締めに飲むのが“通” 9割泡の斬新ビール、提供するのは日本人初の称号持つベテラン店主

仕事終わりのビールがおいしい季節。SNSではジョッキになみなみとつがれた“泡”が注目を集めている。「泡9、ビール1が正解!」というビールを提供するのは、東京・新橋にあるビールバー「ブラッセリー・ビアブルヴァード」。オーナーの佐藤裕介さんにこだわりを聞いた。

「新入社員が注いだの?」とSNSで注目を集めたビール【写真:ENCOUNT編集部】
「新入社員が注いだの?」とSNSで注目を集めたビール【写真:ENCOUNT編集部】

クリーミーな泡が魅力 デザートと一緒に楽しんで

 仕事終わりのビールがおいしい季節。SNSではジョッキになみなみとつがれた“泡”が注目を集めている。「泡9、ビール1が正解!」というビールを提供するのは、東京・新橋にあるビールバー「ブラッセリー・ビアブルヴァード」。オーナーの佐藤裕介さんにこだわりを聞いた。

「新入社員が注いだビール」というSNSが話題になったのは7月上旬。一文と共に投稿された写真には、700ミリリットルのジョッキにあふれるほどつがれた「泡」が。投稿には約10万件ものいいねが集まった。目にした人からは「9割泡じゃねーかwww」という突っ込みのほか、「居酒屋バイトの入りたて、全部これだっっだなぁ」と若かりし日を思い出す感想などが寄せられた。

「神泡」「すべて水の泡に」などの声が集まる中、ビール好きな人からは「ミルコでしたっけ?」と鋭い指摘も。佐藤さんによるとチェコの伝統的なビール「ピルスナーウルケル」を味わうためにある注ぎ方の1つで、「ミルクのように真っ白な泡を楽しむ注ぎ方」なのだと教えてくれた。

 元々バーテンダーをしていた佐藤さんは、勉強のために各国を訪問。2007年にチェコを訪れた際に飲んだピルスナータイプのビールは「衝撃的だった」と振り返る。以降何度もチェコに足を運び14年に「ビールの楽しみ方を伝えたい」と同店をオープン。18年の秋にはピルスナーウルケルが最高の注ぎ手と認定する「タップスター」の称号を、日本人で初めて取得した。

グラスに泡だけを入れるのは至難の業、至極の1杯には職人の技術が詰まっている。写真は新入社員に間違えられてしまったスタッフ【写真:ENCOUNT編集部】
グラスに泡だけを入れるのは至難の業、至極の1杯には職人の技術が詰まっている。写真は新入社員に間違えられてしまったスタッフ【写真:ENCOUNT編集部】

 佐藤さんの夢を詰め込んだ店では、泡とビールを楽しむ「ハラディンカ」、アロマが溜まるようグラスの8分目までしかビールを注がない「シュニット」、そして泡を楽しむ「ミルコ」と3種の伝統的な注ぎ方でピルスナーウルケルを提供している。

「今回話題になったミルコは、もっちりとした泡を楽しむのにピッタリな注ぎ方です。最初の1杯目というよりは、箸休め的に飲んだり、クリーミーな泡と一緒にカタラーナ(クレームブリュレ)などのデザートと味わう人もいます。本国では“締めのミルコ”を頼む人も多いです。会の最後に注文してショットのように乾杯をしてお開きにすることがよくありました」

 SNSでは「新入社員の注ぎ方」とやゆされ「ジョッキのビールを飲んだことないのかな」という声も上がっていたが、チェコビールならではの特別な機材を駆使した職人技だったことが判明。

 佐藤さんは「微妙なハンドル調整により、きめ細かい泡を作り出し、スピード感ある手さばきで、液体に戻る前に注ぎ上げることが必要です。SNSで話題になったので、ネタとして、“新入社員”と書いたタスキをかけたらとスタッフに提案しました」と笑顔。これをきっかけに「チェコのビールや文化に興味を持ってもらえたら」と太っ腹だ。

 佐藤さんは「チェコの大使館の方から『チェコよりおいしい』と言っていただいたときはうれしかったですね。日本橋にある系列店ではチェコのビールに合うチェコ料理も用意しているので、ビールも食も味わいに来てほしい」と呼びかけている。

次のページへ (2/2) 【写真】ピルスナーウルケルの伝統的な注ぎ方3種
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