【医療の現場から】開業医が明かす 厳しい経営と昨年末からいた原因不明の肺炎患者
39県で緊急事態宣言が解除されることが決定し、経済面からひとまずホッとしている人も多いだろう。とくに個人経営の店舗などを経営している人の厳しさは、メディアでもしばしば取り上げられている。経営が苦しくなっているのは、開業医も同じ。特定警戒都道府県の某市で内科クリニックを経営する安城学さん(仮名)に現状などを聞いた。
コロナ前に比べると患者さんの数は6~7割
新型コロナウイルスが流行していた4月頃は「病院に行くと感染するんじゃないか」と恐れて、受診を控える患者さんが多かったので、今はその頃よりは患者さんの数は増えています。それでも、流行前に比べると6~7割ほどになっていますね。患者さんが元気になって来院されないのでしたら喜ばしいのですが、新型コロナウイルスが怖いからという理由なので困ったことです。
それでも患者さんの受診が一時期より増えたのは、高血圧や糖尿病などの常用薬がなくなったので「怖いけど意を決してやってきました」という方が多いから。そのため、「やっと来られたのだから、これまでは1、2か月分だったお薬を3、4か月分まとめて出してほしい」とお願いされます。これは医者としてはつらいところです。
患者さんの体の状態をこまめにチェックできないのはもちろん、医者は診療によって報酬が生まれるので、お薬をまとめて出して患者さんの来院回数が減ると診療報酬が減り、経営的に厳しくなります。新型コロナウイルスの感染が長引けば長引くほど、患者さんの体調管理が疎かになり、開業医の経営も厳しくなっていくのです。ちなみに、当院ではオンライン診療はやっておらず、電話診療は行っていますが、今回、利用された方は数人。オンラインや電話診療はまだ馴染んでいないのではないでしょうか。
小児科は厳しく心療内科、精神科医は患者が増加
そうはいっても、経営面ではもっと大変な方が多く、私は自分の主張ばかりをすべきでないと思っています。私よりも、新規に開業した方はもっと困っていますし、小児科の開業医も厳しい。もともと小児科には慢性の患者さんは少なく、「ちょっと風邪気味だな」と感じた方などがかかることが多いので、「こんな時期だから我慢しよう」と受診を控えている方が増えているのでしょう。反対に、心療内科や精神科は患者さんが増えていると聞きます。不安を強く感じたり、うつっぽくなったりしている方が増えているからではないでしょうか。
この状態はまだ1、2年は続くのかもしれない、と考えています。新型コロナウイルスは地上から消えず、ひどい流行は抑えられるようになってもどこかにウイルスは残り、治療法が確立されるまでは患者さんの不安は消えないだろうと思いますから。私は新型コロナウイルスの感染者が急増する前の2月後半には、「一般外来」と、咽頭痛や発熱など風邪の症状がある「かぜ外来」の受診時間を分け、疑いのある患者さんと、そのほかの患者さんが待合室で混在せず、患者さんが安心して診察を待てるようにしました。それでも、患者さんの不安は強いようです。