TBS出水麻衣アナ、大学院進学で痛感 自身は「ポンコツ」職場は「ぬるい環境」…他院生との「雲泥の差」で発奮

TBSの出水麻衣アナウンサーが今春、早稲田大大学院経営管理研究科を修了し、経営学修士(MBA)を取得した。仕事との両立は「体力的にこたえた」というが、学び直しの貴重な時間を過ごせたことには「最高に楽しかった」と笑顔を見せた。同研究科の目標は「ビジネス社会において専門的能力と的確な判断力を備え、世界的視野で活躍できる高度専門職業人を育成すること」。テレビ界の第一線で活躍している出水アナは、なぜこの時期に大学院で学んだのか。アナウンサーがMBAを取得する意義や大学院で得たことを聞いた。以下はインタビュー前編。

早大大学院進学の動機を語るTBSの出水麻衣アナウンサー【写真:荒川祐史】
早大大学院進学の動機を語るTBSの出水麻衣アナウンサー【写真:荒川祐史】

安室奈美恵さん引退宣言のレポートにビックリ、経済効果1000億円「マーケティングの着眼点に感心」

 TBSの出水麻衣アナウンサーが今春、早稲田大大学院経営管理研究科を修了し、経営学修士(MBA)を取得した。仕事との両立は「体力的にこたえた」というが、学び直しの貴重な時間を過ごせたことには「最高に楽しかった」と笑顔を見せた。同研究科の目標は「ビジネス社会において専門的能力と的確な判断力を備え、世界的視野で活躍できる高度専門職業人を育成すること」。テレビ界の第一線で活躍している出水アナは、なぜこの時期に大学院で学んだのか。アナウンサーがMBAを取得する意義や大学院で得たことを聞いた。以下はインタビュー前編。(取材・文=鄭孝俊)

――アナウンサーとしてテレビ放送の第一線にいる中、なぜ、大学院を目指そうと思ったのでしょうか。

「受験したのは2020年の秋でした。既に入社14年を数えていて、それなりにさまざまなジャンルのお仕事の場を経験してきたものの、培ってきた経験則、その範囲内の力で仕事をしているのでは、というモヤモヤとした気持ちや不完全燃焼な思いがずっとありました。そういった思いを抱えているところに、コロナ禍がやってきて、仕事も少しセーブするようなことがあったり、習い事や人付き合いが全部ストップしたりでポッカリと夜の時間が空きました。そんな時、以前に親しい友人から言われた『時間があるなら勉強してみたら』という一言を思い出しました。それで調べ始めたら“夜間の大学院”というキーワードに出会い、ピースが自分の中でマッチしたように感じました」

――上智大外国語学部英語学科卒業ですが、早稲田を選んだ理由は。

「一橋大や慶応大などのMBAコースも考えましたが、早大経営管理研究科(WBS)には全日制グローバル、全日制の1年制総合、グローバル9月入学、夜間コースなど全コースを合わせると250名くらいの生徒が集まっていて、同じ時期に大きな母集団の中に入って学べる魅力がありました。休職して入学した大企業の現役社員やビジネスの最前線にいる実業家、世界中から集まった留学生がたくさんいますし、そういった方々から知見を得たり、人脈が一気に広がったりするところが面白く、有益だと思いました。実はTBS社内にもWBS修了者が何人もいて、『WBSがオススメだよ』とさまざまな相談に乗っていただき、背中を押してもらいました。私が入学したのは夜間主総合というコース。会社で働きながら平日夜間と土曜を中心に授業を履修し、2年間でMBAを取得するプログラムです」

――大学院入試(院試)の対策は。

「受験資格として実務経験3年以上、選考方式は第一次選考が書類審査と筆記試験のエッセイ。第二次選考に面接があります。コロナ禍の特例で小論文はありませんでした。受験対策として、ご縁を頂いた教授の方にエッセイを添削してもらい、『学術的な文章の語尾は「です・ます」ではなく、「だ・である」ですよ』と、基本の基からダメだしをいただきつつも、無事に合格して21年4月から今年3月まで2年間在籍しました」

――アナウンサーという職業ですと、社会情報学やメディア論、マスコミュニケーション研究、スポーツジャーナリズムなどがフィットしそうですが、MBAを選んだのはなぜでしょうか。

「当時は政治ニュースを読んだり、プレゼンしたりすることが多かったので、政治に関する大枠の知識は掴(つか)めている。新聞でいうと政治面は理解しているとは思っていました。ですが、では経済面は? と自分に問いかけた途端に自信が揺らいでしまい、『私、このジャンルのことをあまりよく分かっていない』と焦りました。そして、経済や経営、さまざまな企業、サービスに関するマーケティングなどの戦略について研究したいと思いました。また、政治が動く背景には経済状況があることも多く、お互い密接に関わっています。世の中のグローバルな流れを理解する上でマーケット、市場のことを理解していることは大事だと考えました。大学院を受験する前に、テレビ東京の相内優香アナウンサーにお会いして仕事との両立方法や充実した学生生活について教えてもらい、さらに刺激や勇気をもらいました。相内さんも20年4月にWBSに入学してMBAを取得、実務に生かされています」

