映画館は感動する場所のはずが…180度価値観が変わった映画界でどう生きるのか

行定勲監督が演出し、柄本佑、有村架純ら豪華キャストが出演したショートムービー「きょうのできごと a day in the home」がYouTubeで期間限定配信中だ。新型コロナウイルス感染防止のために「お家にいよう!」と呼びかける内容。今のタイミングで、作品を発表した行定監督の思いとは。

ショートムービー「きょうのできごと a day in the home」
ショートムービー「きょうのできごと a day in the home」

行定勲監督、単独インタビュー・前編、ショートムービー「きょうのできごと a day in the home」配信中

 行定勲監督が演出し、柄本佑、有村架純ら豪華キャストが出演したショートムービー「きょうのできごと a day in the home」がYouTubeで期間限定配信中だ。新型コロナウイルス感染防止のために「お家にいよう!」と呼びかける内容。今のタイミングで、作品を発表した行定監督の思いとは。

――コロナで、行定さんの仕事はどんな影響が出ていますか。

「僕の映画『劇場』(山﨑賢人、松岡茉優主演、4月17日公開)は公開1週間くらい前に突然、延期が決まりました。僕らのチームはギリギリまで悩んだんです。そうしたら緊急事態宣言が発令され、メインの映画館が休業を決めました。その時はまだ地方の映画館は空いていたので、上映するかどうか悩んだんですけどが、数日経ったら、緊急事態宣言が全国に広がり、結果的には延期にするしかなかった……。もう一つの『窮鼠はチーズの夢を見る』(大倉忠義、成田凌主演、6月5日公開)も公開延期を発表しました。何をどうすればいいか、分からなくなってしまった。果たして、この映画が映画館でかけられるのだろうかを含めて、協議が始まるんですよ。そんな状況の中で、どういう道をたどれば、みんなが苦しまないで、映画を待ってくれるみんなにちゃんと伝えられるか。今はどのような形で映画を届けられるかということを模索しています」

――映画には莫大な宣伝費を使いますから、その打撃も大きいですよね。

「1度、使ったお金が全部水の泡になってしまいました。映画館というのは、本来は映画を見て、感動する場所です。なのに、このコロナ禍の中では、『劇場に行ったら、どう思われるだろうか』と思う人もいるだろうし、『お前はまるで人のことを考えてない。無責任だ』と言われてしまう。ただ、映画を観に行っただけなのに。心から笑ったり、心から感動したっていうことを、SNSにもあげられない。それが今の僕らの状況です」

――映画だけではなく、監督がディレクターを務める「くまもと復興映画祭」も延期を決めました。そんな中、この企画はどのように生まれましたか。

「くまもと復興映画祭(4月開催)も2度目の延期を決めました。4月中旬、その打ち合わせ後に、脚本家の伊藤ちひろさんから『今、映画人たちはコロナの中、沈黙している。それは俳優さんたちも同じ。ちゃんと協力できれば、普通だったら、ありえない顔合わせで映画が作れるんじゃないか』という提案をいただきました」

――伊藤さんは監督と同じ会社に所属する脚本家ですね。映画「世界の中心で、愛をさけぶ」「今度は愛妻家」「つやのよる」などでコンビを組んでいます。

「僕はくまもと復興映画祭でも、『うつくしいひと』『うつくしいひと サバ?』など映画を作って、観せて繋げていくというやり方を続けてきました。このアイデアに『なるほど』と思い、こういうときだからこそ、映画の力を発揮させたいと思いました」

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