【TOP BRIGHTS】堀口恭司が“理念と夢”熱弁「テーマは武道、スポーツ競技、クリーン、若手育成、業界の活性化」

9日、“最強のメジャーリーガー”と呼ばれる堀口恭司が新格闘技団体「TOP BRIGHTS」(9月9日、ぐんまアリーナ)の開催を発表した。堀口といえば先月23日、ハワイ州ホノルルでの「ベラトール(ラテン語で「戦士」の意)295」で予定されていたレイ・ボーグ戦が相手の体重超過で流れたばかりだが、当初の予定通り帰国し、今回の会見に出席したもの。堀口は同団体ではエグゼクティブプロデューサー(EP)を務める(代表は兄の健太氏)。そこで今回は会見後の堀口EPを直撃。新団体発足の経緯を含め、その方向性や展望について話を聞いた。

会見後、個別の取材に応じた堀口恭司EP(右)と兄・堀口健太代表
会見後、個別の取材に応じた堀口恭司EP(右)と兄・堀口健太代表

きっかけは「BreakingDown」

 9日、“最強のメジャーリーガー”と呼ばれる堀口恭司が新格闘技団体「TOP BRIGHTS」(9月9日、ぐんまアリーナ)の開催を発表した。堀口といえば先月23日、ハワイ州ホノルルでの「ベラトール(ラテン語で「戦士」の意)295」で予定されていたレイ・ボーグ戦が相手の体重超過で流れたばかりだが、当初の予定通り帰国し、今回の会見に出席したもの。堀口は同団体ではエグゼクティブプロデューサー(EP)を務める(代表は兄の健太氏)。そこで今回は会見後の堀口EPを直撃。新団体発足の経緯を含め、その方向性や展望について話を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「『BreakingDown』。もちろん興行としてはいいかもしれないんですけど、格闘技のイメージとしてはあまりよくないと思うんですよ、自分はですよ。そういうほうに逸れてほしくないから、この『TOP BRIGHTS』、本物思考の…、日本って武道ってあるじゃないですか。その心を忘れないためにこれを立ち上げる。ま、そこに力を貸すって感じですかね」

 会見上で堀口EPはそう口にし、新団体「TOP BRIGHTS」発足のきっかけについて言及した。まずこの真意について堀口EPに水を向けてみる。

「それは間違いないッスね。(BreakingDownは)良くない影響を与えちゃってるんで、あー、逆に行っちゃったなって」

 そう言って最近何かと話題の「BreakingDown」を引き合いに出しながら「TOP BRIGHTS」の方向性を言葉にする堀口EP。だが、ひと口に「本物思考」と言っても、日本にはRIZINをはじめ、そこに至る組織としてDEEPや修斗、パンクラスといった格闘技団体も存在している。そういった各団体と競合することはないのか。素朴な疑問として、まずこれが頭に浮かんだ。

 この問いに堀口EPは、「別に競合になったからってそこと闘うわけじゃない」と話し、「あくまでも、自分たちの『TOP BRIGHTS』を盛り上げていくっていうカタチ。なんだったら協力して、一緒にどんどん日本を盛り上げられたらいいんじゃないかなと思ってます」と続けた。

 今回が旗揚げ戦となる「TOP BRIGHTS」の開催場所が群馬になったのは、他団体との差別化をはかる意味もあり、堀口の言う「(他団体と)闘うわけじゃない」が本心であることが分かる。群馬といえば東京からだと埼玉県を越えていくイメージになるが、これまで多数の内閣総理大臣を輩出し、かつ日本三大河川のひとつである利根川が流れる群馬県は、首都圏への水量、電力・上水道の供給源になっている。堀口が生まれたのは高崎市だが、今回は高崎市に隣接し、県庁所在地もある32万人が住む都市・前橋市にある、ぐんまアリーナでの開催だ。

「もちろん差別化もありますし。群馬県ってあんまり(格闘技に対して)盛り上がってないイメージがあるじゃないですか。でも、せっかく群馬県の(役所の)人とかと仲良くなったし、(堀口は)ぐんま特使(※)なんで、そういうのもうまく使ってやっていきたいなっていうので群馬に決めましたね」

