20年探し続けた1962年式愛車は排気量6400CCのモンスター ジモティーで偶然発見、運命の出会い

愛車にはそれぞれオーナーの思いが込められている。この全長5メートル25センチのアメ車は1962年式マーキュリーコロニーパーク・モントレー。65歳のオーナー・福田和永(かずのり)さんにとっては20年越しの夢をかなえた特別な1台だ。掲示板サイト「ジモティー」で偶然売りに出されているのを見つけたときは、思わず運命を感じたという。

愛車に乗る福田和永さん【写真:ENCOUNT編集部】
愛車に乗る福田和永さん【写真:ENCOUNT編集部】

掲示板サイト「ジモティー」で偶然発見 ときめいた心

 愛車にはそれぞれオーナーの思いが込められている。この全長5メートル25センチのアメ車は1962年式マーキュリーコロニーパーク・モントレー。65歳のオーナー・福田和永(かずのり)さんにとっては20年越しの夢をかなえた特別な1台だ。掲示板サイト「ジモティー」で偶然売りに出されているのを見つけたときは、思わず運命を感じたという。(取材・文=水沼一夫)

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 今年4月、65歳にして愛車を迎え入れた福田さんは、「自分のところに回ってきたのがもううれしくてしょうがないです。なんか自分が乗る運命だったのかなって勝手に思っていますけどね」と、笑みをこぼした。

 手に入れるまでには紆余(うよ)曲折があった。

「もう気に入って気に入って、昔から一目ぼれしていたのをやっと手に入れられたっていう車で。以前は北海道にあったんですよ。シフトノブ、ロックするところがアイヌの木彫りだと思うんですよね。たぶん北海道の方がアメリカから直輸入したと思うんです。それを僕は20年前に見ていて、欲しくて欲しくてしょうがなかったんですよ」

 20年前、車雑誌を読んでいると、一瞬で目を奪われた。古き良きアメ車らしい、迫力のある車体。それでいてクールなスタイリングにも引きつけられた。「50年代、60年代の車ってどんな車なのかも分からずの状態だったんですけど、とにかくこの顔とテールランプに一目ぼれしました」と、心を射抜かれた。

 当時は別の車も所持しており、買おうかどうか迷っているうちに、車は姿を消し、しばらくたって栃木の車屋から売りに出ているのを見つけた。

 その写真を見て、福田さんはすぐにあの車だと思い出した。ところどころにある特徴的な“アイヌの木彫り”を覚えていたからだ。

「北海道から足利に来たんかと思いながら見ていたんですけど、また一瞬にして消えました」

 諦めきれずに販売店にコンタクトを取ると、都内の客が買ったという情報を入手した。

 そして、待ち焦がれること20年。運命の日は突然やってきた。ジモティーで車をチェックしていると、福田さんは驚がくした。あのマーキュリーが目に飛び込んできた。

「たまたまジモティーを見ていたら、エッって目が止まっちゃって。オーナーに『まさかあのときの車?』って聞いたら、『そうです。僕も栃木から買っています』と」

 すぐにでも車を確認したかったが、ジモティーの使い方が分からない。

「ジモティーは自分やったことなかったので、仲間に相談したら『自分がちょっと声かけてあげるよ』って中に入ってくださって(交渉を)やってもらったんですよ。そしたら前のオーナーさんが快く引き受けてくださって、じゃあもう直接連絡し合いましょうっていうことで連絡させてもらって、1回見に行きますので車を見させてくださいと伝えました。東京まで見に行って、いろんなところを見させていただいて、帰ってから連絡して買ったという流れです」

 今度は機会を逃がしたくない気持ちが募った。福田さんはオーナーになることを決意した。

「この時期にやっと巡り合わせで買えたんですよ。北海道のときから一目ぼれしていましたので、念願の車が手に入ったっていう感じですね」

 価格は500万円だった。

「値段はあってないようなものなんでしょうけど、でも、こういう車って特にそんなに極端に価値が下がらないじゃないですか。自分はとにかく好きなんで、買っちゃいましたね」

 燃費はリッター2~3キロ。排気量が6400CCというモンスターだ。60年前の車だが、実際の操作に支障はないのだろうか。

「運転はしやすいですね。4速オートマでパワステ。カスタムはブレーキが利かなかったので、ディスクブレーキに変更したぐらいです。ドラムブレーキだったんですね。あとはノーマルです」

