俳優で元プロボクサー・赤井英和の次女で、人気女子レスラーで36歳の赤井沙希が11月12日に引退することを表明した。DDT所属で「強く、気高く、美しく」をテーマに戦って10年。現在は引退ロードを歩む中、ENCOUNTの単独インタビューに応じ、幼少期の思い出、プロレス愛、今後の展望を語った。（取材・文＝幸田彩華）

　赤井は、英和と前妻との間に産まれた。幼少期の頃は内気な性格で、「学校でも、室内で遊ぶことが多かった」。食欲は旺盛な肥満児の運動嫌い。勉強も好きではなく、「授業は聞いてるけど、何も入ってないタイプ」。それでも、道徳と図工が得意科目だったという。

　リングに立つ前はタレントとして活動していた。デビューのきっかけは、父の七光りではなく、京都・四条大宮でのスカウトだった。フジテレビ系『クイズ！ヘキサゴンII』などのバラエティーへの出演、キャンペーンモデルを務めていたが、“赤井英和の娘”というレッテルには悩まされていたという。そんな時、2011年4月期のMBS･TBS系連続ドラマ『マッスルガール』に悪役プロレスラー役で出演。これをきっかけに、四角いリングへと導かれた。13年8月18日にDDTが開催する両国国技館大会で正式にプロレスデビュー。当初は「1度や2度のみのオファーだった」という。だが、心配する母親は「プロレスをやるなら親子の縁を切る」と絶縁を宣言。それでも、押し切って突き進んだ。

「今もすごく心配をしています。母にとって理解できないカードが組まれた時は、私にめっちゃ言ってきたりします。この10年間1度も欠かしてないのは、試合後、母に『無事です』と連絡をすることです。ケガをしていても『無事です』って言わないと納得してくれないので、『無事です』と言い続けています」

　赤井は、174センチの長身で細身の体格であるが、「同じことをやっても意味がない」「細い体だからこそできることがあると信じてる」との理由からあえて体型を維持して筋肉を付けるトレーニングを行っている。女子レスラーとしては異色で、ビジュアル先行で注目されてたことは悔しかったという。

「昔気質のファンの方は『どうなのか？』と思うかもしれません。でも、『私だって真面目にやってんのに！』と思ってきました。『きれいな人はできない仕事なの？　それはおかしくない』と考えたりもしていました」

　だが、最も辛かったのはコロナ禍の時期だという。出口の見えないパンデミック。世の中が疲弊している時、赤井はプロレスの必要性について自問自答していた。

「体のコンディションやケガもあるのですが、コロナ禍の時期が苦しかったです。モチベーションや体調に関係なく、『やりたくてもできない』状況だったからです。考えていたことは、普通に生きていく上で『プロレスって、日常生活で最低限に必要なもんじゃないんだな』と思いました。そして、『私は何でプロレスを好きになったんだろう』と思った時、『何回でも立ち上がっていく姿がプロレスの魅力なんだ』と感じました。そして、プロレスラーって強い存在でいてほしいから、『私たちがフニャンとしていたら、誰がへこんでいる人たちを支えるんだ！　ウソでもしっかりするしかないな』と考えるようになりました」

　引退後の道はあえて決めていない。自身のスタイルを生かしたモデル活動やテレビ出演の意欲もあるが、結婚願望も正直に明かした。

「結婚願望は昔からあります。憧れるし、『家庭を作りたいな』っていうのはあるんですけど、好きになった人と一緒に住んでいても、完璧な状態を見られたいんです。上京してから、誰かと住んだことはないです。お風呂上がりボディクリームを塗りたくることとか、習慣を変えれる自信がないです」

ちなみに、好きなタイプは「税金に詳しい人。『印鑑が必要だよ』とか、自分の足りないところを支えてくれる人がいいですね」。8月10日には、プロレス引退メモリアル写真集『GRACIA』を発売。戦いながら“美”を維持してきた36歳は、生涯のタッグパートナーとの出会いを待っている。

□赤井沙希（あかい・さき）　1987年1月24日、大阪府生まれ、京都府育ち。デビューのきっかけは、京都・四条大宮でのスカウト。2006年に旭化成せんいキャンペーンモデルに選出。08年2月13日放送分のフジテレビ系『クイズ!ヘキサゴンII』に初出演。その後、不定期出演。09年にはK-1イメージガールを務め、13年8月18日に両国国技館大会でプロレスデビュー。19年3月31日、契約満了に伴い14年間所属したオスカープロモーションを退所し、同年9月18日、プラチナムプロダクションへ移籍。174センチ、B83―W60―H89センチ。血液型A。