※ぐんま特使とは、群馬県にゆかりのある著名人(芸能人、文化人、スポーツ選手等)がメディアやSNS等を通じ、群馬県の観光資源および魅力を広く発信していくことを目的としている制度。群馬県出身の総合格闘家である堀口は、昨年10月4日、山本一太群馬県知事からこれを正式に委嘱(いしょく)され、以降、さまざまな機会をとらえて、群馬県の魅力を積極的にPRしていく役目を担った。

TOP BRIGHTS発足を発表した堀口恭司EP(右)と兄・堀口健太代表
TOP BRIGHTS発足を発表した堀口恭司EP(右)と兄・堀口健太代表

出てほしい選手は現役ベラトール王者

 団体運営を手がけていくに際し、堀口代表と堀口EPにひとつ確認しておきたいことがあった。例えば最近は、カラダにタトゥーを入れた選手が増えた。「TOP BRIGHTS」ではこれをどう考えるのか、である。

「あまり好きではないですけど、外国人選手とかだとある程度はしょうがない部分が出てくるんじゃないですかね」(堀口代表)

 これに対し、堀口EPは具体例を挙げながら独自の見解を述べる。

「まあ、でもあれですよね、それはもうやっぱ仕事なんで。例えば日本の地上波に出る試合ってなったら歓迎されないし。だから、しっかりとバックグラウンドチェックをして、クリーンな団体で続けていきたいなと思って。そうじゃないとスポンサーがつかなくなっちゃうから」

「TOP BRIGHTS」としては、例えばUFCにスポーツウェアメーカーのReebok(リーボック)がスポンサードしていたように、そういったメーカーのイメージにも通ずるクリーンさを打ち出していきたいのだろう。

 実際、出てほしい選手は頭にあるのか。この問いに堀口EPは「何人かいますね」と答え、具体名を挙げた。

「ま、そうですね、やっぱアグレッシブに攻められる選手ですかね。例えば、女性で言えばあれですよね、クリスチャン・サイボーグ」

 クリスチャン・サイボーグとは現ベラトール世界女子フェザー級王者。ムエタイ仕込みの打撃とブラジリアン柔術からなる独自の戦法で、UFCや Invicta FC、Strikeforceでも王者に君臨した実績を持つ、女子のMMAファイターでは第一人者的存在のファイターだ。もし彼女が「TOP BRIGHTS」に参戦すれば、業界的には相当の激震をもたらすだろうが、現実論としてファイトマネーの金額がベラボーに高いだろう。実際、堀口EPも「億単位ですよ」と言って苦笑いしたが、その顔には「さすがに今回は手が出せない」と書かれていた。

 とはいえ、堀口EPには大きな夢がある。現在、堀口EPはファイターとしてはベラトールの契約下にあるが、例えば年末の「RIZIN」で実施された、RIZINVSベラトールの全面対抗戦は、RIZINは5戦全敗という結果が出ている。つまり、それだけの実力差が存在していることが明らかになったわけだが、堀口EPとしては、日本人選手のレベルアップを目的に、「『TOP BRIGHTS』がデカくなってきたら、金銭面や海外へ出向く際のビザの取得を含めて、若手の育成をやっていきたいと思っています」と話した。

 もちろん、そう簡単にそうなっていくと思ってはいない。なぜなら、これまでも弟子入りを希望する連絡をもらったことがあったが、結果として誰一人も残ってはいないからだ。

「続かないッスよ。結構、インスタとかでもメッセージがきますけど、誰も続かないッス。今、自分はアメリカにいますけど、日本でも続かない人間がアメリカに行って続くわけがない」

 この発言から分かるのは、かつて堀口が「日本にいたらこれ以上は強くなれない」と一念発起し、渡米してATTでの衣食住を含めた一切を委ねたように、強くなるためにはアメリカでの修行が不可欠だと実感していることだろう。

 それでも、ファイター・掘口恭司は、山本“KID”徳郁の内弟子になることで誕生することができた。要は、KIDから産まれたのが堀口になる。この発言に対し、堀口EPは異論を唱えた。いや、異論ではないが、全肯定するのは違う、という感じだろうか。

