動画の内容について、茨城県畜産センターの担当者は「動画を確認しましたところ、当センターにおいて、以前に牛舎内で行われていた牛を安全に移動させるための行為や、除角(じょかく)、削蹄(さくてい)時に暴れて人間、牛、双方がけがをしないように実施されている行為を撮影し、一部を切りとり編集されたものと思われます。当センターでは、現在、『アニマルウェルフェア(動物福祉)の考えに対応した飼養管理指針』に基づく家畜の飼養管理に、取り組んでおります」と文書で回答。

 焼きごてを行う理由については「『除角』といって、子牛のうちに牛の角を取り除くために使っています。除角は、牛同士の突き合いによるケガや、人への不慮の事故などを防止するため必要な処置として一般的に行われているものです。国のアニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針にも、牛や人の事故を防止するうえで重要な行為と位置づけられています」と説明したうえで、「牛を管理する上で目的を持って行った必要な行為と判断しております」としている。

 環境省が発行している「アニマルウェルフェア(動物福祉)の考えに対応した飼養管理指針」によると、牛の取り扱いは「牛は、周囲の環境変化に敏感に反応するため、不要なストレスを与えたり、けがをさせたりしないよう、手荒な扱いは避け、丁寧に取り扱うこととする。牛がストレスを感じないよう、管理者(経営者等)及び飼養者(実際に管理に携わる者)は、牛舎内で作業をしたり、牛に近づいたりする際は、牛に不要なストレスを与えるような突発的な行動を起こさないよう努めることとする」と定められている。

 また、徐角については「牛は、飼料の確保や社会的順位の確立等のため、他の牛に対し、角突きを行うことがあり、けがの発生、流産等の原因となる。除角は実施することで牛の攻撃性が低下することから、特に舎内で群飼を行う場合に、不要なけがの発生や流産等を防ぐ有効な手段と考えられる。また、牛の角によって、管理者が死傷するといった不慮の事故を防止するためにも重要な処置である」としており、「除角を行う際は、牛への過剰なストレスを防止し、可能な限り苦痛を生じさせない方法をとることとする。実施の時期は、確実な処置を行うために角根部を触ると角がわかるようになる時期以降に、また、除角によるストレスが少ないと言われている焼きごてでの実施が可能な生後2か月以内に実施することが推奨される」と記載。焼きごて使用の推奨が明記されている。

次のページへ (2/2) 【写真】動物権利団体によって切り抜き編集された実際の除角シーン
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