――大学院という環境に入って驚いたことはありますか。

「自分がいかに“ぬるい”環境にいたのかを突きつけられましたね。日ごろの業務では使うことがなかったので、パワーポイントもろくに作れない、エクセル関数もよく分からない。課題に取り組むにしても、Googleでツールの使い方から調べて……。ビジネスパーソンとしては随分出遅れていて、『私はこんなにもポンコツだったのか』と苦笑いでした。商社や広告勤務の院生は、そのままパンフレットに掲載できるようなプロ仕様の資料をビシッと作ってくる。それはもう雲泥の差でした。でも、それらを見て『素晴らしいお手本を提示してもらった』と思い、発奮材料にしました」

院生仲間との日々を振り返った出水アナ【写真:荒川祐史】
院生仲間との日々を振り返った出水アナ【写真:荒川祐史】

――講義ではどんな課題が出ましたか。

「テーマとなる企業が与えられ、その企業価値を高めるM&A相手を探して、選定理由や具体的な経営統合プロセスを策定する課題。ソーシャルグッドな新規事業を考案して、市場展開する上での戦略を考える課題などがありました。その他にも、マーケティングの授業では興味を持った世の中のサービスや製品について各院生がマーケティグの視点から4P分析・STP分析・SWOT分析等を使ってその素晴らしさを論じるレポートが毎週あり、授業前には60人ほどの履修者がレポートをオンラインで共有していました。コンペのように1位、2位、3位と順位を付けていくのですが、レポート内容に各院生の関心や経験、そして人柄がにじみ出るのでどれも興味深かったです。特に面白かったのは、安室奈美恵さんの引退宣言と芸能生活幕引きまで1年間の道のりをマーケティングの視点から論じたレポートでした。引退までの経済効果は1000億円、前作からのアルバムセールス10倍増を達成。その背景にはどんな仕掛けがあったのかを分析していて、私がただ感傷的に見ていた大スターの引退という事象をマーケティング視点で捉えなおす。その着眼点に感心しました」

――ご自身はどんなレポートを提出しましたか。

「恥ずかしながら安直に、安室さんがOKなら私は黒柳徹子さんで行こう! と(笑)。『世界―ふしぎ発見!』でご一緒していたこともあって、長年テレビで活躍されている黒柳さんがテレビの黎明期から今までずっと、愛され続けられる理由を私なりに分析しましたが、黒柳さんへのラブレターのような仕上がりになってしまい…。物足りない内容だったと思います。テレビはトレンドを取り上げるメディアであるにも関わらず、『なぜ世の中にそれがうけているのか?』という観点で物事を見てこなかったのですが、その視点が新たに加わったのは大きな学びでした」

――他の院生仲間の印象は。

「学ぶ意欲や好奇心が旺盛だからこそ、他の院生の学びのためにも労力を惜しまず協力してれる人が多かったですね。課題や修論も周囲の仲間に大いに力を貸してもらいました。あとは、皆さんタスクを仕上げるのがとにかく速いです。日頃からアサインされた業務に対して、素早く決断して打ち返しているのだろうと思いました。私はどちらかというと、小学校の頃から夏休みの宿題を最後まで残してしまうような子で、そっくりそのまま大学院に突入してしまったのですが、やはりこれじゃダメだなと痛感して、会社の業務の仕方にも良い影響が波及しています。『こんなビジネスパーソンになりたい』と憧れる人との出会いがたくさんありました」

――現役の花形アナウンサーが大学院に通うということで注目されましたが、ゼミはどんな雰囲気でしたか。

「皆さん、大人なので温かく見守ってくれましたけど、コロナが少し落ち着いて食事に行った際に『アナウンサーなのになぜMBAを』とか、『テレビで会った人で誰が一番かっこよかった?』『あのドラマ、面白かったですね』『出水さんって、“ふしぎ発見”に出演していますよね。私、勤務先が(スポンサーの)日立です』『ナイツのちゃきちゃき大放送、毎週聴いています』など、けっこう皆さん、『待っていました!』という感じで気軽に声をかけてくださって(笑)。友人作りの突破口になったので、メディアに出る仕事をしていて良かったです。大人になって利害関係のない、戦友のような友人が多数できたことがこの2年間の何よりの収穫だと思っています」

□出水麻衣(でみず・まい)1984年2月11日、東京都生まれ。エンジニアの父親の仕事で小4の夏に渡米し、高2の夏までジョージア州で過ごす。帰国後、国際基督教大高を卒業し、上智大外国語学部英語学科に進学。2006年、TBSにアナウンサーとして入社。『筑紫哲也 NEWS23』のスポーツコーナー、『世界陸上』『オリンピック』のレポーターを務めた後、『王様のブランチ』『世界―ふしぎ発見!』『JNNフラッシュニュース』『報道1930』のほか、『ひるおび!』『ゴゴスマ~GO GO! Smile!~』内のニュースなどを担当。アシスタントを務めるラジオ番組『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』『コシノジュンコ MASACA』にレギュラー出演中。

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