要潤「自分のピークは40代」 芸歴22年、人生最大の挫折を乗り越えてたどり着いた現在地

劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(4月28日公開、松木彩監督)で、ドラマ版に続き、東京都消防庁即応対処部隊・部隊長、千住幹生役を演じたのが要潤(42)だ。困難や逆境にも怯まず、立ち向かう人物で、共通点も感じながら、「見習いたい」と語る。そんな要の最大の逆境とは?

インタビューに応じた要潤【写真:舛元清香】
インタビューに応じた要潤【写真:舛元清香】

『TOKYO MER』出演の要潤が見据える新たなステージ

 劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(4月28日公開、松木彩監督)で、ドラマ版に続き、東京都消防庁即応対処部隊・部隊長、千住幹生役を演じたのが要潤(42)だ。困難や逆境にも怯まず、立ち向かう人物で、共通点も感じながら、「見習いたい」と語る。そんな要の最大の逆境とは?(取材・文=平辻哲也)

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 2001年、『仮面ライダーアギト』の氷川誠(仮面ライダーG3)役で俳優デビューし、以降、幅広い役を演じてきた要。やっぱり、ヒーロー的な存在がよく似合う。同ドラマはオペ室を搭載した大型車両で事故や災害現場に駆け付ける都知事直轄の救命医療チームの活躍を描くもの。要が演じたのは、MERチームと連携する消防庁の即応対処部隊長、千住幹生だ。

「千住はドラマのときはMERに対してちょっと敵対意識があったんですけども、映画に関しては初めから協力する関係になっています。ドラマから1年ぐらいたち、共演者の皆さん、スタッフの皆さんと絆がしっかりとできた状態で、撮影が始まったのはよかった。特に僕たち消防隊は装備が多いので、余計な神経を使わずにお芝居に集中できるのはありがたいんですよね」

 消防服や装備は想像以上に重いものだという。それが演技の助けにもなった。

「消防服は、僕ら俳優にとっても、現場に出る戦闘服みたいな感じです。身につけているものにはうそがないので、自分の芝居もうそがつけないなというか、スイッチが入ります。災害現場のシーンは足場も悪く、狭いし、埃っぽい。叫び声や爆発音もあって、スタッフさんの指示が聞こえないこともあるので、感覚で芝居を始めることもあります。こういう現場は『TOKYO MER』くらい。独特ですね。炎のシーンはCGが半分くらいですが、完成した作品を見て、こうなっているのかと驚いたりもします」

 現場では実際の消防関係者が監修としてサポートしたそうで、部隊長の役割なども頭に入れて、役に臨んだ。

「救助の仕方などは逐一、現場で聞きながらやりました。実際の災害では、映画のような規模の災害に出会ったことはないそうですが、隊長というのは絶対的存在だそうです。隊長が全てを指揮して、全ての責任を取る。隊員を使いながらも1番危険なところに真っ先に行くそうです。部隊は隊長がいなくなったら、機能しない。それくらい大切な存在みたいですね」

 劇場版ではTOKYO MERチームとのタッグは強力になり、千住はより頼れる存在に見える。千住の性格は要にも、似たところはあるのか。

「千住はとにかく真っすぐ。熱い部分は自分も持っています。熱くなると、突き進むときもありますし、逆境が来たときに乗り越えようとする姿勢は似ているところもありながら、見習いたいと思っています」

 自身の逆境はいつだったのか。「いっぱいありますね。下積み時代もありましたが、学生時代が1番だったと思います」と振り返る。

 要は香川県育ち。小中高と陸上を続け、オリンピック出場も夢見ていた。しかし、高3のときの地区大会決勝の400メートルハードル競技で転んで以来、スランプに陥ってしまった。

「人生がシャットダウンされたような感じでしたね。学生のときって、ほかに逃げる選択肢がないじゃないですか。大人になってからは逆境からうまく逃げられたり、自分をコントロールできたりしたんですけど、このときは本当にきつかったですね。これを超えるものはいまだにないです」

デビュー作『仮面ライダー』で俳優の礎を築いた要潤【写真:舛元清香】
デビュー作『仮面ライダー』で俳優の礎を築いた要潤【写真:舛元清香】

要潤にとって特別な作品「仮面ライダーなくして、今の俳優人生はなかった」

 その苦い思い出もあって、今の“俳優・要潤”が存在するのだろう。もう一つの夢だった俳優を志し、20歳のときに『仮面ライダーアギト』でデビュー。ここで俳優としての礎を築いた。

「特別ですね。仮面ライダーなくして、今の俳優人生はなかった。演技のレッスンを受けたわけでもなく、俳優の経験もない状態で1年間という長丁場に付き合ってくださったスタッフの皆さんには、本当に感謝しています。お芝居の基本を教えてもらい、それが今も活かされています」

『仮面ライダー』は放送も長く、撮影も1年がかり。

「同じ役をやると、本当に突き詰めていける。役者にとって、こんな幸せな時間はほかにないんじゃないですか。中には1日で終わってしまう現場もあります。基本的に連続ドラマは3か月ですけど、掘り下げきれない部分があって、終わったときに『あ、もうちょっとこういう風にやっときゃよかったな』と後悔ばかりが先に立ってしまう。でも、仮面ライダーのときはやりきったなという感覚でしたね」

 俳優生活は22年。今、新たなステージに向かっている。

「自分のピークは40代だなって、なんとなく思っていて、自分のやりたいお芝居とやれるお芝居がだんだん一致してくる感覚があります。台本を読んだときに役の輪郭をつかみますが、現場で実際にできるかは別問題なんです。現場ではいろんな要素が絡まってきますから。それでも、雰囲気にのまれることなく、地に足付けてやれているなという感覚にはなってきています。現場では、監督さんとのコミュニケーションが1番ですが、自分の意見をお伝えし、無理なく理解してもらえる。そういうことができる年齢にもなったのかな」

 42歳という今を人生の折り返し地点と捉えているそうで、今後もさまざまなフィールドで円熟味を増した演技を見せてくれそうだ。

□要潤(かなめ・じゅん)1981年2月21日、香川県出身。2001年、『仮面ライダーアギト』の氷川誠(仮面ライダーG3)役で俳優デビュー。02年には昼ドラ『新・愛の嵐』でヒロインの相手役を演じて注目。主な出演作はNHK連続ドラマ小説『まんぷく』(19)、映画『キングダム』シリーズ(19、22)、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』シリーズ(ドラマ版21年、劇場版22年)、NHK大河ドラマ『青天を衝け』(21)、ドラマ『拾われた男』(22)、WOWOW『フィクサー』(23)など。

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