45歳で貯金9470万円の男性、就職氷河期「20社落ちて…」 家賃3万円の超節約生活、絶望からの光明
45歳で貯金が9470万円あることを明かし、大きな話題になったのが絶対仕事辞めるマン(@MaqwgNaJKDOnxGb)さんだ。大金を得てもぜいたくとは無縁で、節約を徹底し、家賃3万円以下のボロアパートに暮らしている。食事も令和とは思えないほど質素で、一汁一菜の日も。ネット上を驚がくさせた絶対仕事辞めるマンさんはいったい、どのような人生を送ってきたのか、激動の半生を聞いた。
就職活動は「就職氷河期のほぼ最悪の時期」 入社日に誓ったFIRE
45歳で貯金が9470万円あることを明かし、大きな話題になったのが絶対仕事辞めるマン(@MaqwgNaJKDOnxGb)さんだ。大金を得てもぜいたくとは無縁で、節約を徹底し、家賃3万円以下のボロアパートに暮らしている。食事も令和とは思えないほど質素で、一汁一菜の日も。ネット上を驚がくさせた絶対仕事辞めるマンさんはいったい、どのような人生を送ってきたのか、激動の半生を聞いた。(取材・文=水沼一夫)
――改めまして、自己紹介をお願いします。
「いわゆるブラック的な会社で働いている45歳男性サラリーマンで、勤続20年少々です。結婚はしていません。とにかく会社が大変で、毎日15時間くらい何年も働かされたこともありました。いろいろ最悪なのですが、気が弱いので全部会社の言いなりです。入社日にFIRE(早期リタイア)を誓って以来、ずっとお金を貯めています」
――学生時代はどのような生徒でしたか。
「結構努力家で真面目なタイプでした。といっても、いい家で高い教育を受けたタイプではなく、どちらかというと家は恵まれないほうでした。とにかく勉強してまともな人生になろうと勝手に頑張っていた感じです。地頭も物覚えも悪いですが、人の何倍も頑張って、大学を出ることはできました。ただ、就職活動は厳しく、結局は恵まれない社会人生活を送り、逆転のためにFIREを目指している状況にあります」
――ちょうど就職氷河期で、有効求人倍率が1を切る厳しい時代でした。
「私の就職は2003年なので、就職活動は02年度から始まりました。これは就職氷河期のほぼ最悪の時期にあたります。当時の就職状況は異常で、周りには50社落ちなどはざらにいましたね。非常に極端な買い手市場だったので、会社側も『採用してやる』という姿勢が強く、いわゆる圧迫面接も横行していました。大企業の採用は『若干名』とされているところが多く、どこも倍率が何百倍とかだったと思います。大卒であることを隠して高卒公務員試験を受ける『逆学歴詐称』まで横行した、すごい時代です」
ブラック企業でも転職できず… 「代わりはいくらでもいるから」という弱み
――ご自身の就職活動はうまくいきましたか。
「元々は学術関係に進みたいと思っていました。でも、現実はなかなか厳しく、普通の就職活動に挑みました。当時唯一採用の多かったIT系を中心に、シンクタンクなどいろいろ受けました。しかし、とにかく採用数の厳しい時代だったので、20社くらいは落ちました。ようやく命からがら決まったのが今の会社です」
――当時は業種を問わず、正社員になれただけマシ、という声もありました。
「100社ほど落ちて精神が病んでしまった友人や諦めてフリーターや非正規になる者も多かったです。ほとんどは本人のせいではなく、ごく普通の頭で人格に問題ない者でもこうなったのが就職氷河期です。今の時代だったら普通に何社も内定が出て、こちらが選ぶ立場にあったかもしれないと思うと、人生悔しい思いはありますね」
――ブラック企業でも転職せず、一筋で勤め上げています。
「新卒でさえ大変な苦労をしてようやく就職できる時代だったので、どんなにイヤでもまともに転職できる状況ではありませんでした。『代わりはいくらでもいるから』という弱みで、すごく無理を強いられても、ここで働き続けるしかありませんでした。サービス残業やパワハラも多く、職場でそれを見て、私は入社日にFIREを誓いました。非常につらい日々が続きましたが、十分なお金を貯めて仕事そのものから逃げることだけを希望に生きていました。仕事と睡眠だけ、みたいな日々も長かったです」
――節約と貯金を続けました。
「異動や転勤は何度かしました。とんでもないブラックな部署もあれば、少しはマシな部署もありました。20代30代はとにかく仕事と貯金で終わってしまいました。今は年齢並みには社内の立場が上がり、かつFIRE資金も十分に貯まったので、ようやくブログやツイッターができる程度には精神的余裕がありますが、とにかく毎日鬱々と暮らしていた……というのが私のキャリアです」
貯金9470万円の内訳 体をむしばむ“ブラック企業の職業病”とは
――貯金9470万円の内訳を教えてください。
「表の通り、資産のほとんどは日本円の現金です。投資歴は21年目で、株の本も100冊以上は読みました。株はほぼ引退していますが、コロナ暴落のときは株価が異常な割安水準だったので、かなり久しぶりに発作的に700万円分だけ買いました。現金が極端に多い理由は、リーマンショック等も経験しているので、日々何百万も資産が動くのが精神的に耐えられないのと、FIREの失敗は万が一にも許されないからです」
