マンションの浴槽にザリガニ100匹…野草愛好家、衝撃のザリガニパーティー開催の真意

いよいよ待ちに待ったゴールデンウイーク(GW)。キャンプやハイキングなど、アウトドアで思いきり自然に触れる計画を立てている人も多いだろう。一方で、“自然”は必ずしも遠出しなければ出合えないもの、というわけでもない。都会でも玄関を一歩出たら見つけられる自然として、野草の魅力を発信する“野草愛好家”の川井希美さんに、身近な自然を観察する上でのコツと心構えを聞いた。

野草の魅力を発信する野草愛好家の川井希美さん【写真:本人提供】
野草の魅力を発信する野草愛好家の川井希美さん【写真:本人提供】

ウサギの飼育をきっかけに、災害時の非常食として野草探しが日課に

 いよいよ待ちに待ったゴールデンウイーク(GW)。キャンプやハイキングなど、アウトドアで思いきり自然に触れる計画を立てている人も多いだろう。一方で、“自然”は必ずしも遠出しなければ出合えないもの、というわけでもない。都会でも玄関を一歩出たら見つけられる自然として、野草の魅力を発信する“野草愛好家”の川井希美さんに、身近な自然を観察する上でのコツと心構えを聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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 現在は野草愛好家としてメディアにも多数出演する川井さんが野草にハマったのは9年ほど前。ペットとして自宅でウサギを飼い始めたことがきっかけだという。

「飼育書を読んだら『野草が好物』と書いてあって。おうちに迎え入れるにあたって、東日本大震災のとき物流が止まってエサが届かなかったという話も聞いて、災害時の非常食として飼い始めた翌日から野草探しを始めたんです。最初はタンポポですらよく分からなくて、持っていた植物図鑑の著者の方に連絡を取って見分け方のコツを教えてもらいました」

 それ以来、昼休みの時間に職場近くの多摩川の土手で野草探しをするのが日課に。来る日も来る日も、おにぎりを片手に野草探しに明け暮れたという。

「範囲が広すぎると大変なので、まずは10センチ四方の地面の中に生えている植物を全部覚えることから始めようと、河川敷に目印にした石を置いて、10センチを覚えたら隣の10センチ、そのまた隣の10センチと、毎日10センチずつ距離を伸ばしていきました。2年間で100メートルくらいしか進まなかったけど、たったそれだけの中にも200~300種類の野草が見つかった。その上、世界には20~30万種類もの植物があると知って、これは一生かかっても見つけきれないなと」

 最初はペットのウサギのためだったという野草探しだが、気づけばどっぷりとその魅力に取りつかれていたという。いったい野草の何がそこまで魅力的なのだろうか。

「1年を通じて子葉から花が咲いて種ができるまで見ていても飽きないし、都会でも玄関を一歩出たらアスファルトの隙間に何十種類と見つけることができる。何よりも普段見ている世界がまったく違って見えてくることが魅力ですね。食べられる野草があるのも楽しみのひとつで、最初は何でも天ぷらにしていましたが、最近はサラダにしたりディップにしたり、炊き込みご飯にしたりと、食材となる野草の特徴ごとにアレンジを楽しんでいます」

 数年間もの間、雨の日も風の日も多摩川沿いで野草を探すOLの姿はいつしかメディアでも話題に。それを機に、会社員の仕事を辞めて野草愛好家、自然観察指導員としての活動を始めた。依頼を受け、自然観察のアドバイスをするのが主な仕事だが、どんな人からの依頼が多いのだろうか。

「子ども向けやご家族でなど、老若男女問わないですが、意外にもお一人でのご依頼も多く、全体のうち6割くらいがマンツーマン希望のお客さんです。過去の一例では、六本木の会社員の方で、徒歩8分の通勤圏内に植物を見つけてほしいというものがありました。出社前の2時間で2人で52種類の野草を見つけて、『何もないと思ってたのに、めちゃくちゃあるじゃないですか!』と大喜びしてましたね。

 他には、先立った奥様が残した庭を見てほしいというご依頼。梅や桑、ベリーの木を見つけては『そういえば昔よく梅酒を飲んでたけど、あれは妻が漬けた自家製の梅酒だったのか』『移り変わる季節ごとに木の実がなるのを心待ちにしてたのかな』など、奥様が手入れしていた庭の歴史と思い出に触れるお手伝いをさせていただきました。

 ちなみに今の時期が一番の繁忙期ですが、冬の間は仕事がまったくなくなるので塾の先生をしています」

SNSではときに環境保護活動の在り方について私見を発信することも

 長く自然観察に携わる立場から、SNSではときに環境保護活動の在り方について私見を発信することもある。最近も短絡的な外来生物の駆除活動に対し「本心としては外来生物の防除作業に子どもを関わらせたくない」と投稿。「『外来種は悪いもの』って、本来そんなに簡単に教えられることじゃないよね」「外来生物の良し悪しを教える前に、まずは命の大切さを教えないと」と多くの共感を呼んでいる。

「私は専門家ではありませんが、やらせるのであれば形だけでなく、正しい環境教育をすべきだと思う。以前、子どもたちが捕まえたアメリカザリガニをかわいそうだから駆除せず別の池に放すという体験学習に関わり、それでは意味がないと全部ビニール袋に入れて引き取ったこともあります。夫には怒られましたが、新築マンションのお風呂の浴槽に100匹近いザリガニを放し、臭み取りをかねて1週間お風呂にいれてから、友達を呼んでザリガニパーティーをしました。本来、外来生物の防除とはそのくらいの覚悟と責任を持って行うべきで、子どもたちにはそれよりもまず楽しく自然と触れることで自然環境への関心を持ってもらうことが先決ではないでしょうか」

 GWは子どもに自然の素晴らしさや多様性について学ばせる絶好のチャンス。山や森の中まで行かなくとも、身近な自然から学べることもたくさんあるに違いない。

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