ジャニーズWEST“失恋ソング”作詞で話題 孤独に寄り添う“DIVA”ゆっきゅんの生き方

トレードマークは、ピンクの髪にフリルがたくさんのファンシーなファッション。ゆっきゅんは、女性アーティストやアイドルに夢中になった岡山での幼少期を経て、現在はDIVA(歌姫)として歌い、踊っている。作詞家、文筆家の顔も持ち、セルフプロデュースで活動。性別にとらわれず、感情を言葉にする原動力を聞いた。

インタビューに応じたゆっきゅん【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じたゆっきゅん【写真:ENCOUNT編集部】

作詞家、文筆家としても活動するゆっきゅん

 トレードマークは、ピンクの髪にフリルがたくさんのファンシーなファッション。ゆっきゅんは、女性アーティストやアイドルに夢中になった岡山での幼少期を経て、現在はDIVA(歌姫)として歌い、踊っている。作詞家、文筆家の顔も持ち、セルフプロデュースで活動。性別にとらわれず、感情を言葉にする原動力を聞いた。(取材・文=大宮高史)

 ゆっきゅんは、ジャニーズWESTの楽曲を作詞している。同グループが、6月にリリースしたニューシングル『しあわせの花』のカップリング曲『恋は負け認めなきゃ勝てない』。きっかけは楽曲ディレクターからの言葉だった。

「まさかの抜てきでしたが、『曲の導くままに書いてください』と言ってくださったので、自由に作詞することができました。でも、ボーイズグループに作詞をするなんて、思いもよらなかったです。ジャニーズWESTさんにもかっこいい曲はたくさんありますから、男の弱さや情けなさを歌ってもらったらいいんじゃないかと、アラサー男性の失恋ソングを書いてみました」

 ファンキーなメロディーに乗せた失恋ソングになったが、ゆっきゅんを知るジャニーズファンにとっては、うれしいサプライズだったようで、「『推しのグループにも作詞をしてほしい』なんて感想もあって、ありがたい限りです」と明かした。

「作詞はDIVAとしての自分のアーティスト活動でも書いていますが、歌詞は詩でも文章でも物語でもなく『歌詞』であり、歌詞というものが発揮できるスピード感が自分の思考のスピードに合っているように感じています。コラムや批評だともう少し丁寧かつ説明的な作業になるんですよね。作詞を続けていくうちに少しずつ自信がついてきました」

 岡山県で育った幼少期から、浜崎あゆみ、宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、安藤裕子、ハロー!プロジェクト……女性アーティストの曲ばかりを聴いていた。

「マニアックな趣味ではないんですよ。地方でしたし、ごく普通にテレビから流れる曲を好きになっていきました。それでも、孤独な人に向けて歌われた、作られた曲という個性が感じられて、僕の活動にも影響を与えています。例えば浜崎さんの曲は明るい印象のサウンドなのに、絶望的な内容を歌っていたりするんです。だから、僕が明るい曲を作っても底抜けに明るいものにならないんですね」

 誰かの孤独に寄り添った曲作り。それがゆっきゅんの原動力でもある。また、青山学院大文学部比較芸術学科に進学し、映画研究に熱中した。自身のルーツでもある少女文化・ガーリーカルチャーにも関心が深く、少女マンガの実写映画化を修士論文のテーマに据えた。

「最終学年になるまで論文のテーマは定まらなくて、とにかく色んな映画や論文を読み漁っていましたね。そして、映画監督では山戸結希さんの作品にすごく惹かれていました。映画界は昨今、山戸さんのように女性監督の活躍が盛んですが、女性作家が増えてきた現象は、1970年代の少女マンガ界に少し似ているような気がしていました」

DIVAとしてのソロ活動も3年目に突入したゆっきゅん【写真:ENCOUNT編集部】
DIVAとしてのソロ活動も3年目に突入したゆっきゅん【写真:ENCOUNT編集部】

2016年には『ミスiD2017』で男性として初のファイナリストに

 学業と並行して足を踏み入れたのが、アイドルの世界。2016年に『ミスiD2017』に応募すると、男性として初めてファイナリストに選ばれた。

「当時、選考委員に山戸さんや大森靖子さんなど好きな人たちがいらっしゃったんで、性別など現実的なことは考えずにエントリーしてみました。理論より実践なのはその頃から変わっていませんね」

 同年にはオーディションに応募し、ルアンとの男女2人組アイドル『電影と少年CQ』のメンバーとしてもデビューした。自分の気持ちに素直に行動してきた結果、引き出しが増えていった。そして、大学院修士課程の修了が近づくにつれ、ソロでのアーティスト活動も見据えるようになった。21年3月に課程を修了すると、“DIVA”としてセルフプロデュースで楽曲制作・ライブ活動を始める。アイドルでもシンガー・ソングライターでもない、DIVAを名乗った理由とは。

「どんなときでも誇り高くあろうとする意志のことを“DIVA”と呼びたかったんですね。日常生活ではつまらないこともありますが、歌手でなくともステージ上にいなくとも、誰もが輝くことができる、音楽がそのための媒介になれると思っています。僕が作る音楽が、皆さんの日常をミラーボールのように明るく照らしてくれるものになれば。そんな気持ちを込めて『DIVA ME』というデビュー曲ができました」

 DIVAとしてのソロ活動も3年目になった。女性アーティストへの憧れを活動に昇華させつつ、自身の体でできる現実的な目線で考えるようになった。

「DIVAの活動を始めた頃は、今まで憧れてきたものからの影響がそのまま表現されていたような気がしますが、僕のこの肉体と声で歌姫と同じようにはできないわけで。自分の声で歌うならどんな音楽がいいんだろう? ということを最近は考えるようになってきました」

 5月10日に配信でリリースされた新曲『隕石でごめんなさい』も、不器用に片思いする主人公を“隕石”に例え、アップテンポでクラブサウンドが目立つな楽曲に仕上がった。制作する時には自分と同じような思いをしている10代の人々のことを思うのだという。

「中高生の頃、映画も音楽もすごく好きだったのですが、“本当に自分のために作られた芸術”というものをどこかで探し求めていたのかもしれないと思うことがあります。だから、そんなときに自分みたいなスターがいてくれたら、どんなに気持ちが楽だったかなと思わずにはいられません。『この曲は、私のことを歌ってくれているんだ』と実感してもらえる曲作りで、まだ歌われていない歌をたくさん歌っていきたいです」

 DIVA、アイドル、文筆家とマルチな活動を続けていくゆっきゅん。多彩なカルチャーに触れてきた蓄積を土台に、これからも人の孤独に寄り添った芸術を作り続ける。

□ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大文学研究科比較芸術専攻修了。大学時代からアイドルユニット・電影と少年CQのメンバーとして活動。2021年5月よりセルフプロデュースでソロのDIVA Projectを始動し、アルバム『DIVA YOU』をリリース。個人でも映画評、コラム、イベント出演、作詞など活動の幅を広げている。

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