コロナ禍で一変したニューヨーカーの暮らし(後編) 「9・11」とは異なる不安とは
毎日午後7時に高まる結束、心が繋がる「時間帯」
今まで感じたことのない不安と恐怖、孤独と戦う日々。そんな中、どんな困難に置かれても前向きに取り組もうとするニューヨーカーの強さが垣間見える「時間帯」がある。
市内各地で午後7時になると、拍手や口笛が響いてくる。元々、医療従事者や救急隊員らフロントライン・ワーカー(最前線で働く人々)に感謝を伝える目的で始まった。自宅の玄関先や窓から拍手と口笛を響かせたり、フランク・シナトラが歌う「ニューヨーク・ニューヨーク」など同市がテーマの音楽が流れてくることもあり、大きなムーブメントとなっている。
筆者もこの活動に触発され、自宅の玄関前で妻と一緒に「ニューヨーク・ニューヨーク」を流し、通りの向かいにあるスーパーで働く従業員や時々通りかかるバスへ拍手を送るようになった。外出規制が出てから近所の人の姿を見る機会は少なかったのだが、徐々に参加者が増え、今では同じ通りに並ぶ全ての住人が時間になると玄関先で拍手を送るようになった。それに対して、通りがかったバス運転手や消防車がクラクションを鳴らして応えたり、スーパーの従業員が店外に出て手を振ることもある。1日のほんのわずかな時間だが、ニューヨークに一緒に暮らす人たちと心が繋がったような気がして不安が小さくなった。
オーバーベイさんは「私の住む地域でも拍手や歓声が日増しに大きくなっているように感じます。午後7時に窓を開けて人々の拍手と歓声を聞くことで、この街の結束力を確認できるのです」