――日頃の節約は。
「衣類は古いものを着続けています。特にワークマンの服は安くて丈夫で汚れても気にならないので気に入っています。最近ヤフオク等で大量の古着の束が数百円程で買えることを知り、今度試したいと思っています。メイン携帯は格安系ではなく、あえて大手キャリアにしています。ポイ活(ポイント活動)に使うと格安系より有利だからです」
――質素な夕食が話題になりました。食事について教えてください。
「朝食はあまり食べませんが、そのときは40~50円くらいの缶コーヒーで糖分を補給しています。昼食は、主に株主優待券や金券で吉野家などの外食に行ったり、株主優待でもらったクオカードをコンビニで使って食べています。昔毎日15時間くらい働かされていたときは、昼休みに1秒でも長く寝ないと体が持たないので、会社で買えるお弁当の米やおかずをみそ汁と混ぜ、それを飲み込んで3分で食べて12時59分まで寝ていました。夕食はほとんど外食しません」
――夜は付き合いもあるのでは。
「公私ともに飲み会には頻繁に呼ばれます。お金はかかりますが、その辺りの義理は欠かさないように可能な限り参加しています。そのときは飲み会で栄養補給します。もちろん豪華なものを食べたいとも思いますが、節約を20年も続けているので、逆にツイートのような食事がソウルフードになっているかもしれませんね」
――健康状態はいかがですか。
「年なりに昔より体重が増えていますが、大きな異常はありません。唯一の持病はブラック企業の職業病、ストレス性潰瘍です。やはりストレス時に痛みます。FIRE修行で20代30代を犠牲にしたので、人生後半戦は健康面も充実したい思いがあり、毎年の人間ドックには惜しみなく金を使ってオプションも付けています。同年代はちょこちょこ病気になっている中、粗食生活や耐乏生活が意外な福音をもたらしてくれたのかもしれません」
超節約生活の娯楽 FIRE達成後、貯金の使い道を明かす
――ブラック企業でメンタルの疲弊は。
「精神面はあまり健康とは言えません。特に20代や30代前後の頃はパワハラもひどく、自死を考えることもありました。しかし、資産が1000万、2000万と貯まるに従い、徐々に貯金が精神安定剤のような機能を果たすようになり、いくぶんマシにはなりました。今はほぼFI(経済的自立)の状態にあるので、精神の一部は無敵化し、かなり楽です」
――FIREはいつまでに達成したいですか。
「まずは貯金1億円を達成したいです。FIREはその後ですね。今年度中には達成できるかな……と想定しています。達成後はなるべく早く辞めたいです。ただ、会社都合の希望退職募集を待つかもしれません」
――超節約生活の中、娯楽は。
「インドア派なので家の中でやることが多いです。株主優待でU-NEXTを見たり、酒を飲んでいた時は飲酒が娯楽だった面もあります。あと最近はツイッターも娯楽になっていますね。いろいろと調べ物や分析をしてブログにするのも楽しみの一つですが、割と時間をかけて書くほうなので余裕のある時にやっています」
――大金をかけてというのはないですね。
「若干ですが、節約活動自体が娯楽になっている面もありますね。シンプルさを楽しむような感覚です。あとは優待券の消化やポイ活で走り回っているときも謎の充実感があります。サウナでは投資方針やFIRE方針をゆっくり考えたり、ぼんやりしています」
――長年続けて、最大の「節約」とは。
「最大の節約とは、『無駄な大出費をしない』という姿勢なのだと考えます。ちまちまとコンセントを抜いて数十円節約する割にいきなり高価な旅行や食事をするようでは支離滅裂です。私は基本的に大出費をしません」
――FIREできたらやってみたいことは。
「すでに一生分の苦労をしたつもりなので、あとは楽しいことだけをやりたいです。例えばユーラシア大陸横断鉄道旅、全国キャンプ旅、全国ビジネスホテル旅、禅修行、茶の湯、DIYで方丈庵を再建、自給自足チャレンジなど、いろんな独り娯楽を極めていきたいです」
――最近はFIREがブームとなっています。
「実は私自身は、一般論としてはFIREブームにあまり賛成ではないんですね。FIRE修行とは、色んなものを捨ててでもつらすぎる生活から逃げ出す、修羅の求道であり、普通の人が目指すべきものではないと思うのです。でも、今の生活がそこまで悪くはないのに、過大な金融リスクを取ってFIREを目指す方も増えています。人生において投資・節約はもちろん重要ですが、今ある幸福まではリスクにさらさないでほしいなと感じますね。そもそも人は健全に働いて当たり前です。私はむしろ反面教師であるべきなのかもしれませんね」
――最後にメッセージをお願いします。
「フォロワーさんやアクセスがものすごく増えてすごくうれしいです! ありがとうございます! 趣味の過疎ブログのほうには割と好評な記事もあるので、単なるエンターテインメントとして楽しんでもらえたらなと思っています」
◆ブログ「氷河期世代がブラック企業でアーリーリタイアに臨む」
https://iceage.work/