江口洋介、音楽活動を再開したワケ 森高千里との夫婦共演は「いつかあるかも」

江口洋介が音楽活動35周年を迎え、自ら作詞、作曲した『恋をした夜は』(1992年)、『愛は愛で』(94年)など88曲をサブスク解禁した。振り返ると、江口は若くして、役者、ミュージシャンの双方で評価されたが、30代、40代の約20年間は音楽活動を休止していた。その理由とは……。一方で記念イヤーになり、音楽への情熱が高まってきた今の思いを聞いた。

ミュージシャンとしての一面を見せた江口洋介【写真:荒川祐史】
ミュージシャンとしての一面を見せた江口洋介【写真:荒川祐史】

35周年記念で88曲をサブスク解禁

 江口洋介が音楽活動35周年を迎え、自ら作詞、作曲した『恋をした夜は』(1992年)、『愛は愛で』(94年)など88曲をサブスク解禁した。振り返ると、江口は若くして、役者、ミュージシャンの双方で評価されたが、30代、40代の約20年間は音楽活動を休止していた。その理由とは……。一方で記念イヤーになり、音楽への情熱が高まってきた今の思いを聞いた。(取材・文=福嶋剛)

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――江口さんの音楽との出会いは。

「僕の家に住んでいた叔父が、『超』の付くビートルズマニアでした。メンバーのポスターとグッズだらけの部屋で朝から晩までビートルズを流していていたんです。僕はその影響で洋楽好きになり、ギターが弾きたくて中学生の時、お茶の水の楽器街でモーリス製のアコースティックギターを買いました。最初はイーグルスの『ホテルカリフォルニア』を必死で練習していました」

――1987年に映画『湘南爆走族』で俳優活動を始め、翌年88年にシンガーとしてシングル『ガラスのバレイ』でデビューしています。当初から、両方の活動をすると決めていたのでしょうか。

「あの頃は、いただける仕事に全力で向き合うことで精いっぱいでした。『自分は役者なのか、歌手なのか』とか、深くは考えてなかったです。どんな仕事もいただけること自体うれしかったですし、やってみるとどれも新鮮で面白かった。最初のアルバムは、歌手として作家さんに書いてもらった曲を歌う企画的な作品でした」

――初めての音楽制作の感想は。

「スタジオでデモテープからレコーディングまでの工程を見ながら、『こういうふうに音楽を作っていくんだ』と思いました。と同時に『これをイチから自分でやってみたら、もっと面白いだろうな』とも思いました。ずっとギターを弾いてきましたし、『じゃあ、自分で(曲を)作ろう』と決めました。周りには『役者なんだから(イメージ的にも)作家に頼んだ方が良いんじゃないか』と言われていましたが、生意気だったから、『自分でやりたい』と言ったんです。今、振り返るとよくそんなわがままを許してくれたなって思います(笑)」

――自分で最初の1曲を作って何を感じましたか。

「宅録用のカセットレコーダーを買って来て、自宅でギターを弾きながら必死にデモテープを作りました。それをディレクターに聴かせたら『いいじゃん!』と言ってくれて、そこにドラムやベースを重ねて1曲ができあがった時ときは感動しましたし、『大変なことしちゃったな』と思いました。でも、役者とは違う『自分』を形にする作業が楽しかったですね」

――江口さんの作品は、多くの人がなじみやすいメロディーが特徴だと思います。

「うれしい感想です。僕はメロディーを先に作って、そのイメージから歌詞を書いていますが、できるだけメロディーが先に届くような言葉を選んでいます」

――サビのメロディーが印象的だったのは、缶コーヒーのCM曲にもなった『恋をした夜は』です。

「今までロックサウンドの曲が多かったので、『そろそろミディアムテンポでサビ(のメロディー)一発で人に届けられる曲を作ろう』と思いました。でも、そのメロディーがなかなか思いつかなくて苦労しました。家で飯を食っているときも、寝ているときも、ずっとギターを抱えたままで、あるときにやっとメロディーが下りてきて、『これだ!』と。そこから一気に作りました。CMソングになって人の家のテレビから自分の曲が流れてくる経験は初めてだったので、『こうやって曲が届いていくんだ』と思って感慨深かったというか、何とも言えない気分でした。あの頃はプレッシャーもありましたけど、役者として少し顔を覚えてもらった時期だったので、『今度はミュージシャンとしてもっと知ってもらいたい』という貪欲さがありました。それが自分のバランスとして良いのか悪いのか分からなくなっていったんですが、まあ、若かったですね(笑)」

――バランスとは。

「当時は兄貴的な等身大の自分でいられる役が多かったので、撮影現場に行けば自然にミュージシャンから役者に切り替わりました。ただ。30代になって演じる役柄も難易度が上がってきて、『音楽をやりながら社会派のシリアスな演技ができるのか』と自問自答した時、『ちょっと難しいだろうな』という答が出てきました。デビューした頃は深く考えていませんでしたが、ようやく自分に足りないものが見えてきたんです」

