『らんまん』で朝ドラ3度目の山谷花純 オーディションでヒントになった三谷幸喜の言葉

神木隆之介(30)主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』(月~土曜午前8時、NHK総合ほか)で、ミステリアスな小料理店の女中・宇佐美ゆうを演じているのが、キャリア15年の俳優・山谷花純(26)だ。朝ドラは『おひさま』(2011年)、『あまちゃん』(2013年)に続き3作目。山谷が朝ドラへの思い、15年の俳優生活を語る。

朝ドラへの思いを語った山谷花純【写真:矢口亨】
朝ドラへの思いを語った山谷花純【写真:矢口亨】

一番楽しかったオーディションは『らんまん』

 神木隆之介(30)主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』(月~土曜午前8時、NHK総合ほか)で、ミステリアスな小料理店の女中・宇佐美ゆうを演じているのが、キャリア15年の俳優・山谷花純(26)だ。朝ドラは『おひさま』(2011年)、『あまちゃん』(2013年)に続き3作目。山谷が朝ドラへの思い、15年の俳優生活を語る。(取材・文=平辻哲也)

『らんまん』は高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルに、主人公・槙野万太郎(神木)の波乱万丈な生涯を描く。5月からの東京編で、万太郎の下宿先となる十徳長屋の住人として登場するのが、山谷だ。

「最初の2回の朝ドラの出演は、どういうものなのかわからずにオーディションを受け、出演させていただいたんです。とてもラッキーだったんですよ。『あまちゃん』以降、ものすごく大きな作品で、みんなが本当に通りたい道だと知った瞬間が多々ありました。そこから下心が見え出したのか、オーディションがなかなか通らない10年間を過ごしていました」と振り返る。

 この10年間、何十回も受けたオーディションの中でも、一番楽しかったのが「らんまん」だったという。

「牧野さんの自伝を読んでから行ったので、会話できるポイントがすごく多く、牧野さんを友達のように感じられて、いろんなことを話すことができたんですね。これで受からなくても、私、悔いないなと思ったほどでした」

 オーディションではリラックスして臨めたそうだが、それには、アマゾンプライムビデオ『誰かが、見ている』(20年)の時に脚本家・三谷幸喜さんからもらった言葉が大きい。

「初めてお会いしたのが、そのオーディションだったんです。この時は肩の力が抜けていたんですね。三谷さんは『緊張していると、審査するこっちも緊張する。ものすごくリラックスされている方が、こっちも一緒に仕事したいと思える』とおっしゃっていただいたのがすごく残っていました。それが今回につながったのかな」

 撮影は途中、期間が空くことがあり、久々に会う親戚の集まりのような感覚だという。「仲はいいけど、照れくさいじゃないけど、ちょっと緊張する距離感が絶妙にいい。子どもを中心として、笑顔が絶えない現場です。神木さんは、槙野万太郎さんそのもの。現場に1歩入るだけで雰囲気変わるし、みんな笑顔になる。太陽みたい主役です。浜辺さん演じる寿恵子も、肝が座っていて、めちゃくちゃかっこいい」

 演じるのは、訳あり女中の宇佐美ゆう。

「長屋に集まる住人は事情を抱えていますが、ゆうさんは、過去の恋愛に後悔やコンプレックスを抱えていて、鎧で固めているだけで、根本はすごく弱い女性だと思います。世話焼きで、心配性。誰かを助けてあげたりしますが、自分はどういう人間だっていうのをあまり明かさない。それが解きほぐされて、主人公がヒロイン寿恵子(浜辺美波)の関係を発展させようかともがいている時に、背中を押すことができるんです」

 ゆうが抱える“傷”には共鳴できるのだという。

「女優をやっていると、つかなくてもいいような傷も多い。オーディションに落ちたとか、撮影でなかなかオッケーが出なかったとか。丁寧に教えてくれる人もいれば、自分の感情を優先して、ぶつけてくる方もいる。自分が悪いんですけれど、どこか傷つくとかもあるじゃないですか。そういうのは、私の中にもありますから」

15年の俳優生活を振り返った山谷花純【写真:矢口亨】
15年の俳優生活を振り返った山谷花純【写真:矢口亨】

女優生活15年に「気づいたらという感覚」

 2007年にエイベックス主催のオーディションに合格し、翌年12歳でドラマデビューし、今年で女優生活15年になった。

「私の人生の半分以上。本当にただただ時間が経っていた、気づいたらという感覚ですかね。昔は自分はこういうふうになっていたい、と自分で自分にプレッシャーを与えていた時期があったんですが、去年ぐらいからやめたんです。もう、なるようにしかならないって(笑)。知らないうちに後輩もたくさんできましたが、頼ってもらえるような先輩ではいたい、と思っています」

 実は何度も女優をやめようと思ったこともある。強く感じたのは、19~20歳の時だった。

「社会人になる区切りの年のタイミングで、すごくいろんなことできるなと思ったんです。お芝居をやめて、大学に行くこともできるし、留学もできる。なぜ芝居をやっているんだろうと思っていました。誰かの人生を生きる職なのに、そんなふわふわした気持ちでいる。それで、『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』(2018年)のオーディションで落ちたらやめようと思っていました」

 その強い決意で臨んだオーディションでは、末期がんに冒された女性役をつかみ、劇中、丸刈り姿の熱演が話題になった。

「丸刈りにした時は涙が出てきましたね。覚悟もしていましたし、最初は大丈夫と思っていたんですが、髪の毛って、女性の命というけれども、本当なんだな、と。なくして、初めて分かりました。明日を生きることを望んでいる人の役で、見た方々から『すごく救われた』という言葉をいただき、誰かに影響を与えられる仕事は自分にとっては天職だなと思った瞬間があって、そこからは辞めたいと思ってないかもしれない」

 今年1月にはBSテレビ東京『親友は悪女』で初の連続ドラマ主演も果たした。座長としての振る舞いは昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での小栗旬を参考にした。

「性別、年齢関係なく、佇まいが素晴らしくて本当に参考になりました。スタッフさんとのコミュニケーション、若い役者への対応。いるだけで、いい緊張感を与えるし、その緩和も与えてくれ、そのメリハリでうまく空気の流れを作ってくれる方でした」

 昨年から大河ドラマ、主演ドラマ、今回の朝ドラと大きな作品が続き、自身の成長を実感している。

「お芝居が好きで、人と物を作ることが好き。それが、幸福感を得られる瞬間なんですよ。顔も見たこともない、話したこともない人たちに何かを届けたい。そのご縁があった作品を1つ1つやっていくことに意味があると思っています。私がいただいた役は私しか演じられないから、それって、私にとっての主役だと思っています。今後は、お仕事をテーマにした作品をやってみたい。一から職業を勉強してから挑めたら、と思っています」とまっすぐな瞳で語った。

□山谷花純(やまや・かすみ)1996年12月26日、宮城県生まれ。2007年にエイベックス主催のオーディションに合格し、翌年12歳でドラマデビュー。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(13)や『ファーストクラス』(14)などに出演。特撮ドラマ『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年~16年)のモモニンジャー役で一躍注目。『シンデレラゲーム』(16)で映画初主演。主な出演作は『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』、『人狼ゲーム プリズン・ブレイク』(16)『耳を腐らせるほどの愛』(18)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)、主演作『フェイクプラスティックプラネット』(19)、『天間壮の三姉妹』(22)。

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