中村勘九郎&七之助、156年ぶり舞踊を復活 勘九郎「ベースゼロ」七之助「新作に近い」
歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助が21日、都内で行われた「錦秋特別公演2023」の取材会に出席した。
トークショーの質問コーナーも復活! 七之助「逆質問もできる」
歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助が21日、都内で行われた「錦秋特別公演2023」の取材会に出席した。
同公演は、中村屋一門が2005年から毎年行っている全国巡業。東京の歌舞伎座まで歌舞伎を見に行くことができない地方の人々のために始まった公演で、時期によって「錦秋」や「新緑」と銘打ち、毎年欠かさず行われてきた。20年は新型コロナウイルスの影響でやむなく中止となったが、22年には全国47都道府県すべての都道府県での開催を達成。今年で19年目を迎える。
「錦秋特別公演2023」は、勘九郎と七之助、中村鶴松らが全国14か所をまわる公演(10月5日~21日)。今年は舞踊として156年ぶりの復活となる「天日坊五十三次より『桑名浦乙姫浦島(くわなのうらおとひめうらしま)』」(作・河竹黙阿弥)を上演。勘九郎が浦島、七之助が乙姫となり、原作とは違う趣向で披露される。また鶴松は、吉原仲之町を舞台にした「女伊達(おんなだて)」で、上方の男伊達(おとこだて)を颯爽(さっそう)とあしらう女伊達を演じる。
勘九郎によると、錦秋特別公演は普段の本興行ではなかなか上演されない演目を選ぶことが特徴だという。「初めて見るお客さまも多いので、お客さまに楽しんでいただけるものをチョイスして、新しく考えて作る挑戦の場の1つ」と語った。
今回156年ぶりに復活させる「桑名浦乙姫浦島」は、「天日坊」のなかの一場面の舞踊を抽出したもの。「天日坊」は12年に宮藤官九郎の脚本、串田和美の演出・美術で渋谷・コクーン歌舞伎として上演され、初演から145年のときを越えて復活した。この渋谷・コクーン歌舞伎の「天日坊」のなかで、男女が夢の中で浦島と乙姫になって踊る場面がある。しかし勘九郎は「誰も(黙阿弥の原作を)見たことがないし誰も曲を聞いたことがない、何も資料が残っていない」といい、「どこにも残っていないものをみんなで掘り起こす、言ってみれば発掘作業。新作に近い」と明かした。七之助も同作を「チャレンジの場で、新作に近い踊り」と語った。
勘九郎は「桑名浦乙姫浦島」について、伝書が残っていないため「ベースゼロです」と語り、一から振付をするという。しかし「題材が浦島なので、新曲の浦島や浦島にまつわる歌舞伎の舞踊がたくさんございますので、曲としてはそこをベースにアレンジしていきます。江戸時代のみんなで創り上げていった手法とまったく同じですね」と説明した。
“新作”ではなく“復活劇”とした理由について、12年に亡くなった父の十八代目中村勘三郎さんを挙げ、「これを『新作』って言ったら(父に)怒られちゃうんですよね」と天を指さし、「黙阿弥さんへのリスペクトが一番」と語った。また、「宮藤官九郎さんの脚本で『天日坊』を復活させる20~30年前に、『国立劇場で父の勘三郎が天日坊を復活する』という脚本があったんです」と明かし、「上演はかなわなかったのですが、そのときに舞踊の場面を作っていて、今回やることに決まりました」と、この演目を選んだ理由も語った。
公演では毎回恒例のトークショーも用意されおり、観客が直接質問できるコーナーも。コロナ禍では質問箱に質問用紙を入れる形式になっていたが、この秋からは観客による質疑応答が復活する。七之助は、「可能な限り各地のお客さまと触れ合いたい。紙の質問もいいんですけど、(質疑応答なら)回答した後に『この後昼ご飯食べに行きたいんですけど、好きなところありますか?』と逆質問もできる。実際に兄弟で伺ったお店もあるので、そういったことも楽しみです」と語った。