22歳にして芸歴20年―前田旺志郎が大学進学を決断した理由、俳優業は「選択肢の一つ」

俳優の前田旺志郎(22)が、オムニバス映画『20祭』(7月29日から東京・池袋のシネマ・ロサにて1週間限定レイトショー)の一編『二十才の夜』(脚本・監督:平田雄己)に主演した。バスケットボール部員の葬儀に参列した20歳の同級生同士が当時のことを語り合う一夜の物語。3歳のときから子役として活躍し、3月には大学を卒業した前田の現在地は?

前田旺志郎が「俳優」という職業に自身の考えを語る【写真:ENCOUNT編集部】
前田旺志郎が「俳優」という職業に自身の考えを語る【写真:ENCOUNT編集部】

3月に大学卒業「正直、あまり変化はないんです」

 俳優の前田旺志郎(22)が、オムニバス映画『20祭』(7月29日から東京・池袋のシネマ・ロサにて1週間限定レイトショー)の一編『二十才の夜』(脚本・監督:平田雄己)に主演した。バスケットボール部員の葬儀に参列した20歳の同級生同士が当時のことを語り合う一夜の物語。3歳のときから子役として活躍し、3月には大学を卒業した前田の現在地は?(取材・文=平辻哲也)

 兄の前田航基と組んだ、お笑いコンビ・まえだまえだとして活躍し、是枝裕和監督の映画『奇跡』に主演し、近年ではドラマ『女神の教室~リーガル青春白書』や『Dr.チョコレート』などに出演する前田。今年3月には大学を卒業し、社会人としての新生活を踏み出している。

「正直、あまり変化はないんです。4年の頃は週に1回、水曜日の3時間ゼミに行くだけでした。授業も(コロナ禍で)2年からはオンラインで参加していたので、大学生という感覚があまりなかったんです。今はむしろ同級生とのギャップを感じますね。この間、久々にサークルのみんなと集まったんですけど、新卒社会人ならではの、苦労や愚痴を話すんですが、僕は全く入れない。みんなの活躍がうれしくもあり、ちょっと寂しくもあるというか、距離を感じた瞬間でした」

 同映画は俳優・プロデューサーとして活躍する桐生コウジ率いる映画製作会社「オフィス桐生」が、設立20周年を記念して、「20」にまつわる映画企画コンペティションの中で生まれた1本だ。『二十才の夜』は、友人の死をめぐって、付き合い方の距離感の違い、微妙な機微が描かれている。高校の体育館に忍び込んで、バスケのワンオンワンを繰り広げながら、会話するシーンが印象的だ。

「元々はテニス部の設定だったんですが、僕は小中高バスケ部で、大学でもサークルに入っていました。共演者の遠藤健慎さんも経験者だったので、バスケに変わったんです。スポーツは、経験者と未経験者では差が出るので、自然な感じで撮れたのは、よかったなと思います」

 大阪出身の前田は高校進学を機に上京。多くの芸能人が通う堀越高校の芸能コースに通い、俳優として活躍する一方、しっかりと学業にも打ち込んだ。

「高校は同じような職業している子たちと一緒でした。このままだったら、この職業の世界しか知らないことになってしまう。それはちょっと見るものが狭すぎるかも、と思ったんです。大学が、どういう場所なのか知りたかったし、そこに集まる人たちと出会いたかったです。ほかにも、将来の職業も含めて自分の興味を探って、自分の夢と向き合う時間を作りたかった。視野を広げた上で、俳優業をやっていると思えた方が自分の中でしっくりくると思ったんです」

 進学した学部は、21世紀の諸問題を実践的に解決する「実践知」を理念としている。

「専門的に何かをやる学部ではなくて、学生それぞれがやりたいことをやっている感じなんです。僕は、演劇の教育的な可能性について学びました。イギリスでは、授業のカリキュラムにドラマ教育が入っていたりします。そういうものを日本の教育にも取り入れられないかを探っていました。演劇ワークショップを実施して、アンケート結果をまとめて、教育的な効果を見るんです。演劇を通して、表現力、主体性、コミュニケーション能力などを学ぶことができるのではと」

 映画では劇中では、同じことに夢中になっていた友人同士の距離感が描かれるが、前田も似たような経験はある。

「年に1回、大みそかに大阪に帰ったときに集まる5人組がいるんですけど、他の4人は大阪で違う職業をやっているので、本当に微々たるものですが、ギャップというか、いろいろと感じるものがあるんです。これまで考えなかったようなことがよぎる瞬間に、焦りとか寂しさみたいなものを感じます。ずっとすごく仲良かったからこそ、小さなほつれみたいなものが、自分にとっては、ショッキングだったりするんです」

 芸歴20年目。どんな活動を思い描いているのか。

「俳優を一生の職業にしようと決めてはいません。一生、選択肢の一つという認識でいたいと思うんです。この仕事はすごい好きですし、楽しいと思っています。そして楽しくできているうちは続けたいですし、ずっと楽しいと感じ続けるために努力もしていきたい。やるからには全力でやっていくつもりです」。今後も大学での経験を活かして、広い視野を持ち、俳優を続けていく。

□前田旺志郎(まえだ・おうしろう)2000年12月7日、大阪府出身。子役としてデビューした後、兄の前田航基と組んだお笑いコンビ・まえだまえだとして活躍。是枝裕和監督『奇跡』主演で映画デビュー、その後も同監督の『海街Diary』や『キネマの神様』(山田洋次監督)などに出演。ドラマではNHK『おちょやん』『いだてん』など。本年は『女神の教室~リーガル青春白書~』や『Dr.チョコレート』の他、現在「量産型リコ~もう1人のプラモ女子の人生組み立て記~」、「僕たちの校内放送」に出演中。秋には舞台「My Boy Jack」(紀伊國屋サザンシアター他、10/7~)が控える。

ヘアメイク:佐藤健行(HAPP’S)
スタイリスト:小宮山芽以

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