お寺のトイレ、ガイドブックに「貸し出し可」の誤情報 「なぜ貸してくれない」と罵声も…出版社謝罪

六甲山の麓、兵庫・西宮市に位置する高野山真言宗の仏教寺院「鷲林寺」で、本来貸し出しを行っていないはずのトイレがガイドブックに掲載され、問題となっている。いったいなぜ間違った情報が拡散されることになったのか。SNS上に困惑の訴えを行った鷲林寺の藤原栄善住職と、ガイドブック発行元のJTBパブリッシングに事情を聞いた。

お寺のトイレ使用をめぐる誤った情報がガイドブックで拡散(写真はイメージ)【写真:写真AC】
お寺のトイレ使用をめぐる誤った情報がガイドブックで拡散(写真はイメージ)【写真:写真AC】

ガイドブック発行元のJTBパブリッシングはホームページ上で謝罪

 六甲山の麓、兵庫・西宮市に位置する高野山真言宗の仏教寺院「鷲林寺」で、本来貸し出しを行っていないはずのトイレがガイドブックに掲載され、問題となっている。いったいなぜ間違った情報が拡散されることになったのか。SNS上に困惑の訴えを行った鷲林寺の藤原栄善住職と、ガイドブック発行元のJTBパブリッシングに事情を聞いた。

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「トイレを貸して欲しいと尋ねて来られるハイカーがあとを断ちません。その対応に困っています…本日来られたハイカーから本に載ってると聞きました。確かに『鷲林寺WC』と書かれてました。お寺に許可なく間違った情報を提供されるととても困ります…」

 トイレの貸し出しをめぐるトラブルについて、藤原住職がSNS上にトイレ利用をめぐる投稿をしたのは先月27日。投稿が拡散され集まった情報によると、観光ガイドブックの『るるぶ』や大手登山地図、さらには西宮市のホームページ上など、複数の媒体で寺への確認がないまま「トイレ貸し出し可」といった誤った情報が記載されていたという。

 約2週間後の今月9日の投稿では「檀信徒用に建設したトイレを寺に何の確認承諾も取らず無断で『公衆トイレ』のようにハイキングガイドに掲載・出版されていた出版社に対し4/27に問い合わせをしました。調査の上すぐにお返事しますと言われて10日以上経過しますが何の連絡もありません…再度連絡してみます」とその後の経過を報告している。

 今月23日、藤原住職はENCOUNTの取材に「(JTBパブリッシングからは)『確認しておきます』といった不誠実な対応で2週間以上何の連絡もなく、再度連絡したところ別の担当者から『失礼しました、ホームページ上にお詫びと訂正を掲載します』と言われました。その内容も『寺側の都合で使えなくなりました』というもので、この書き方はちょっと違うなと。再度抗議したところ、最初の担当者の態度がガラッと変わって、平身低頭、真摯に謝罪していただきました」と一連の経緯を説明。登山地図を発行している別の出版社からは、全国の書店の在庫処分など、当初から誠実な対応を受けたという。

 そもそも、なぜ寺の許可なくトイレ貸し出し可といった誤情報が掲載されることになったのか。

「もともと無断で使われていたのですが、40年近く好意で開放していました。それが近年はどんどんマナーが悪くなり、汚したままにしたり、さらには『鷲林寺のトイレは汚すぎる』とネットに書き込まれたりするようになった。そういったことが積み重なって、昨年11月に苦渋の決断でトイレを撤去、滝行用の着替えやめい想を行うための空間として改装しました。以前の情報がそのままとなっているため、『本に載ってるのになぜ貸してくれないんだ』『寺にトイレがないわけないだろ!』と罵声を浴びせられ、参っております」

 JTBパブリッシングブランド戦略室の担当者は、ENCOUNTの取材に「ご住職の投稿の通り、『るるぶ六甲山有馬温泉』のハイキングルート紹介の記事で、鷲林寺様駐車場にWCマークを掲載しておりました。投稿されている画像は2018年3月発行の『るるぶ六甲山有馬温泉』です」と回答。

 誤情報を掲載した経緯については「当時、実地踏査を行った上で現地にトイレがあるという事実の確認のみで掲載してしまいました。掲載にあたって鷲林寺様の許諾を取っておらず、ご迷惑をおかけしたことをご住職に深くお詫びのうえ、弊社ホームページにて訂正文を掲載いたしました。なお、『るるぶ六甲山有 馬温泉』の紙版・電子書籍版は5月に絶版し、書店からの回収手続きを進めています」とし、「本来、正確な情報を提供する立場にありながら、読者の皆様ならびに関係者様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。再発防止に向け、全力で努めてまいる所存です」と謝罪した。

「今回の投稿をめぐり、寺だけでなくコンビニなどからも『大変困っています』という声がたくさん寄せられました。公衆トイレや、好意でお貸ししているトイレなど、もう少しきれいに使っていただけるよう、これを機に社会の啓発になれば」と藤原住職。一人ひとりがマナーを守った使い方を心がけたいところだ。

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