限定500台“幻のスープラ”に驚愕 「いじってナンボ」の車がノーマル現存 オーナー明かす入手の経緯

1988年式のスープラ「3.0GTターボA」。当時限定500台のみ販売された幻の1台を、ノーマルの状態のまま所持するオーナーがいる。80年代にトヨタ自動車カローラで販売された車のノーマルタイプを所持するオーナーだけが集まった団体「カローラ店80’s」のメンバーである竹腰秀樹さんに愛車へのこだわりと思いを聞いた。

展示された1988年式スープラ「3.0GTターボA」【写真:ENCOUNT編集部】
展示された1988年式スープラ「3.0GTターボA」【写真:ENCOUNT編集部】

ノーマル状態の車にこだわった「カローラ店80’s」のメンバー

 1988年式のスープラ「3.0GTターボA」。当時限定500台のみ販売された幻の1台を、ノーマルの状態のまま所持するオーナーがいる。80年代にトヨタ自動車カローラで販売された車のノーマルタイプを所持するオーナーだけが集まった団体「カローラ店80’s」のメンバーである竹腰秀樹さんに愛車へのこだわりと思いを聞いた。

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「スープラのような走りを売りにした車はどこかいじっているのが普通なんです。発売当時はいじってナンボの世界だったのでノーマルで残っているのは非常に貴重です」と熱を込めた。見事に発売当初の面影を残しているこの車に出会ったのは約9年前。「とある中古車販売サイトに掲載されていたのを偶然発見したんです。仙台にあったのですが珍しいので、新幹線に乗って見に行きました。価格も手頃で『よし、買うか!』と購入を決めました。決め手は全くのノーマルだったこと。ノーマルじゃなかったら買っていなかったですね」と購入のいきさつを明かした。

 高校生の頃からの憧れだった。初めて出会ったのは車系の雑誌を眺めていたときだ。「当時はグループA(市販車を改造したレース)がF1以上に人気でした。スープラやスカイライン、BMWなどいろいろある中でレースのモデルになる限定車が出るとなり、『いいなあ』と思っていました。もちろん標準モデルより高かったので『そんなの買えないな』と思っていましたが、やっとたまたまめぐり合わせでなんとか買えるところまで来たのでこれは一回乗れるところまで乗ってみようと思ったんです」。

 ノーマルにこだわった自慢の愛車、そのお気に入りポイントとは。「ボディーのシルエットでしょうか。なかなか今の車にはないですよね。直線基調の名残ではあるんだけど曲線が入って丸みがある。自然なデザインが嫌味がなくて好きです。あとは当時から標準だったスポーツシートで本革というのが個人的に気に入ってます」と愛着を語った。

 3リッターのシングルターボ。発売当時、圧倒的なパワーを見せた自慢の1台は普段どのように使用しているのだろうか。「普段はあまり乗りませんが、こういうイベントやあとは休みの日の特別な時に出して走っています。さびてしまうのが怖いので雨の日もあまり乗りません。加速ももちろん楽しむときはありますが、ガンガン飛ばすことはなく、いたわって走っています。意外とクラウンのように静かでゆったり乗れるんですよ。ターボを回さなければ燃費はすごく良いです。今でもリッター10キロは走りますね。排気量が大きいので高速とかはあまりアクセルを踏まなくても加速していくので良いです」と乗り心地についても語った。

 コンセプトは“金をかけずに乗る”――。竹腰さんは笑顔で愛車との付き合い方を語った。通常ではまずお目にかかることができない名車。保管には慎重になってしまいそうだが、そうではないという。「完璧にしたい気持ちは分かるんですが、それはそれで崩れていくのが嫌になってしまいます。ほどほどだったら気楽に乗れます。かと言って決して邪険に扱っているわけではありません。やはり丁寧に乗ることが大事です。細かいことは気にしない、そうでないと古い車には乗れません」と理由を明かした。

 昨今では、旧車ブームが到来し、貴重な車を標的とした事件も相次いでいる。竹腰さんも対策を怠っていない。「細かいことは言えませんが、いろいろと手は打っています。乗らないときでも定期的な見回りは欠かせませんね。以前、ワイパーに中古車販売のチラシを挟まれたことがありましたが、そういう少しでも異常があったときには見回りを強化しています。また、近所に自動車工場があるのでそちらにも見かけたときは連絡をもらえるよう声掛けをしています。何よりも常に目をかけてあげる、というのが大事です」。

 思い入れのある愛車。それだけに売る気はない。「今80年代、90年代の古い車って全体的に値段が上がっているじゃないですか。売れば買った時より高く売れるんで、もうかるといえばもうかるんでしょうが別に売る気はありません。値段が高くなろうが安くなろうが関係ないです。でも、盗難の可能性が高まったり、他の方から『譲ってくれ』とせがまれることが多くなるので高くなる方がやはりうれしくないですね」と率直な気持ちを口にした。

 当時、注目の的だったことから街やイベントで声をかけられることも多い。「『昔乗ってた』とか『昔買えなかったけど今欲しいなあ』なんてよく言われます。意外と10代、20代の若い子たちから『カッコいい』と声をかけられることもあるんです。やっぱり時代関係なくカッコいいものはいいんだなあと実感しますね」。時を超えてなお愛され続ける1台はこれからも走り続ける。

次のページへ (2/2) 【写真】スープラ「3.0GTターボA」の内装、バックショット
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