撮り鉄の迷惑行為なぜ急増? 「今や6~7割が中高生」背景にある若年化とSNSでの承認欲求

近年、撮り鉄による迷惑行為が社会問題となっている。今年1月には静岡・沼津市のJR東海道線の踏切で、非常停止ボタンを押して列車の運行を妨害した疑いで高校生が書類送検。先月3日には栃木・矢板市で撮り鉄3人が線路内に侵入、走行中の寝台特急カシオペアが緊急停止した。なぜ撮り鉄は迷惑行為を起こしてしまうのか。自身も鉄道オタクという鉄道系YouTuberのReo氏に、撮り鉄特有の心理を聞いた。

撮り鉄の線路侵入で走行中に緊急停止した寝台特急カシオペア(写真はイメージ)【写真:写真AC】
撮り鉄の線路侵入で走行中に緊急停止した寝台特急カシオペア(写真はイメージ)【写真:写真AC】

非常停止ボタンを押して運行を妨害、線路内に侵入…相次ぐ撮り鉄の迷惑行為

 近年、撮り鉄による迷惑行為が社会問題となっている。今年1月には静岡・沼津市のJR東海道線の踏切で、非常停止ボタンを押して列車の運行を妨害した疑いで高校生が書類送検。先月3日には栃木・矢板市で撮り鉄3人が線路内に侵入、走行中の寝台特急カシオペアが緊急停止した。なぜ撮り鉄は迷惑行為を起こしてしまうのか。自身も鉄道オタクという鉄道系YouTuberのReo氏に、撮り鉄特有の心理を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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「撮り鉄はなぜ皆同じ場所で同じ写真を撮りたがるんですか? って事なんですが、まず前提として鉄道写真家と撮り鉄は全く別物です。鉄道写真家は、鉄道を入れた一枚の絵を描く芸術の様な楽しみ方。撮り鉄は、正解とされる構図をいかに減点なく再現できるかというスポーツに近い楽しみ方」「撮り鉄が一ヶ所に集まる現象は100点に近い再現が出来る撮影場所が限られるからです。しかも鉄道は100キロ近くで動く為、最高ポイント写真はほんの一瞬の勝負です。これが達成出来た時の快感は、サッカーでゴール決めた時や、バスケで3ポイント決まった時の幸福感に似ており、割と誰でもハマると思います」

 先月23日、Reo氏が行った撮り鉄の心理を分析する内容の投稿は、7000件を超えるリツイート、1.5万件のいいねを集めるなど話題に。「すげー的確」「ここまでしっかりと写真家と撮り鉄の違いを説明してるのは初めて見た」「公道で必死にスポーツを楽しむ奴らと同類と言われてすげぇ腑に落ちた」「選手のスポーツマンシップに課題が山積みですが、群れの行動原理は理解できた気がします」と共感と納得の声が多数寄せられている。

 近年、大きな社会問題となっている撮り鉄の迷惑行為。当事者からは「迷惑行為を起こすのは一部の撮り鉄」「大多数の撮り鉄はルールを守って楽しんでいる」という声も上がるが、実情はどうなのか。Reo氏は、以前からあった迷惑行為がSNSによる拡散で発覚しやすくなったことを前提としつつも、「背景に撮り鉄の若年化による承認欲求の問題があると思います」と分析する。

「体感として、今や撮り鉄全体の6~7割が中高生で、バズっている迷惑動画も見るからに子どもたちというのがほとんどです。ネットで安いカメラが出回るようになり、昔よりも手を出しやすい趣味となったことが若年化の主な理由。スシロー事件など他の迷惑動画でもそうですが、彼らはそもそも社会のルールやマナーを知らないことが多く、また、鉄道文化が好きというよりも、SNSで承認欲求を満たしたいという思いが強い。インスタグラムなどで若い女性の非常識な撮影行為が問題になることがありますが、本質的にはあれと同じ。コミュニティー内でのいいね欲しさに、珍しい車両に集中し、無理な撮影に及んでしまうのでしょう」

 一方、長年趣味として楽しんでいる年配の鉄道ファンは、撮影が禁止されたり、経営不振で鉄道自体がなくなることを何よりも恐れており、私有地での撮影やキセル乗車といったルール違反はしない人がほとんどだという。「撮り鉄同士での自浄作用が働かない以上は同類」との見方も根強いが、新参者に対し周囲が教育やマナーを啓発することは期待できないのだろうか。

「こう言ってはなんですが、撮り鉄の中には人とのコミュニケーションが苦手だったり、物事に強いこだわりがある方が一定数いるのは事実です。彼らの中には、自分が責められていると感じると逆上したり、パニックを起こしてしまう人もいて、駅のホームなど場所や状況によっては大きな事故につながってしまうことがある。私のSNSでは迷惑行為を見かけてもなるべく自身で対処せず、駅員や警察に任せるよう呼びかけています。マナー啓発は大切ですが、その場で注意するというのはなかなか難しいのが実情です」

 迷惑行為をなくし、撮り鉄のイメージを向上させることはできないのだろうか。Reo氏は「極論ですが、ここまで嫌われてしまうと今後世間の目が良くなることはもうないのでは」と今後を悲観視する。

「メディアで盛んに取り上げられるようになったことで、撮影マナーは各段に良くなっています。ただ、残念ながら撮り鉄たたきがすでにひとつの娯楽となってしまっている。撮り鉄を擁護することなく、ただその心理がスポーツに近いと解説しただけの今回の投稿でも、『スポーツに例えるなんて失礼』『スポーツマンに謝れ』という揚げ足取りのような批判は一定数ありました。そもそも薄暗い趣味として周囲に隠してきた人も多いですし、年配の鉄道ファンの中には近年の炎上でさらに肩身が狭くなり、引退を宣言している方もいます」

 鉄道写真という文化はこのまま衰退してしまうのか。撮り鉄一人一人の自覚にかかっている。

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