磯村勇斗、故郷で「夢」かなえた13年物語 地元劇団への感謝「初心を忘れたくなかった」

俳優・磯村勇斗が22日、故郷の静岡・沼津市に大きな恩返しをした。同日、沼津市民文化センター大ホールで行われた沼津市制100周年記念事業『きらり・沼津。磯村勇斗と~新しい100年へ~』と題したイベントに出演。高校時代に所属した沼津演劇研究所の恩師2人、学生キャスト4人と1日限りの演劇『プロポーズ』を上演した。20代前半でブレークし、話題作に出演し続けるカメレオン俳優。「いつか地元の大ホールに立つ」の夢を現実にした思いを聞いた。

イベントを終えて無人になったホールで充実の表情を見せる磯村勇斗【写真:ENCOUNT編集部】
イベントを終えて無人になったホールで充実の表情を見せる磯村勇斗【写真:ENCOUNT編集部】

恩師2人、学生キャスト4人で憧れの沼津市民文化センター大ホールで舞台上演

 俳優・磯村勇斗が22日、故郷の静岡・沼津市に大きな恩返しをした。同日、沼津市民文化センター大ホールで行われた沼津市制100周年記念事業『きらり・沼津。磯村勇斗と~新しい100年へ~』と題したイベントに出演。高校時代に所属した沼津演劇研究所の恩師2人、学生キャスト4人と1日限りの演劇『プロポーズ』を上演した。20代前半でブレークし、話題作に出演し続けるカメレオン俳優。「いつか地元の大ホールに立つ」の夢を現実にした思いを聞いた。(取材・文=柳田通斉)

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 磯村はえんび服とシルクハットの姿でステージに立った。『プロポーズ』は、自身が13年前の17歳で初舞台となった作品。ロシアの劇作家チェーホフが手掛けた喜劇で、初舞台でも共演した武田典子さん、細沼賢一さんの他、140人のオーディションで選ばれた沼津市内の野田幸之介さん(高1)、梁世姫さん(高1)、東京在住の光安なづなさん(大3)、埼玉在住の山田健人(大1)と3役を7人で演じた。磯村は隣家の女性にプロポーズをする主人公のロモフ役。約1時間に渡って、全員が振り切った芝居を見せ続けた。

「5月から準備を始め、この1週間は僕もずっと沼津にいて全体の稽古を続けてきました。出来は今日が一番良かったです。全員が自分を捨てながら一瞬一瞬を大事に演じていました。そして、とても生き生きしていました。本当に良かったです」

 約1500人収容の沼津市民文化センター大ホール。磯村はここに立つことを「夢」にしていた。高2で俳優を志し、最初に門をたたいたのが、地元劇団の沼津演劇研究所だった。ベテランぞろいの環境で演技の基礎を学び、『プロポーズ』で初舞台。観客は100人程度だったが、「演じることはやっぱり面白い」と実感できた瞬間だったという。

 磯村は沼津西高を卒業後、大学進学と同時に上京。小劇場に出演しながら、芸能プロダクションに入所希望の願いと履歴書を送っていたが、「全然ダメでオーディションも受けられませんでした。『何で気づいてもらえないんだ』とモヤモヤしていました」。その後、静岡市出身の演出家・伊藤靖朗氏が手掛けた舞台に出演。伊藤氏の紹介で現在の事務所に入所したことが転機になった。2015年のテレビ朝日系『仮面ライダーゴースト』のオーディションに合格。17年にはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』に出演して知名度を高めた。文字通り、ブレークした頃だったが、取材には「地元のふるさと大使をしたいです。沼津市民文化センター大ホールに立ちたいです」と話していた。

 あれから7年。映画、ドラマ、舞台で数々の話題作にしていても、磯村はこの「夢」を抱き続けた。そして、5月に沼津市からの依頼で「燦々(さんさん)ぬまづ大使」就任と市制100周年記念事業での特別舞台出演が決まった。夢が現実になり、磯村は言った。

「両方ともかないました。ここ(大ホール)が呼んでくれたのかと思います。上京してもがいていた頃、沼津演劇研究所の皆さんの顔を思い浮かべていました。だからこそ『一緒に大ホールに立ちたい』という思いがありました。初心を忘れたくなかったですし、年齢を重ねてもきっとあのとき(初舞台)のこと、今日のことは一生忘れません」

 実は同劇団は11年11月から活動を休止していたが、この日のために演出家の杉山義則さん、武田さん、細沼さんらが活動を再開。稽古を重ねて13年ぶりの共演を終えた細沼さんは「(磯村は)『いい男になったな』と思いました。演技に思いやりがあって、誠実さを感じました」と実感を込めた。

 そして、俳優を目指す光安さんは磯村との共演を喜びつつ、「この作品を通して、頭で考えるよりも全身でやり切ることの大切さ、人を信じることの大切さを学びました」と振り返った。演技指導にも携わった磯村は「(学生キャストの4人は)僕を踏み台にして羽ばたいてほしい逸材ばかりです。今日のことをきかっけに」とエール。自身の新たな夢も語った。

「沼津で映画祭を開催したいです。先日、カンヌ国際映画祭に参加させていただき、同じ港町ですし、『沼津はカンヌじゃないか』と思いました。多くの作品のロケ地になっていますし、海辺で映画を見られるようにしたいです。エンタメでここをさらに盛り上げたいです」

 市制100周年事業に関われたことについては、「幸せ者です」と言った。故郷を愛する30歳。恩返しの「続編」は、規模が大きくなりそうだ。

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