愛車は“還暦”の旧車 床だけで300か所を修復…夫婦で2年かけ自力レストア「家族みたいなもの」

家族5人の“人生の相棒”は、ドイツの旧車ワゴン――。1960年式のフォルクスワーゲン(VW)タイプ2だ。還暦を迎えた愛車を、大規模レストア。夫婦で2年かけて、金属フレームのサビをきれいに落とし、一部がボロボロになっていた床を溶接して修復し、外装もリフレッシュ。また新たによみがえらせた。ともに歩んできたカーライフとは。妻の女性オーナーに聞いた。

1960年式のフォルクスワーゲン・タイプ2は家族のような存在だ【写真:ENCOUNT編集部】
1960年式のフォルクスワーゲン・タイプ2は家族のような存在だ【写真:ENCOUNT編集部】

「長く乗るためにベストなことは何か」 約8割の作業を夫婦で取り組む

 家族5人の“人生の相棒”は、ドイツの旧車ワゴン――。1960年式のフォルクスワーゲン(VW)タイプ2だ。還暦を迎えた愛車を、大規模レストア。夫婦で2年かけて、金属フレームのサビをきれいに落とし、一部がボロボロになっていた床を溶接して修復し、外装もリフレッシュ。また新たによみがえらせた。ともに歩んできたカーライフとは。妻の女性オーナーに聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 ずんぐりとかわいらしいデザイン。車体をモデルにしたラジコンカーを屋根に乗っけると、キュートさがアップだ。窓に貼られた色とりどりのステッカー、開いたドアの上には、青と白の縦じまのおしゃれなシートがかけられており、アウトドア感が漂う。中をのぞくと、木目調の壁紙、クッション、アメリカンなオーナメントの数々。飲み物を置く台はお手製で取り付け、「カフェっぽいイメージを意識しました」と、雰囲気満点だ。

 約20年前に中古で手に入れた旧車。ボディーの一部がめくれるようになってきたことから、レストアに取り組んだ。板金業者のアドバイスをもらいながら場所を借り、冬はマイナス、夏は40度超えの中で作業。コロナ禍の苦難を乗り越え、2年かけて2年前に整備を完了させた。

 エピソードは話せばキリがない。外装は、ボディーのパテ素材が経年劣化して、雨水が入るようになっていた。すべてはがすと、意外なことが判明。「パテをはがしてみると、傷んでいる部分が次々と出てきました。虫歯のようにサビがところどころにあって。それに、どうも過去に追突されたような跡が出てきたんです」という。

 ボロボロになっていた部分を電動カッターで切った。床だけでも「300か所」を修理。新しいパーツを取り寄せて溶接し、フラットになるよう加工を重ねた。金属フレームの状態となった愛車。サビ落としは特に入念に取り組み、「金属の表面を削る作業です。サンドブラストの機械を使って、サビを取り除いていきました」と振り返る。

 最後のつや消しのボディー塗装こそプロに任せたが、約8割の作業は夫婦で行った。「このクルマが走ってきた記録を残したいなと思って、サビがあったボディーの一部分のデコボコをそのままにしているんです。よく見ると、外装の一部はデコボコ感があるんですよ」。こうして、愛車は生まれ変わった。

 作業は本当に大変だった。「終わって初めて、笑って話せるといった感じです。もう2度とやりたくないって、今は笑いながら言えます」。それでも、レストアをする意義は確かにある。「もちろん前の姿もそれはそれでかわいかったのですが、今の姿もすごく好きです。古い車にそのまま乗っている方は多いですが、長く乗るために、このクルマにとってベストなことは何か、ということを考えました。もし、腐った床が抜けたら大変です。フレームを含めてサビはすべて落としたので、耐久性、安全性が高まったと思います。きれいになって安心感がありますよね」を実感を込める。

 このクルマで、家族でスキーやキャンプに行った。サーフィンに行く時にはロングボードも入る。夫の趣味であるバイク購入時に運搬に使ったり、引っ越しでも活躍した。「上の子は初心者マークで運転の練習をしました。ちなみに、上の子は今、自分で買った77年式のビートルに乗っています。実は主人は、ビートルでレースに出ているんですよ。一番下の子が保育園のとき、他のお子さんたちにとっては電車に見えたようで、送り迎えに行くと、『電車が来た!』ってよく言われました」。家族全員が親しんできた。思い出がたっぷり詰まっている。

 もう我が子のような存在だ。「箱入り娘です。4人目の子どもなのか、実は一番上の子なのか(笑)。でも、レストアしてから、ちょっと過保護になっていまして、前はガンガン乗っていたのですが、今は雨の日や雪の日はあまり乗りません。冬タイヤも持っていますが、行っていないです。調子が悪くなると、心配になっちゃって。ここまでくると、このクルマは家族みたいなものですね」。これからも、家族と一緒に、大切な思い出を刻んでいく。

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