若手演技派・小野花梨の25歳、連ドラ初主演に「試行錯誤」 5歳から子役、転機は『鈴木先生』

俳優の小野花梨(25)がテレビ東京系ドラマ24『初恋、ざらり』(毎週金曜24時12分)で地上波の連続ドラマ初主演を果たした。『このマンガがすごい!2023』にもランクインした同名コミック(ざくざくろ)が原作で、軽度知的障害と自閉症のあるヒロイン上戸有紗(ありさ)の初恋物語。若手演技派の小野が、初主演を経験して感じたことは?

インタビューに応じた小野花梨【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた小野花梨【写真:荒川祐史】

小野花梨インタビュー 『初恋、ざらり』で連ドラ初主演

 俳優の小野花梨(25)がテレビ東京系ドラマ24『初恋、ざらり』(毎週金曜24時12分)で地上波の連続ドラマ初主演を果たした。『このマンガがすごい!2023』にもランクインした同名コミック(ざくざくろ)が原作で、軽度知的障害と自閉症のあるヒロイン上戸有紗(ありさ)の初恋物語。若手演技派の小野が、初主演を経験して感じたことは?(取材・文=平辻哲也)

 5歳の時に子役としてキャリアをスタートさせ、最近ではNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で主要キャストを務めたほか、映画『ハケンアニメ!』のアニメーター役では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した小野。今年は1月期の関西テレビ・フジテレビ系『罠の戦争』にも出演したが、本作が地上波の連ドラ初主演となる。

 俳優にとって、主演は一つの目標にも思える。

「もちろん、目標の一つではありますが、自分の代わりはいくらでもいると思っていますし、真ん中に立たせて頂くことが奇跡と思っています。主演だから特別になにかをすることは今の自分にはできそうにないので、せめて現場にいるスタッフさんやキャストの方に『楽しかった』と思って頂けるような現場にしたいです」

 ドラマは軽度の知的障害と自閉症のあるコンパニオンの上戸有紗(小野)が、新しいアルバイト先である運送会社の先輩、岡村龍二(風間俊介)と出会い、恋に落ち、心が揺れ動く姿を繊細に描く。7月28日放送の第4話では2人の同棲生活もスタートし、物語はいよいよ佳境に入ってきた。

 知的障害と自閉症のある役柄とどう向き合ったのか。

「調べていくと、10人いれば10人の症状や悩みがあるということが分かりました。だから、知的障害のある女の子を演じるのではなく、有紗なら、有紗だから、ということを考えながら演じさせていただきました」

 有紗とは似ている部分はほとんどない。ただ、行動の根源である感情には共感した。

「有紗は幼い時から劣等感がすごくあって、自己肯定感が著しく低い。そこからくる不安感は有紗という人間を作る大きな要素になります。障害の有無に関わらず、慢性的に感じる不安感には非常に共感を覚えました。そして私が思う有紗の魅力は有紗が人を思う子であること。考えすぎて空回りすることもありますが、そんなところも大好きです」

 小野自身にも有紗が抱えるような不安やコンプレックスはある。

「一つ一つ挙げたら、キリがないくらい至らないところが沢山あります。例えばあまりにも感覚が動物的すぎというか直感頼りなところがあって、そこは直さねばならないかもしれないと思っています。もう少し俯瞰で見て、自分の気持ちを言語化してきちんと相手に伝える術を持ちたいですね」と笑い。ただ、その直感力が俳優としての根本を支えているのかもしれない。

ターニングポイントを明かす小野花梨【写真:荒川祐史】
ターニングポイントを明かす小野花梨【写真:荒川祐史】

「この世界はこんなにしんどくて、難しくて、それでいて、こんなに楽しいんだ」

 役者としてのターニングポイントは、小6の時に、中2生徒役を演じたテレビ東京『鈴木先生』(2011年)だという。初恋相手役の風間とは、映画『鈴木先生』(2013年)以来の共演となる。

「5歳から、このお仕事をさせていただいていますが、それまではこのお仕事のことをあまりよくわかっていなかったと思います。それを役者に変えてもらったのが『鈴木先生』との出会いでした。この世界はこんなにしんどくて、難しくて、それでいて、こんなに楽しいんだってことを教えてくれました。その『鈴木先生』で共演した風間さんと再びテレビ東京のドラマでご一緒できたことがとてもうれしいです」

 風間は、小野とは真逆の存在だという。

「非常に理性的に、そして俯瞰で物事を見ていて思ったことを丁寧に言語化し他者に伝えるという能力が凄まじいです。それでいて途方もない愛情で溢れていて、常に現場が円滑に回ること、みんなが気持ちよく役割を果たせることを最優先しながら現場にいてくださる。私は完全に甘え切って、有紗を演じさせていただきました」

 放送中の今は、喜びよりも、主役としての責任が重くのしかかっているのだという。

「プロデューサー、監督、キャストの方々、みんなで意見を出し合い作っていく中で自分の思いも全て伝えさせていただきました。一挙一動、一言一言、みんなで試行錯誤しながら最善と思えるものを見つけていく作業はとても大変ではありましたが、作品を作る楽しさや喜びを再確認させていただきました。その分、やはり見てくださった方や原作ファンの方の感想は気になってしまいます……」と苦笑いを浮かべる。

 それは『初恋、ざらり』が大きな作品になったということだろう。

「大事な大事な作品です。撮影は終わっていますが、放送は続きますので、まだ有紗と一緒に歩んでいけるのがうれしい」と小野。「これからも、現場で必要とされる人間でありたいですし、そのために自分がどう生きていくべきか胸に手を当てて考えていきます」と姿勢を正して、役に臨む。

□小野花梨(おの・かりん)1998年7月6日生まれ、東京都出身。主な出演作は、映画『プリテンダーズ』(21)、『ハケンアニメ!』(22)、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(21)、テレビドラマ「罠の戦争」(23)など。8月25日には映画「Gメン」の公開が控える。

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