コロナの影響で売上激減も キーワードは「人流」、分析会社社長が目指すは世界進出

2020年から全世界で猛威をふるった新型コロナウイルス。混乱は広告業界にも大きな影を落とした。現在、位置情報を基に人流分析システムの開発・広告サービスの展開を行うクロスロケーションズ株式会社(東京)代表の小尾一介氏は、「今が一番苦労している」と暗闇であえいでいる。それでも徐々に、確実に状況は好転。これまで価格.com、ツイッタージャパン、グーグル合同会社など、巨大IT企業を渡り歩いた経営者に、思い描くこれからについて聞いた。

クロスロケーションズ株式会社代表を務める小尾一介氏がこれからについてを語る【写真:ENCOUNT編集部】
クロスロケーションズ株式会社代表を務める小尾一介氏がこれからについてを語る【写真:ENCOUNT編集部】

会社立ち上げのきっかけは毎週の話し合いから

 2020年から全世界で猛威をふるった新型コロナウイルス。混乱は広告業界にも大きな影を落とした。現在、位置情報を基に人流分析システムの開発・広告サービスの展開を行うクロスロケーションズ株式会社(東京)代表の小尾一介氏は、「今が一番苦労している」と暗闇であえいでいる。それでも徐々に、確実に状況は好転。これまで価格.com、ツイッタージャパン、グーグル合同会社など、巨大IT企業を渡り歩いた経営者に、思い描くこれからについて聞いた。(取材・文=関臨)

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 価格.comの事業育成、ツイッター、グーグルと世界的なIT企業で成果を挙げてきた小尾氏。13年からは、インド系の広告配信会社『インモビ』での日本支社長、さらには米シリコンバレーの投資会社『コースラ・ベンチャーズ』で日本からの出資受け入れの橋渡し役を務めた後、現在は『クロスロケーションズ』社の代表取締役としてらつ腕をふるっている。

 会社立ち上げのきっかけは、位置情報からその場所やタイミングに最も適したスマートフォン(スマホ)広告を配信するグローバル企業の『ニアーインテリジェンス』社に日本での事業のアドバイスをしたことだった。

「『ニアーインテリジェンス』の日本のメンバーと毎週話をしている中で位置情報の使い方はひょっとして広告以外もあるのでは? と思いつきました。そもそも位置情報データというのは、1台1台の端末のIDや緯度経度、情報が発信された時刻が把握できます。利用者側は意識していませんが、使われているアプリの会社側からすると100万人がそのアプリを使用していたら、100万人分のデータが来るわけです。リアルな世界での人々の動きが分かる情報ですので、広告にはもちろん使用していましたが、分析に使用したら非常に使えるデータになるのではと思ったのです」

 広告主から依頼されて、スマホの位置情報から、今いる場所や時間に適した広告を配信。さらに独自で開発したシステムで分析した人流データを店舗や企業に提供することで収益を得る。

 18年に設立してから、人の流れを分析するシステムを自分たちで作ろうという目標の下、ベンチャーキャピタルや投資家たちを訪ねて出資を集り、経営を軌道に乗せることに成功した。

 だが、ここまでの道のりは決して簡単ではなかった。20年から猛威をふるっていた新型コロナウイルスが大きな壁になったのだ。「本来は今頃には株式公開したかったところでしたが、新型コロナウイルスの影響で広告ビジネスがほとんどなくなってしまいました。街から人が消え、店も閉店している状態になり、広告主からすると広告を出しようがない状況になったのです。同業者では撤退を余儀なくされる企業も出始め、弊社でも広告部門の売り上げが激減してしまいました」。

「成長曲線には乗りつつある」…会社としての未来を明かす

 華々しい経歴の中でも今が最も苦労していると笑った小尾さん。しかし、悪いことだけではなかったという。「20年4月に緊急事態宣言が初めて発令され、政府から『外出8割自粛』と号令がかかったわけですが、本当に人出が減っているのか誰も分かりませんでした。しかし、スマートフォンから位置情報が取得でき、それを分析することで街の実際の人出がグラフという形で可視化できるということがわかると、『人流』という言葉が生まれ、そのデータの認知度が高まっていきました。現在では人流のデータをいろんな会社がどのように事業に生かしていくかを考えていくフェーズに入ったと思いますので、我々としては説明しやすくなっていますし、売りやすくなっていっています」。コロナ禍では予期せぬ恩恵も受けた。

 小尾さんは会社のこれからをどう考えているのだろうか。

「この会社は製品の使い方や、顧客もはっきりしてきたので成長曲線には乗りつつあるかと思っています。使う業種の分野からするとお店を経営しているのではない場所、例えば役所などでも人の流れの情報は必要になるため、ありとあらゆる場所で使われ、基礎的な情報として使われると思います」。

 いくら人流解析のシステムやノウハウを持っていても、それだけでは有効な使い方はできない。「ただ一つの方向性としてあるのは、データは過去のものです。なぜこの時間帯、この曜日に人の流れが起きているのか、といった部分がわかりません。だから天気や購買、交通といった他のデータとリンクさせることで今まで見えなかった漠然としていたものがデータとして、より明確に見えるようになります。そういったものを提供できるような会社になっていくべきだと思います。そして、既に人流解析の独自エンジンを持っているのでアジアなど世界に進出していくことも目指していきます」と未来図を描いた。

 多忙を極める中、個人としての目標も聞いた。

「とても考えられる状況ではありませんが、コロナの影響で3年間、やっともともと考えていた成長路線に乗せることができるのではないかと見積もっています。まずはこの会社を2~3年の間にIPO(新規上場株式)していくことが短期的な目標です。その後の個人的な目標はそのあと考えようかなと思います」と先を見据えた。

■クロスロケーションズ株式会社
2018年1月設立。「多種多様な位置情報や空間情報を意味のある形で結合・解析・視覚化し、誰でも活用できるようにすること」をミッションとし、位置情報ビッグデータをAIが解析・視覚化する独自技術である「Location Engine」の開発とビジネス活用クラウド型プラットフォーム「Location AI Platform(R)」、クラウドサービス「人流アナリティクス(R)」などの開発および、人流データの活用による企業のビジネス拡大を支援する「Location Marketing Service」の提供により、“ロケーションテック”を推進している。

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関臨

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