「いや、自分はもちろんKIDさんのお世話になりましたけど、KIDさんから生まれたわけではないです。あくまできっかけのひとつだけだと思ってますね」

いかにスポーツ競技にできるか

 もちろん、決してKIDに感謝していないわけではない。いや、KIDがいたからこそ、堀口はファイターとして覚醒することができた。これは間違いないが、堀口EPの言葉の真意を深掘りすると、もっとその前の段階の話であることが分かる。

「自分は田舎にいる時から、この職業で食っていくって決めてましたから。だからそこは最初から他の人とスタート地点が違うっていうか。もし食っていけなかったらホームレスでもなんでもなってもいいっていうくらい、腹をくくってましたよ。だからそのくらいの気概がある人がいないと、 自分も弟子を取ろうとかも思わないしって感じですね。でも大概そんな人はいないですからね」

 この言葉は、さすがに裸一貫というか、バッグひとつで群馬から上京し、さしたるコネがあったわけではないにも拘らず、「最強のメジャーリーガー」と呼ばれるまでに成り上がった男の重みが感じられる物言いだった。なにせMMAにおいては、UFCタイトルに挑戦し、RIZINとベラトールの二冠王に君臨するなど、掘口恭司以上の実績を持った日本人ファイターは存在しないのだから。

 しかしながら「TOP BRIGHTS」が、自身のファイターとしての夢を実現させた堀口恭司がEPを務めると思えば、自然と期待値が増してしまう。この後、対戦カードが公にされた時に、できれば「えっ!?」という周囲からの落胆の声は聞きたくないが、そこはどう考えているのか。

「たとえ『えっ!?』っていうカードだったとしても、運営から盛り上げる感じで言いますよ。『お前らちゃんとやれよ。面白い試合じゃないとすぐく首切るからな!』って」

 堀口EPはそう答えた後、「ガハハハハ!」と豪快に笑った。

 堀口EPは言う。

「やっぱ選手が必死に作ってくものなんで、闘いっていうのは。 だから本当にやる気のある選手しか残らないし、やる気のあるヤツしか取らないよっていう風な姿勢でいきますね」

 そのために必要なものは何か。

「まずは地道な努力です。変に目立つとかトラッシュトークもいいけど、それができる選手とできない選手がいる。だから強い選手って結構静かな方が多いし人気が出なかったりする場合もあるけど、そういうのをうまくこっちがプロモーションしてあげたいなと思いますね」

 最近の風潮でいえば、「見る側」にとっては、トラッシュトークがないよりはあったほうが分かりやすい。だから安易にそれを求めてしまう。そこを、いかに堀口の言う「武道」と両立させるか。そのサジ加減は意外と難しいどころか、ひと筋縄に行かない可能性もあるが、堀口EPからすると、その考え方そのものに違和感を持っているようだ。

「いや、そう考えるんじゃなく、そこはうまく調整して、競技として、できれば ちゃんと総合格闘技MMAっていうのが、本当に野球とかサッカーみたいになれば。煽り合いをフューチャーしなくてもいいのかなって思うぐらいに、この団体をしていきたしんです。いまそこですね、自分の課題は、どうやってスポーツ競技にできるか」

 興行である以上、試合前のトラッシュトークはあってこそ盛り上がる、という考え方もあるが、とくに憎くもない相手に初対面で「この野郎!」となるのはどうなのか、という声もある。それがいいか悪いか、ではなく、興行とは常に二律背反にも似た概念がついて回る。

「ひとつの見せ方なんで、そういう選手がいてもいいと思うんです。でも、あくまでも、こっちはちゃんとした運営をして、クリーンですっていうのを見せられれば別に問題はない。もちろんそういう(トラッシュトークなどの)要素も必要な部分もある。格闘技なんで、見ている人を熱くさせなければいけないわけだから」

 堀口の話を聞く限り、「見る側」も視野に入れながら、決して「武道」であることからは離れない、といった確固たる信念を感じる。

「来年は3回くらいは大会をやりたい」

 全ては旗揚げ戦を終えてみないと分からないのが本音だろうが、今後の展望をそう話す、堀口EPとその兄・堀口健太代表。何事も初めてだけに不確定要素がついて回るが、そこは堀口の持つ、持ち前のチャレンジ精神と、圧倒的な自己実現能力の高さに期待したい。

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