“女性限定”キャンプ場の需要増 「嫌な思いもたくさんした」女性オーナーに聞いた開設の背景

近年のキャンプブームの高まりとともに、キャンプ業界全体に占める女性キャンパーの割合がじわじわと増加している。女性だけのグループキャンプやソロキャンプにハマる女性も増えているが、一方で、ナンパと紙一重の“教え魔”や性被害への懸念など、一部の男性による迷惑行為が看過できない状況となっている。そんな中、全国的にも珍しい“女性限定”のキャンプ場が栃木・那須塩原に存在する。「男性のみは利用不可」という笑うふくろうキャンプ場の女性オーナー・冨澤美弥さんに、女性限定キャンプ場開設の経緯と女子キャンプへの思いを聞いた。

栃木・那須塩原の笑うふくろうキャンプ場オーナーの冨澤美弥さん【写真:ENCOUNT編集部】
栃木・那須塩原の笑うふくろうキャンプ場オーナーの冨澤美弥さん【写真:ENCOUNT編集部】

男性はカップルのみ利用可能、危険な箇所が多いため子連れの利用もお断りしている

 近年のキャンプブームの高まりとともに、キャンプ業界全体に占める女性キャンパーの割合がじわじわと増加している。女性だけのグループキャンプやソロキャンプにハマる女性も増えているが、一方で、ナンパと紙一重の“教え魔”や性被害への懸念など、一部の男性による迷惑行為が看過できない状況となっている。そんな中、全国的にも珍しい“女性限定”のキャンプ場が栃木・那須塩原に存在する。「男性のみは利用不可」という笑うふくろうキャンプ場の女性オーナー・冨澤美弥さんに、女性限定キャンプ場開設の経緯と女子キャンプへの思いを聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

軽トラからセンチュリー、バイクにバギー…大御所タレントの仰天愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

 今月7日、女性キャンパーがソロキャンプ中に男性から悪質なナンパ被害に遭う内容の動画が拡散、ソロキャンプの健全な普及を目指し設立された任意団体「日本単独野営協会」が声明を出すなど、大きな話題を呼んだ。ネット上では、迷惑行為に対する憤りの声や自衛の必要性を訴える声とともに、女性限定キャンプ場の需要について言及する声も。近年では女性のキャンプ人気の高まりとともに、サイト(キャンプ場内の区画)の一部を女性専用としたり、女性専用デーを設けるキャンプ場も存在するが、一般にキャンプ利用者の大半は男性で、女性限定、男性のみは利用不可というキャンプ場は極めてまれだ。

 日本百名山のひとつ、那須岳の麓に位置する笑うふくろうキャンプ場がオープンしたのは2021年。40年前は牧場だったという4ヘクタールもの敷地では、冨澤さんの父が竹細工の世界にのめり込み、一部は見事な竹林に。また父の趣味だったという盆栽が立派に根を張り、うっそうとした野趣あふれる林間サイトを形成している。運が良ければキツネやタヌキ、リスなどの野生動物と出合えるほか、近隣にはサファリパークがあり、ゾウやライオンの鳴き声が聞こえることも。ワサビが自生し夏にはホタルが飛び交うという小川や、背の高い草原のサイト、冨澤さんが植えたブルーベリーの苗木や四季折々の木々、草花が香る庭園など、いくつもの異なる顔を持つ魅力的なキャンプ場となっている。

 都内の外資系企業で経理の仕事をしていた冨澤さんが、両親の介護のために那須に帰ったのは5年ほど前。程なくして父が他界、2年後に母も後を追うように亡くなり、生まれ育った実家の敷地を活用できないかと始めたのがキャンプ場だった。あえて女性限定とした理由は、自身の過去の経験に由来するという。

「もともと登山やキャンプなどのアウトドアが好きで、若いころから各地の山を巡ってきましたが、当時はもっと治安が悪く、アウトドアをする女性への世間の目も冷ややかでした。社会人になると周りは登山をやめてしまって、女性1人で山に行くのもためらわれ、行きたくてもなかなか行けなかった。山でなくても、街中で声を掛けられ断ったらいきなり腕をつかまれたり、怖い思いや嫌な思いもたくさんした。女性が男性の目を気にせず、もっと自由にアウトドアを楽しめる場所が作りたいと思い、このキャンプ場を作りました」

 男性はカップルのみ利用可で、自然の地形をそのまま利用したキャンプ場で危険な箇所も多いため、子連れ客の利用もお断りしている。オープン当初はカップルでの利用が多かったというが、キャンプブームの追い風もあり、2年目の昨年は女性ソロとカップル利用者の割合がほぼ半々に。ハイシーズンの稼働率は8割ほどで、リピーターの割合も高く、女性専用のキャンプ場に確かな需要があることを実感しているという。

 一方で、流行のグランピングなどの高規格で快適なキャンプ場という雰囲気はなく、どちらかというと野営に近いワイルド感あふれるサイトも。女性専用ならではのこだわりはあるのか。そんな質問をすると、冨澤さんはやや複雑な表情でこう語った。

「女性ならでは、女性らしさって、誰が決めることなんでしょう。キャンプ場はキャンプをしに来る場所で、そこには男も女もない。もちろん、利用者の方に気持ちよく使ってもらえるようトイレなどの水回りはきれいに清掃していますし、初めてソロに挑戦される方には『困ったことがあれば呼んでください』とお声掛けもします。ただ、女性だから1人でのキャンプは大変だろうとか、おしゃれで快適なキャンプ場の方がいいに違いないというのは、人によっては大きなお世話。いろいろなキャンプ場があるのは素晴らしいことですが、うちではキャンプ本来の素朴な雰囲気を楽しんでいただければ」

 近年ではサウナやカプセルホテル、パーソナルジムなど、これまでは男性中心だった場所での女性専用施設も増えてきている。高まるキャンプブームでの需要を受け、キャンプ業界にも女性専用の波は広がっていくか。

次のページへ (2/2) 【写真】笑うふくろうキャンプ場の様子
1 2
あなたの“気になる”を教えてください