 カラーリングも当時からの黒を維持している。

 室内に6人は軽々乗れるが、「1ナンバーというナンバーに変更しちゃっているので前3人の登録で、貨物登録になっちゃっているんです。トラックと同じですよね」。前方座席に3人だけとはいささか窮屈に思えるかもしれないが、ベンチシートのため広々快適だ。とはいえ、後部座席のスペースはもったいない気もするが……。福田さんは、「後ろ乗りたいですよねですね」と話しつつも、「これを3ナンバーに戻すのは楽だと思います。でも、3から1にするのはすごく大変。なのでもうこのままいっちゃうと思います。普段は奥さんと2人で乗るくらいなので」と、冷静に判断している。

全長5メートル25センチの車体は他を圧倒【写真:ENCOUNT編集部】
全長5メートル25センチの車体は他を圧倒【写真:ENCOUNT編集部】

購入時の妻の反応「特に何も」 一つだけ困ったこととは?

 免許を取った18歳から、アメ車一筋の愛車遍歴だ。

「小僧の頃からアメ車大好きですね。アメ車しか乗ったことないので。もうキリないですよ。台数にして何十台っていう世界ですね。50は下らないんじゃないですか。当時アメ車なんて安かった時代ですし、昔はそのへんに止まっているカマロとかコルベットとか、もう10万5万の世界でしたから」

 キャデラックやリンカーン、ダッジなど有名どころはすべて所有。「シボレーは腐るほど乗っていますね」と、骨の髄までアメ車好きの血が流れている。スポーツカーからワゴン、ワンボックス、ラグジュアリーまで、あらゆる車種を乗りこなした。一方で、マーキュリーは乗ったことがなかった。最後のピースを埋めるかのように、車はやってきた。

 それにしても、今や令和の時代。思い入れがあるとはいえ、機能面では真新しく燃費のいい車やテスラなど電気自動車(EV)も台頭する中で、なぜ、このクラシックカーだったのだろうか。

「僕も65なんですけども、この時期にして、スポーツタイプでスピードを出すタイプでもないし、セダンでもない、四駆のジープ系でもない、ステーションワゴンをゆったりと夫婦で楽しみたいっていうところに来たんですね」

 奥深い人生の楽しみ方。一つのものを追いかけるからこそ、味わえるだいご味かもしれない。

「買ったときの妻の反応? いや特に何も。僕の場合はもうずっとアメ車ですから。国産車しか乗ってない人がいきなりアメ車を買おうと思ったら、『お金かかるじゃないの?』ってなるでしょうけど、僕の場合は全くそれがなかったので。理解あると言ったら理解あるんでしょうかね」

 一つだけ困ったことも。

「一般的な駐車場に止められない。状況によっては、まず車が100%出られないので、絶対どこも止めないです」

 トヨタの新型ランドクルーザー300でさえ、5メートル弱。それを上回るアメリカンサイズは、日本の駐車場には収まらない。普段スーパーなどに行く際は、足車の軽自動車を利用している。

 では、どんなときに運転するのだろうか。

「天気のいいときに本当にぷらっと遊び心で流す程度ですかね。例えば自分の行きたいお店や路面店にある場合は、ちょっとエントランスに横付けしちゃいます。なんか自分の勝手なこだわりがあるんでしょうね。自分はこういう車に乗って、ジーパンを買いに来たんだぞっていう、そういうイメージですかね(笑)コテコテの古着屋さんとか、アメカジの古着屋さんにですね」

 今後はデカい車を末永く、走らせることを目標に掲げている。

「とにかく楽しみたいっていうだけです。それ以外は何もないですよ。今、『EVのプリウスが出たから、お父ちゃんプリウス買おうか』『オウ、買おう買おう』って言って乗っているのと同じ気持ちだと思います。僕はプリウスを乗りたいと思わないだけであって。僕はガソリン食おうと、燃費が悪かろうが、好きなものに乗りたい」

 福田さんにとってはこれからの人生を共に歩む相棒だ。

「僕の最終的なお友達かな。これ以上、僕は今欲しい車が目の前にはないので。だから僕と一緒に最後を迎える車なのかな」と、未来について思いを巡らせた。

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