劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』 なるか「死者ゼロ」 光る医系技官・音羽の魅力
21年7月期に放送されたTBS系連続ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』がスケールアップし、劇場版として公開された。「1人も死者を出さない」という使命のもと、オペ室を搭載した大型車両(ERカー)で現場に駆け付け自らの危険を顧みず患者の命を救うために奮闘する医療チーム『TOKYO MER』の活躍をダイナミックに描いている。
医師の友情、夫婦愛、医療従事者への敬意もダイナミックに描く
21年7月期に放送されたTBS系連続ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』がスケールアップし、劇場版として公開された。「1人も死者を出さない」という使命のもと、オペ室を搭載した大型車両(ERカー)で現場に駆け付け自らの危険を顧みず患者の命を救うために奮闘する医療チーム『TOKYO MER』の活躍をダイナミックに描いている。
(※以下、内容に関する記述があります)
劇場版のメイン舞台は、横浜のランドマークタワーとなっている地上70階建ての超高層ビル。突然の大爆発によって上層階に取り残された193人の命を救うため『TOKYO MER』チーフドクター・喜多見(鈴木亮平)が一刻も早い現場出動を主張するが、厚生労働大臣が新設したエリート医師集団『YOKOHAMA MER』の鴨居チーフ(杏)は「安全な場所で待っていなくては救える命も救えなくなる」と正反対の信念だ。こうした『TOKYO MER』と『YOKOHAMA MER』の激突が、先の読めない展開を予想させ観客をハラハラさせる。
さらに、厚生労働省医政局MER推進部統括官で医系技官の音羽尚(賀来賢人)と鴨居チーフは浅からぬ因縁があり、こちらもストーリーの重要なポイントとなっている。喜多見の判断、鴨居の判断、そして音羽の判断……。この3者の判断は医療現場で日常的に起きていることをそれぞれ代弁しており、いずれの主張にも共感できるという展開が巧みだ。
ビルの爆発は次々と連鎖し炎と煙で救助ヘリも近づけないという絶望的な状況。その中に喜多見の妻・千晶が取り残されていることが判明する。千晶は、妊娠後期で切迫早産のリスクを抱えている。一刻を争う緊急事態に喜多見、鴨居、音羽はどう立ち向かうのか。ストーリーは終盤にかけて怒涛の展開を見せ、次から次へと衝撃的な見せ場がスクリーンに登場する。
すべての命を救うために立ち向かった喜多見と千晶は無事脱出できるのか。喜多見の脳裏に最愛の妹・涼香を亡くした悲劇がよぎる場面や千晶の決死の言葉が涙を誘う。今まさに生まれようとしている新たな“命”が最後の最後まで観客の願いを引っ張っていく。ドラマに引き続き医療従事者へのリスペクトが込められているところにこの映画の意志を感じさせる。
それにしても今回の劇場版は喜多見の超人的な活躍に目を奪われたが、ストーリーのもう1つのカギとなっている音羽の活躍も光っておりカッコいい。官僚の務めとはこういうものだろうと、あらためてそのキャラクターに魅せられるはずだ。