60歳・川平慈英、いろんな顔を持つも職業は「舞台俳優」元気の秘けつは毎日通うサウナ

俳優の川平慈英(60)が、森絵都のベストセラー小説をミュージカル化する『カラフル』(脚本・作詞・演出=小林香、7月22日(土)~ 8月6日(日)、東京・世田谷パブリックシアター)に出演する。50代からはいい意味で頑張らないことを決めたという川平。リフレッシュの秘けつはサウナで、毎日のように出かけているという。

インタビューに応じた川平慈英【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた川平慈英【写真:荒川祐史】

鈴木福と6年ぶりの共演「ポスター撮りでビッグハグをしましたよ」

 俳優の川平慈英(60)が、森絵都のベストセラー小説をミュージカル化する『カラフル』(脚本・作詞・演出=小林香、7月22日(土)~ 8月6日(日)、東京・世田谷パブリックシアター)に出演する。50代からはいい意味で頑張らないことを決めたという川平。リフレッシュの秘けつはサウナで、毎日のように出かけているという。(取材・文=平辻哲也)

 テレビ、CM、映画、サッカーナビゲーターなどさまざま顔を持つ川平だが、主戦場は舞台だ。

「サッカーの仕事も大事ですが、『職業は何か』と聞かれたら、俳優、特に舞台俳優と言います。自分の軸です。舞台は、観客を半ば軟禁状態にして、練り上げた作品に魂を乗せて、渡す。お客さんの心が揺らぐ瞬間というのを肌で感じる時があるんです。キザな言葉になりますが、生きていることを確かめ合える瞬間を共有できる。そこに高揚感、幸福感があるんです。うまく行けば、最後に拍手をもらえる。こんなぜいたくな仕事はない」

 ミュージカル『カラフル』は死んだはずの主人公「ぼく」(鈴木福)が人生を生き直す物語。川平は彼を導く天使・プラプラを演じる。主演ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』(2017)では親子役を演じた鈴木福と6年ぶりに共演を果たす。

「うれしかったです。ポスター撮りの時はビッグハグをしましたよ。『ビッグ・フィッシュ』は僕の代表作。あの時、福君は小6でしたが、今は大学1年。びっくりですね。ただ、福君とはいずれ一緒に舞台に立つだろうなと思っていました。普通だったら、ちょっとやさぐれたり、生意気になったりするものだけど、福君は福君。考え方、リスペクト、あふれるエナジーは俺よりも大人。仕事に対して、人に対してもフェアなんです」

 本作で、川平が演じるのは主人公の「ぼく」を導く天使だ。オリジナルナンバーで綴るミュージカルになっているのも大きな見どころだ。

「60歳の天使なんて想像できますか? オファーが来た時は、(演出の)小林香さんはどうかしちゃったんじゃないかなと思ったくらいです。原作は意外とダークな人物像だらけで、引き込まれました。自分がどんな天使を演じられるのか、自分に対する怖いもの見たさがありました。天使ではあるけれども、いろいろと抱えていて、原作よりも肉厚にキャラクターが盛り込まれているので、原作を知っている人にも新しい発見があります」

 失敗した主人公が新たな人生を生き直す中、再発見していく物語だが、川平自身の失敗や挫折は何か。

「僕は調子がよくて、明るいというイメージもあるかもしれないですが、挫折はいっぱいありますよ。大学の時にはサッカーで挫折しましたから」

 少年期の夢はプロのサッカー選手。高校時代は名門・読売サッカークラブ(現・東京ヴェルディ)に在籍し、FWとして活躍。1つ上の先輩にはサッカー解説者として活躍する都並敏史、戸塚哲也がいた。しかし、上智大サッカー部では、新任の外国人監督から戦力外を通告された。

「クビにしてくれたのは、パターソン監督と言うんですけど、あそこでクビにしてくれてよかった。あれがなかったら、中途半端にプロを目指して、失敗していたと思います。ある意味、感謝ですね。早めに夢を打ち砕いてくれたおかげで、舞台に目覚めるんだから、人生って不思議です」

 その大学時代にミュージカル俳優としてデビュー。91年にはJリーグ開幕(93年)に合わせてテレビ朝日の『ニュースステーション』のサッカーキャスターに抜てきされ、選手経験を生かした語り口が人気となった。

「本当にラッキーだったと思います。『ニュースステーション』に出たことで、存在が知られ、その後、三谷幸喜さん、野田秀樹さんとの出会いがあった。兄(ジョン・カビラ)には、『お前はずるい。人の心にすっと入って、すぐにヨシヨシされる』と言われるんですけど、そういうのを存分に生かして、俺は駆け上がってきた気がします」と笑う。

「元気の源はサウナ」と語った川平慈英【写真:荒川祐史】
「元気の源はサウナ」と語った川平慈英【写真:荒川祐史】

 熱心なキリスト教徒だった両親にも感謝している。

「小さい時から寛容、感謝、リスペクトは絶対に忘れちゃダメだと言われていましたし、ホームステイで留学させてくれたこともあったので、いろんな宗教、肌の色の違い、違う文化に触れる経験もさせてもらいました。後は沖縄の三男坊というのもあるのかな。人が楽しんでいる状況が好き。人が楽しんでいると自分が楽しめる。ストレスがなくなるんです。それでも、若い時は『自分こそがナンバー1だ』みたいな感覚はありましたし、力任せの芝居をやったり、『オレを見て』みたいな感覚はありました。そんな鎧が取れたのは50代に入ってからですね。いい意味で流れに任せ、力を抜く」

 昨年9月には還暦を迎えたが、今もバイタリティーにあふれている。その元気の源はサウナだ。

「僕はほぼ365日、サウナに行っています。6分サウナで水風呂が1セット。それを4回やって、体洗って、シャンプーして、最後に5回目をやるのがルーティン。舞台中も、マチネ(昼公演)とソワレ(夜公演)の間にも行っています。スタッフや共演者からは『おかしいよ』『疲れちゃうだろ』と言われるんですけど、僕は湯船には入らないので、いい気分転換になって、逆に覚醒するんですよ。心身が整うと、見える青空も全然違います」。サウナは人生にカラフルな彩りを加えているようだ。

□川平慈英(かびら・じえい)1962年、沖縄県出身。上智大学在学中に学生英語劇連盟のミュージカル『fame』で初舞台。その後、スーパーロックミュージカル『MONKEY』(1986年)や坂東玉三郎演出の『ロミオとジュリエット』(1986年)でミュージカル俳優としてのキャリアをスタート。以降、数々のミュージカルや映像作品で活躍。近年は、三谷幸喜演出の『ショーガール』や野田秀樹演出の『フェイクスピア』『THE BEE』など。『ビッグ・フィッシュ』の演技で第45回 菊田一夫演劇賞を受賞した。

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