来年朝ドラヒロイン・伊藤沙莉が心がけていること 「役で嘘をつかない」と「リスペクト」

映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(6月30日公開、内田英治&片山慎三監督)に主演した俳優の伊藤沙莉。子役から着実にキャリアを積み、2024年はNHK連続テレビ小説『虎に翼』の主演を務める。その役作りの秘けつとは……。

役作りの秘けつを明かした伊藤沙莉【写真:舛元清香】
役作りの秘けつを明かした伊藤沙莉【写真:舛元清香】

子役時代からルーティンなし「基本的には作るとむしろダメ」

 映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(6月30日公開、内田英治&片山慎三監督)に主演した俳優の伊藤沙莉。子役から着実にキャリアを積み、2024年はNHK連続テレビ小説『虎に翼』の主演を務める。その役作りの秘けつとは……。(取材・文=平辻哲也)。

 21年は『ステップ』『劇場』『ホテルローヤル』『タイトル、拒絶』などで第63回ブルーリボン賞助演女優賞、第45回エランドール賞新人賞を受賞。22年は『ボクたちはみんな大人になれなかった』『ちょっと思い出しただけ』で第45回山路ふみ子女優賞、今年はNHK特集ドラマ『ももさんと7人のパパゲーノ』で第77回文化庁芸術祭 テレビ・ドラマ部門放送個人賞を受賞した伊藤。身近にいそうな女性を魅力的に演じている。

 役のルーティンはあるのか。

「あんまりないです。例えば、何かを参考で見たり、聞いたりとかしたところで、役に入った時は考える余裕がないんです。基本的には作るとむしろダメ。プラン立てていくと、大体がうまくいかないんです。すごく窮屈になってしまうので、フラットな気持ちで現場に入って、監督から言われたこと、その場で生まれたものを大事にしています」

 このやり方は子役時代からだというから、すごい。

「私は多分、必要なものを抽出するのが苦手なんです。全部を吸収してしまうので、原作の人物と私はここが違うと思ってしまう。心がけているのは、むしろ、真っ白な状態にしておく、ということかもしれません」

『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』は新宿・歌舞伎町を舞台に、自称忍者の恋人・MASAYA(竹野内豊)を持つ探偵マリコ(伊藤)がFBIから行方不明になった地球外生命体を探す異色のエンタメ。マリコは、内田監督が、伊藤で当て書きした脚本だったのだろう。マリコは悲しい過去を持った探偵。その経歴は違うが、共通項もある。

「内田さんとは、『また一緒にやりたい』という話をしていて、やっと叶った。やりやすい、やりにくいという尺度では考えていませんでしたが、簡単にやってはいけない役だとは思っていました。過去や生き様はただごとではないですし、簡単にやると、(物語の)嘘が鮮明になってしまう」

 映画やドラマの物語はフィクションだ。それでも、「役で嘘をつかないこと」は内田監督からの教えでもあり、伊藤自身が心がけてきたことだ。

「役の人物に対しては『ちょっとお邪魔します』、という感覚はあります。自分が最初に寄り添って、理解しようとしなきゃいけないと思っています」

 普段は、撮影現場での雰囲気を大事にするというが、実在の人物を演じる時は下調べもする。

 来年のNHK連続テレビ小説『虎に翼』は、1938(昭和13)年に高等文官試験司法科に合格し、日本初の女性弁護士になり、戦後は女性初の裁判官として活躍した三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんをモデルにした物語だ。

「いま、絶賛勉強中です。実在する方の人生を演じさせていただくのは、少し違います。もちろん、そのまま再現する物語ではなく、派生した物語なので、その方へのリスペクトを込めつつも、監督とも相談しながら、慎重に大切に演じたいと思っています」。題名は、強いものにさらに強さが加わるという意味。伊藤も、パワーアップした演技で日本中を魅了してくれそうだ。

□伊藤沙莉(いとう・さいり)1994年5月4日生まれ、千葉県出身。2003年にドラマデビュー。20年以降、確かな演技力と出演作品の活躍を評価されギャラクシー賞テレビ部門個人賞、エランドール賞新人賞、ブルーリボン賞助演女優賞、山路ふみ子女優賞、文化庁芸術祭放送個人賞、橋田賞新人賞ほか受賞歴多数。近年の出演作は映画『ちょっと思い出しただけ』『すずめの戸締まり』『宇宙人のあいつ』、ドラマ『ミステリと言う勿れ』『拾われた男 LOST MAN FOUND』『ももさんと7人のパパゲーノ』、テレビアニメ『映像研には手を出すな!』(主人公の声)など。今年は舞台「COCOON PRODUCTION 2023『パラサイト』」、ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)、『ミステリと言う勿れ』(9月15日公開)に出演。2024年度前期NHK連続テレビ小説『虎に翼』で主演を務める。

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