IWGPジュニア王座を争う王者・高橋ヒロムとマスター・ワトのともに負けられない理由とは

新日本プロレス6・4大阪城ホール大会で、IWGPジュニアヘビー級王者・高橋ヒロムに挑戦するマスター・ワトの意気込みが凄まじい。

師・天山広吉が見守る中、マスター・ワトはレシエンテメンテIIをティタンに仕掛けた【写真:柴田惣一】
師・天山広吉が見守る中、マスター・ワトはレシエンテメンテIIをティタンに仕掛けた【写真:柴田惣一】

毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.148】

 新日本プロレス6・4大阪城ホール大会で、IWGPジュニアヘビー級王者・高橋ヒロムに挑戦するマスター・ワトの意気込みが凄まじい。

 ベスト・オブ・ザ・スーパージュニアに初優勝したワト。「地元・大阪という最高の舞台で堂々と勝ちたい。ヒロムさんの強さに自分は負けない自信がついた」と底抜けの笑顔を爆発させた。

 海外修行に旅立ち、コロナ禍の20年7月に「グランドマスターを目指す男」として帰国。リング上で見得を切っていたところ、背後から鉄パイプで襲撃されるという凱旋らしからぬシーンが話題となった。

 その後、田口隆祐とのコンビでIWGPジュニアタッグ王座を獲得するなどしたが、シングル戦線ではなかなか結果を出せずにいた。もう一歩、何かが足りない。もどかしかった。

 それでも明るさを失わなかった。凱旋後はコロナ禍とあって機会は減っていたが、顔を合わせると輝くような笑みを浮かべながら「あ、お疲れ様です!」と駆け寄り、何やかやと雑談。若手時代と微塵も変わらぬ素直な姿勢には、こちらが恐縮するほどだった。

 リング上ではワトだが、リングを離れると好青年そのまま。彼と言葉を交わした人は、応援したくなるはず。道場生時代には、年上の後輩が多かったが、時には厳しくても、笑みを絶やさずコミュニケーションを取っていた。好感度抜群。誰からも愛される男なのだ。

 得意技のひとつは「通天閣」ジャーマンスープレックス。いわずと知れた大阪のシンボルである。スーパージュニアに優勝すると、通天閣の公式Twitterから優勝を祝うツイートが寄せられた。師匠の天山広吉はじめ多くのレスラー、関係者からも「おめでとう」メッセージが届いている。

王者・高橋ヒロム(右)に挑戦表明するマスター・ワト【写真:柴田惣一】
王者・高橋ヒロム(右)に挑戦表明するマスター・ワト【写真:柴田惣一】

 ベルトにも王手をかけたワトの前に立ちはだかる王者・ヒロムは難敵だ。あくなき向上心で新たなチャレンジも欠かさない。5・30ドラディション後楽園ホール大会に乗り込み、レジェンド・藤波辰爾と対戦。6人タッグマッチとあって「藤波さんを感じられなかった」と振り返る。

 藤波とのシングル対決に「やりましょう」と前向き。ヒロムは現在の日本ジュニア界の頂点に君臨している。藤波は1970年代末から80年代初めにジュニアブームを巻き起こし日本マット界に「ジュニア」を定着させた“生きるレジェンド”。40年の時空を超えた新旧ジュニア帝王の激突に、それこそ新旧のファンの夢が膨らむばかりだろう。

IWGPジュニア王者の高橋ヒロム【写真:柴田惣一】
IWGPジュニア王者の高橋ヒロム【写真:柴田惣一】

「リング上は生意気で申し訳ありません。藤波さんを心の底から尊敬しています」とヒロム。こちらもワト同様、リングを離れれば礼儀正しい好青年で「お茶目ですね」とネクタイを見てニコニコ。何とも言えない愛嬌があり、人気も高い。

 ワトvsヒロム。それぞれにファンがいるが「この対戦は、どっちを応援しようか迷ってしまう。どっちも頑張れという気分」という人が多いようだ。好勝負間違いなしのカードに期待がふくらむ。

 6・9ALL TOGETHER東京・両国国技館大会では、ワトがHAYATA(ノア)、ライジングHAYATO(全日本プロレス)とトリオを結成し、ヒロム、AMAKUSA(ノア)、青柳亮生(全日本)組と対戦する。いつもと違うメンバーとの試合、どんな化学反応が起こるか楽しみだ。

 6・4大阪城、6・9両国と負けられない闘いが続くワト。チェスを始めさまざまな分野で最高位を意味する「グランドマスター」を目指す好漢の正念場がやってきた。

次のページへ (2/2) 【写真】優勝トロフィーを掲げるマスター・ワト
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