ブックオフ、“立ち読み黙認”から一転「推奨」明言のワケ 古本業界の“タブー”破る生存戦略

「立ち読み、はじめました。」。中古書籍買い取り販売チェーン「ブックオフ」が“立ち読み推奨”を掲げるウェブCMを掲載、話題が広がっている。これまで黙認としてきた店内での立ち読み行為だが、今回なぜ明文化に踏み切ったのか。苦境が続く中古本業界の現状と合わせ、その経営戦略について聞いた。

全店での「立ち読み推奨」を明言したブックオフ【写真:ブックオフ提供】
全店での「立ち読み推奨」を明言したブックオフ【写真:ブックオフ提供】

出版不況やフリマアプリの登場を受け、古本業界にとっては苦しい状況が続いている

「立ち読み、はじめました。」。中古書籍買い取り販売チェーン「ブックオフ」が“立ち読み推奨”を掲げるウェブCMを掲載、話題が広がっている。これまで黙認としてきた店内での立ち読み行為だが、今回なぜ明文化に踏み切ったのか。苦境が続く中古本業界の現状と合わせ、その経営戦略について聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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 6月下旬から公開されたウェブCMには、お笑い芸人のなかやまきんに君を起用。「守ってほしい! 立ち読みマナー 7つのブ」として、「ブ気味な笑い声を出さないこと」「ブっ通しの立ち読みはやめること」など最低限のマナーを示しつつ、「ブンブンと体を振る店員は補充のサイン」など、さりげなく店舗業務への理解を求める内容となっている。

 1990年、神奈川県相模原市で古本屋として創業した同社。従来のうす暗く閑散とした古本屋のイメージから、明るくきれいで客がにぎわうコンビニのような古本屋を目指し、創業当初からある意味タブーとも言える立ち読み行為を容認してきたという。コロナ禍では一時立ち読みを制限していた時期もあったが、社会が日常を取り戻し始めた現状を受け、今回初めて立ち読み推奨のメッセージを打ち出すことに決めた。

「確かに、立ち読みを容認することで本が売れないという弊害がないわけではありませんが、それ以上にブックオフという存在を認知してもらえる、きれいで明るい店舗であることをアピールできるという効果が大きかった。コロナが落ち着いてきた今、立ち読みについてのルールはどうなっているのかというお問い合わせもいただき、立ち読み解禁を伝えるとともにマナーを守っていただければと思いCMを制作しました」

 全国約800店舗のうち、直営店は半数ほどで、残り半数はフランチャイズ加盟店。店舗スペースの関係でコロナ禍前から立ち読みを遠慮してもらっているところもあったというが、今後は全店で立ち読み推奨を行っていくとしている。

 一方で、古本を含むリユース業界が置かれている現状は厳しい。ブックオフは国内中古書籍シェアの50%以上を握っているが、書籍は出版不況を受け書店での一次流通の段階から売上高は落ち込んでいる。また、フリマアプリの登場でリユース市場全体が実店舗からネット上での売買に移行しているという事情もある。そんな現状を打開すべく、同社では中古書籍を軸にしたリユースの総合化と買い取りに特化した専門化を進めている。

「リユース市場は二極化が進んでおり、さまざまなリユース品を取りそろえている店舗と、ブランド品、貴金属に特化した身近な買い取り専門店等があります。当社では、様々なリユース品を取り扱う総合大型店やホビーやアニメ、トレカの対戦スペースを備えたエンタメ型の店舗、そして気軽に何でもお売りいただくことができる買い取り専門店の出店を進めています。買い取り専門店は、利用しやすい生活導線上に出店し、気軽に売りに行きたいという需要に応えていく。実は、リユース体験がある人は国内で50%にも満たない。まだまだビジネスチャンスはあると考えています」

 リユース業界では同社と店名やロゴがよく似た「ハードオフ」も存在するが、実は両者は全くの別会社。創業者同士が懇意だったことから、ともにリユース業界を盛り上げていこうと別業種ながらほぼ同時期に立ち上げに関わったという経緯があるという。

「思う存分立ち読みをして、懐かしい本と出合っていただけるとうれしい」と担当者。立ち読み推奨を掲げた“本流”の中古本販売と、時代に合わせた経営の多角化で、リユース市場に新たな価値を生み出していけるか。

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