猫のダヤン、40周年の誕生日に原作者が送る言葉 「この強い主人公がいたから人が見てくれる」

猫のダヤンの誕生40周年を記念した『猫のダヤン40周年 池田あきこ原画展』が28日から、東京・銀座松屋8Fイベントスペースで行われる。原作者の池田あきこさんが描いた約116点の原画を展示する。そのうち約半分が初公開で、指で描くパステル画の技法で仕上げた。池田さんにイベントの見どころ、そして会期中の7月7日に誕生日を迎えるダヤンへのバースデーメッセージを聞いた。

原作者の池田あきこさんはイベントに展示する「ハビーの酒場」を披露した【写真:ENCOUNT編集部】
原作者の池田あきこさんはイベントに展示する「ハビーの酒場」を披露した【写真:ENCOUNT編集部】

銀座松屋で『猫のダヤン40周年 池田あきこ原画展』が開催

 猫のダヤンの誕生40周年を記念した『猫のダヤン40周年 池田あきこ原画展』が28日から、東京・銀座松屋8Fイベントスペースで行われる。原作者の池田あきこさんが描いた約116点の原画を展示する。そのうち約半分が初公開で、指で描くパステル画の技法で仕上げた。池田さんにイベントの見どころ、そして会期中の7月7日に誕生日を迎えるダヤンへのバースデーメッセージを聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 ダヤンは1983年、自由が丘での店舗開店に合わせてシンボルとして誕生した。特徴的なのは、左右非対称の斜視で、当時は「気持ち悪い」「冷たい」との声が出るほどの異彩を放った。時代に合わせ、だんだんとかわいらしさを兼ね備えたものの、ベースは変わらず、幅広い年代から支持を得ている。展覧会は新作を中心に、「パステル回帰」と「わちふぃーるどの旅」の2つのキーワードで展開。会場は「旅の始まり」「タシルの街」など、5つのゾーンに分かれ、訪れる人々にダヤンの魅力を伝える内容となっている。

 5月下旬、都内にある池田さんのアトリエを訪れると、テーブルの上には、イベントに展示する革の作品「ハビーの酒場」がドンと置かれていた。3月中旬から作業を始め、3か月がかりで完成を目指した大作だった。

 酒場をイメージした空間には、ダヤンやうさぎのマーシィを始め、主要キャラクターの人形が勢ぞろい。その数は、完成形で30体に上る。中央にはいちごのホールケーキが置かれており、取り囲むようにグラスやジョッキが置かれている。ダヤンは今まさにローソクの火を消そうとしている。楽器で音楽を奏でたり、ミモザの花を持って駆けつける仲間も。池田さんは「ダヤンの誕生日のシーンなの。7月7日の11時。ここでパーティーをやっていて、みんなおめでとうという感じ」と、説明した。

 2階へと続く階段は途中から、いびつな作りになる。「時空がずれています。だからわざとずれた階段を作っています」。その先には、3人の魔女が時計の中にベイビーダヤンを送り込もうとしている。「7月7日の11時になると同時にダヤンがふーっとローソクを吹き消すと、ダヤンもベイビーダヤンも時空を超えた旅に出てしまう。今回のテーマは旅なので」。想像力をかき立てる新たな物語が始まる。

 驚きなのが、これらの作品はすべて革で作られていることだ。革の作品を作るクリエーターが少なくなる中、池田さんは展覧会を開くたびに、革の作品を作り続けてきた。「私は絵を描く前は革の人形を作っていたから」。母の影響で、ダヤン誕生前から革職人として活躍していた。革は曲げたり、削ったり、張り合わせたりと、素材としての使い勝手がいい。そして、曲げれば元に戻らない可塑性という長所がある。「ハビーの酒場」は、ほとんどが牛革製で、細かい髪の毛には羊革、街灯には豚革と、造形物によって種類を使い分けている。人形は粘土で土台を作って乾かした後、革を張って彩色した。まるで本物の木を組み合わせたかのような酒場の床は、革に木目をプレスして再現したものだ。

 絵描きの世界もデジタル化が進む中、池田さんは手で描くパステル画をライフワークとしている。一方で、革による造形物も“原点”の一つだ。

「パステルにずっと取り組んできたんだけど、でも、やっぱり革はすごく面白くていろんな造形のしがいがある。革の魅力を伝えていきたいし、もっともっと革の面白さをクリエーターの人が知ればいいのにって思う。革で版画を掘れば、量産できる。それを商品にできる。こんなにいいことはないと思う。ウチはそれでメーカーとしてやってこられたワケだから。革の可塑性のおかげで」

魔女が時計の中にベイビーダヤンを送り込もうとしている【写真:ENCOUNT編集部】
魔女が時計の中にベイビーダヤンを送り込もうとしている【写真:ENCOUNT編集部】

誕生日に原作者も感慨「ダヤン、こんなに育ったのね」 ファンとともに歩んだ40年

 展覧会は、見どころが盛りだくさんだ。まずは、入口に展示する大時計。フランス・パリのオルセー美術館をヒントにしたもので、「時計の間からパリの景色が見える。それがすてきだったので、今回のテーマは不思議な旅だから時計から旅に出るという形にした。大時計の中で景色がどんどん映像で変わっていく」。また、準備に時間がかかったのは、トリックアートだ。「『動く夜の街』というトリックアートの絵を描いたんですよ。遠くから見ると、街角が動いて別の通りが見えてくる。それを描くのにものすごく時間かかって、全体が随分遅れちゃった」と、苦笑した。手慣れたパステル画とは異なる技法が必要で、切り替えに戸惑った。さらに、3Dプリンターを初めて使用して作った人形も登場する。

 そして、7月7日には、松屋銀座のテラスを借りて、華やかに“誕生パーティー”を開催する。「一般の人たちが楽しんでもらえるように広いテラスを借りたの」。豪華グッズが当たる大抽選会も行う予定だ。

 メモリアルイヤーの気運も高まり、ファンからはさまざな応援メッセージが届いている。「たくさんメッセージをいただいて、うれしかったです」。40年間、ともに歩んできた。これまで描いた約1000点の絵のうち、ファン投票で選ばれた22枚も展示される。

「それまで革で不思議な国を作ろうとしていたけど、曖昧模糊(もこ)としたものだった。ダヤンが主人公になって、すごく世界が広がって、お話がどんどん生まれてきて、人にも伝わるようになった。それはダヤンというすごく強い猫がいたから。絵本にしたり、小説にしたり、立体にしたり、革で作ったり、みたいないろんな表現方法を取ってこれて、どれも自分にとっては面白かったのね。それは、この強い主人公がいたから人が見てくれる。支持してくれる。だから作り続けてこられた。創作に対しての本当に強い、強い相棒になってくれた」

 ダヤンにバースデーメッセージを贈るとすれば。

「ダヤン、こんなに育ったのね。ものすごく面白いことをしたと思うし、私も一緒になって面白いことをしてきた。本当にありがとう。これからもよろしくねっていうやつだな」

 訪れる人には、節目のイベントを思う存分楽しんでもらいたい。

「今回はダヤン40年。その一つのテーマが旅です。私も好きだし、ダヤンも旅が大好き。今回時空を超えて、いろいろなところに旅して、面白い生き物に会います。くるくる変わる映像や、もう1回原点に返っての革作品。絵以外にもいろいろなみんなが喜んでくれるような仕掛けを考えています。ぜひ足を運んでください。そして一緒にダヤンの40年を祝ってくれるととてもうれしいです」と、結んだ。

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