――それが、99年から音楽活動を休止した理由ですね。

「先輩方の演技を見ていると、『俺って薄っぺらいな』って思ったんですよ。やっぱり、『役者で飯を食っていかないとダメだ』という自覚が芽生えた時期でした。ちょうどレコード会社と契約も切れるタイミングでしたし、結婚もあったし。そういうのが重なって歌う余裕がなくなりました」

――当時から『音楽活動は機が熟したときに再開』という思いはありましたか。

「もちろんです。『また音楽をやりたい』と思っていましたし、『やり始めたらきっと止まらないだろうな』とは思っていました。だからこそ、『今はじっくり腰を据えて役者と向き合おう』と思ってやっていましたが、今度は腰が重たくなって立ち上がれなくなってしまった。『こんなに音楽をやることって大変だったかな』と。たまにイベントに呼ばれたりすると、すぐに火がつくんだけど、持続させるのが難しくて、『そこまで無理をして音楽をやるもんじゃないな』と思ったら、20年近くたっていました」

――オフの日も音楽を止めていたのでしょうか。

「家ではやっていましたよ。自宅にスタジオ部屋があって、いつか今の自分の音を出したいと思って、ギターの練習は欠かしませんでした」

ようやく役者とミュージシャンのバランスが取れるようになった【写真:荒川祐史】
ようやく役者とミュージシャンのバランスが取れるようになった【写真:荒川祐史】

5月24日、6月21日にアニバーサリーライブで新曲披露へ「いいタイミング」

――そして、2016年。東京・下北沢のライブハウスでステージに立ちました。約20年ぶりでした。

「ようやく落ち着いてライブができる状況が整い、自分たちで会場を抑えてやってみました。初めてライブをやったときの感覚がよみがえってきてとても新鮮でしたね」

――芝居を演じることとは違う感覚ですか。

「明らかに芝居の空気感とは違うものでした。二足のわらじに限界を感じた20年前とは違い、歌うことで演技にプラスになり、演技をすることで歌にもプラスになると思いました。『これからはできるときにやろう』。やっとそんな気持ちになれましたね」

――お子さんたちも会場に駆けつけたと聞きました。ステージで歌う父親を初めて見たわけですね。

「娘も息子も小さい頃はよく一緒に音楽を聴いたり、歌ったりして、僕のCDやYouTubeの動画をチェックしていました。なので、父親が音楽をやっていたことは分かっていました。2人とも大人になりましたけど、今でもライブがあると来てくれるのでうれしいです」

――子育てが落ち着いてから、奥さまの森高千里さんも音楽活動を再開されました。

「そうですね。お互いに無理なくどれだけ長くやり続けられるか。今はそんなタイミングなのかもしれません。彼女はすごくいい感じで(音楽活動を)やっているし、楽しそうですよ」

――ネット上では「夫婦共演はあるのか」の声も出ています

「よく言われます(笑)。本人たちは全く意識していなくて、これから互いに歳を重ねていって、いつか(ドラムを)たたいてもらうようなこともあるかもしれないですし。それはもう、成り行きですね」

――CMでの共演はあります。2004年、ジャワカレーのCMが話題になりました。

「ありましたね。もともと夫婦共演で話題のCMだったので、話をいただいたときは特にお互いに抵抗はなく、楽しく出演させてもらいました」

――そして、江口さんの音楽活動は今年35周年。アニバーサリーライブの開催も決まっています。

「5月24日は渋谷のライブハウスで、6月21日はビルボードライブ東京でそれぞれタイプの違うライブを予定しています。バンドメンバーは僕から声をかけて集まってもらい、昔の再現ではなく、今の新しいステージを見せたいと思っています。ライブハウスでは熱いステージを考えていますし、ディナー形式はアコースティックを交えてしっとりとした歌も歌いたいです。新曲も4曲作ったので、会場で披露したいと思います」

――ミュージシャンとして本格的な活動再開宣言ですね。

「35周年という節目で配信も始まり、とてもいいタイミングです。僕にとっての『再スタート』ですね」

□江口洋介(えぐち・ようすけ)1968年1月1日、東京都生まれ。86年に俳優デビュー。88年、『ガラスのバレイ』で歌手デビューし、『恋をした夜は』(92年)や『愛は愛で』(94年)など代表曲をリリース。5月24日に東京・渋谷のSpotify O-WESTで、6月21日に六本木のビルボードライブ東京で『BE HERE NOW ~ 35th Anniversary ~ Yosuke Eguchi Live 2023』を開催する。

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ライブ情報
「BE HERE NOW~35th Anniversary~Yosuke Eguchi Live 2023」

会場:Spotify O-WEST(東京・渋谷)
日程:2023年5月24日 午後7時開演

会場:ビルボードライブ東京(東京・六本木)
日程:2023年6月21日
1st ステージ 午後5時30分開演
2nd ステージ 午後8時30分開演

詳細は公式HPへ:https://www.universal-music.co.jp/eguchi-yosuke/

ヘアメイク:中嶋竜司(HAPP’S)
スタイリスト:島津由行

衣装協力
レザージャケット・ブーツ / イサムカタヤマ バックラッシュ
ジーンズ / デンハム・ジャパン

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