コロナ禍で仕事激減のフルート奏者、オンライン授業、リレー演奏で気づいた「音楽の力」

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、音楽・エンタメ界が苦境に立たされる中で、音楽で生計を立てるプロ演奏家たちが前を向く取り組みを始めた。このほど、「今だからこそできる表現」をテーマに音楽を届けるプロジェクトを発足。17人の女流プロ演奏家が、テレワークでリレー演奏した復興支援ソング「花は咲く」の動画を公開した。リレー演奏を発案し、自身も参加したフルート奏者の鈴木真理乃さん(25)に、音楽人としての思いを聞いた。

17人の女流演奏家のスペシャルユニット(C)2011-2020 nomura musika artist company Co., Ltd
17人の女流演奏家のスペシャルユニット(C)2011-2020 nomura musika artist company Co., Ltd

「今できることを」テーマに新たな音楽活動 テレワークで17人がリレー演奏した復興支援ソング「花は咲く」の動画公開

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、音楽・エンタメ界が苦境に立たされる中で、音楽で生計を立てるプロ演奏家たちが前を向く取り組みを始めた。このほど、「今だからこそできる表現」をテーマに音楽を届けるプロジェクトを発足。17人の女流プロ演奏家が、テレワークでリレー演奏した復興支援ソング「花は咲く」の動画を公開した。リレー演奏を発案し、自身も参加したフルート奏者の鈴木真理乃さん(25)に、音楽人としての思いを聞いた。

 プロのフルート奏者として活動して3年目の鈴木さん。コロナ禍によって、3月時点で、5月までに予定されていた企業の祝賀パーティーやイベントの仕事がキャンセルとなった。こうした中で、自身の所属先で、演奏家の派遣業を手がける「株式会社ノムラムジカアーティストCOMPANY」の野村和美社長と相談。東日本大震災の復興支援のために作られた「花は咲く」の歌詞の意味を改めてかみしめ、「今できることを」とリレー演奏を提案した。

 鈴木さんと会社からの呼びかけに応じて手弁当で参加したのは、バイオリニストの中澤万紀子さん、琴奏者てみさん、ソプラノ歌手の岩田悠さんら17人。ハープ、トロンボーン、ビブラフォン、ピアノなど多彩な楽器で編成され、それぞれが思いを込めた演奏をつなぎ合わせた動画は、4月11日にYouTubeで公開された。今後も同社が中心となって、クラウドファンディングを活用するなどして企画を継続していくという。

 鈴木さん個人の音楽活動にも暗雲が垂れ込めた。オーディションやコンクール、演奏会が軒並み中止・延期に。それでも、「楽器をやっているからこそ、音楽の力でいい方向に持っていきたい」と鈴木さん。昨年5月に実家の一室で開業したフルート教室について、オンラインでの実施に踏み切った。「生徒と一緒の空間で面と向かって教えることができない。フルートで大事な音色が伝わらないのではないか」――。当初はためらいや不安もあった。しかし、いざ挑戦してみると、「やってみて分かったこと」だらけだった。
 
 鈴木さんの生徒は中高生が多い。週1回1時間のレッスンを、30分2回のオンラインに変更した。休校措置で自宅で過ごす生徒たちにとって、決まった時間に音楽に取り組むことで、生活のリズムを保てるとの評判を得ているという。鈴木さんが事前に録音した伴奏音源を生徒に送り、生徒がおうち時間で練習。初めて採用した指導法によって、上達スピードも上がってきているという。

 クラシック音楽奏者として活動してきた鈴木さんは、表現者としての変化を実感しているという。会場での生演奏を重視するクラシック奏者。これまで、自分で演奏を録音し、映像を編集することにはほとんど取り組んでこなかったが、「動画」という新たな表現方法を強く意識するようになった。それに、編曲に時間を使うことが多くなり、次の作品に向けての準備にも意欲が増している。「大変ではあるけど、アーティストとして映像作品を作る技術を身に付けられる」と話す。少しずつ公開している動画コンテンツを観た人たちから、「元気が出た」との声が寄せられ、鈴木さん自身も元気をもらっているという。

 リレー演奏のプロジェクトと個人の活動。貫かれているのは、「より多くの人に音楽を届ける」という信念だ。鈴木さんは「これからも工夫して音楽を発信していきたい。少しでも多くの年齢層の方に届き、癒しを感じてもらったり、元気になってもらえれば」と話している。

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